劇場やホールに足を運べない期間が続いています。
公演をインターネット上で鑑賞できるサービスも同時に出てきて、始めはおっかなびっくり始まったライブ配信でしたが、追随するように運営する会社やコンテンツの持つ特性に応じて期間限定配信、過去の動画配信などが出てきました。

メリット・デメリットはあります。そして、誰にとってのメリット・デメリットなのか、ということも同時に考える必要があります。
ライブ・エンタテインメント市場規模は過去最高を記録
一連の騒動前、そもそも2018年までのライブ・エンタテインメント市場はどのようになっていたのでしょうか。ざっくりと「CDが売れない」と言われる昨今ですが、音楽が売れていないわけではありません。

シングルCDのミリオンセラー(100万枚以上の売り上げ)を見ます。連発した1990~2000年代前半は別として、2010年代もミリオンセラーは欠かさずにあります。
引用:一般社団法人日本レコード協会「過去10年間のミリオン認定数の推移」
また、2018年のライブ・エンタテインメント市場規模(音楽コンサートとステージでのパフォーマンスイベントのチケット推計販売額合計)は、2000年以降で最高の5,862億円(前年比13.8%増)、動員数は前年比11.3%増の7,645万人となっているのです!
引用:ぴあ総研「ライブ・エンタテインメント市場、前年比13.8%増で6,000億円に迫る勢い」
CDだけでなく、様々な形に変化した音楽が売れる。そして、ライブ・エンタテインメントも売れる。2000年以降、最も豊かな時代…それが、2018年でした。
新型肺炎を機にオンライン配信が始まる
劇場やホールに足を運べない今。劇場やホールが家に、手のひらに、来てくれました。
3月上旬に開催を予定されていた、神奈川フィルハーモニー管弦楽団・びわ湖ホールプロデュースオペラ・東京交響楽団の公演をライブ配信で行ったことを皮切りに、たくさんのエンターテインメントが発信を始めました。
クラシック音楽

ライヴ配信だけでなく「アーカイブ配信」「番外編」もまとめられています。「テレワーク動画集」には海外のオーケストラもあり、しかも自分が参加できる動画の紹介まで!
文楽・能楽・歌舞伎
3月公演や過去の動画を期間限定で楽しむことができます。

演目だけでなく、出演者による座談会まであります。劇場に行けば、1席ン万円の公演をYouTubeで見られるなんて…期間限定でしたが、とても夢のある企画でした。
これらの取り組みは、一般にも広く注目されました。

お笑い/寄席・演芸
劇場やホールを多く持ち、映像配信のノウハウがあり、6,000人とも言われる芸人さんを抱える吉本興業には敵いません。

さらに、所属芸人さんが個人やグループでどんどんYouTubeに参画しています!さらにさらに、吉本興業が人気YouTuberを抱えるUUUMと資本業務提携!!鬼に金棒です。

また、劇場単位でなく、個人で動画をアップしている方もいらっしゃいます。

音楽科教員のための学校や生活に役立つ情報を動画で分かりやすく発信します。
授業規律や定番教材の指導法、学習指導要領の実践から、ライフワークバランスやストレス耐性の付け方、お金まで、多忙・孤独な音楽科教員へのヒントを提案します。
ライブ・エンタテインメントのオンライン配信…誰が得するのか?
作る人/出る人/見る人の誰が得するのでしょうか?
短期的に見れば「見る人」であると思います。
長期的に見れば「作る人・出る人」です。これは希望です。
「見る人」の得は、
・チケット代、宿泊費、交通費、食費その他の諸々をかけずに公演が観られる。
・公演を観る際の自由度がある。(一部、制限あり)
どこでも観られる+いつでも観られる+どんな格好でも、観られる+観たい人と、観られる+何度でも、観られる。
「作る人・出る人」の短期的な得は、
・表現者の性
…でしょうか。YouTubeの広告収入で制作費が取り返せるとは、あまり思えません。
「作る人・出る人」の長期的な得は、
・ファンを獲得する。
・再開後の鑑賞
と信じたいものです。
>6月にサザンが無観客のオンライン配信ライブを横浜アリーナで開催しました!
一方で、アメリカではこんな問題も起きています。
ユニバーサル・ピクチャーズが新作映画をネット配信したところ、収益1億ドル超えの大ヒット。この反応に、映画館が再開された後も劇場公開とネット配信を同時展開する可能性を示唆しました。
反発したのは映画館業界です。
世界最大大手のシネコン(シネマコンプレックス)チェーンのAMCは「全米、欧州、中東全てのAMCの劇場で今後一切ユニバーサル・ピクチャーズ作品を劇場公開しない」と反発しました。映画館業界は長期にわたって営業ができず、苦しんでいる状態なので当然です。
文楽のオンライン配信のアイデアを提案したい!
「作る人・出る人」の長期的な得である、ファンの獲得・再開後の鑑賞につながるように考えたことがあります。それは、オンラインだからできること、です。
私は無類の人形浄瑠璃文楽好きです。文楽の公演を国立劇場が配信してくれただけでも、感謝感激です。しかし、文楽の公演で特に大阪や東京の平日において、客席が埋まっていないことを知っています。だからこそ、このファンを獲得する大チャンスに挑んでいただきたいことがあるのです。
3月8日(日)の東京交響楽団の公演では、ニコニコ生放送の技術を活用して配信が2種類用意されました。
・アングルの切り替えがある配信
・定点カメラでの配信
これを文楽に応用するのは、いかがでしょうか。鑑賞する人によって、観たいところ・聴きたいところに違いが出ます。様々な公演と比較しても、特に役割の多い文楽には顕著にあらわれます。
舞台の脇に出る字幕を追いたい人に、最前列は向きません。
太夫さんのほとばしる汗、三味線弾きさんの呼吸を感じたい人に、下手席は向きません。
人形遣いさんも同じ。人形を観たい人、特定の人が遣う人形が観たい人、真横から観たい人…
本当に様々なのです。
国立文楽劇場ご担当者様へ届け!ここを観たい。文楽のアングル10
②客席:最前列真ん中
③客席:最前列下手
④客席:最前列上手
⑤客席:太夫さん・三味線さんの盆前
⑥太夫さん:はばかりながら、おでこにGoProを!
⑦三味線弾きさん:失礼千万ながら、足元にGoProを!
⑧人形遣いさん:主遣いさんのおでこにGoProを…開演前。そして、引っ込んでからも。
⑨人形が出てくる幕:上手から
⑩人形が出てくる幕:下手から
これなら同じ公演、10回見ます。有料でも!
オンラインだからできることを逆手にとって、ライブ・エンタテインメント業界が過去最高を更新し続けることを切に願います。
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