これは堪えた。
「中止」「見合わせ」「キャンセル」…もう、慣れましたね。慣れちゃいましたね。ニュース見ても、「ふぅん。まぁそうだよね。かわいそうだけど、仕方ないね。」自分の畑ではない所では『他人事』として見ていられたのかもしれません。
しかし、「全日本吹奏楽コンクール中止」
いや~~~~~~~~~~~これは堪えました。気持ちがわかりすぎるからです。
渦中にいた高校時代。コンクールは人生の全てでした。
Nコン、全日本合唱コン、そして、全日本吹奏楽コンクール(以下「吹コン」)。コンクールに喜怒哀楽すべての感情を学びました。音楽の知識はもちろんのこと、人間関係、組織運営、営業・宣伝・スケジューリングといったビジネスに活きるスキル、音楽版スポーツマンシップ、自分自身の小ささ無力さ…
人生は音楽。音楽が自分。自分は楽器。楽器は命。
勉強よりも大事なこと、時には音楽そのものよりも大切なことを学びました。吹奏楽・合唱などに本気で取り組んだ人なら、全員がわかってくださることでしょう。
高校生の自分ではわからなかった『全日本吹奏楽コンクール』を、20年の音楽ビジネスや教員の経験と知識を経て、もう一度見直します。
すべての吹コンを愛する人たちへ。
今回決まったことと決まっていないこと(5/12正午現在)
吹奏楽連盟主催の全国大会について決まったこと
■中止となる大会
・第68回全日本吹奏楽コンクール中学校・高校の部(10月24・25日、名古屋市)
・同 大学、職場・一般の部(同31日・11月1日、宇都宮市)
・第39回全日本小学生バンドフェスティバル(11月21日、大阪市)
・第33回全日本マーチングコンテスト(同22日、同)
■課題曲について
2020年度の作品を2021年度の課題曲とする
(参考:2020年度 秋季事業の中止について)
その他の大会について決まっていないこと
■地方大会の開催
各地域の連盟が判断
参考:東京都吹奏楽連盟は5/12を目安にホームページで発表することを明記(4/30)
■全日本合唱コンクール
未定
■NHK全国学校音楽コンクール(以下「Nコン」)
NHK全国学校音楽コンクールサイト(5/12現在)
Nコンは最も早い地域で予選が7/18から始まります。また、申込の〆切が関東甲信越ブロックでは5月中のところも!休校が5月末までの学校もある中、
合唱部が新入生も入れて何人なのか。
混声?女声??自由曲は3部?4部??
そもそも練習は???
という中で、どのように申込をするのでしょう。
全日本吹奏楽コンクールの予選は東京都で7/30からですので、それよりも早く予選が始まるNコン。判断が待たれます。
全日本吹奏楽コンクールについて
全日本吹奏楽コンクールは地方大会を含めて約1万団体が参加する国内最大規模の音楽コンクールです。東京都予選は中学校だけでも8日間・2会場同時並行・朝から晩まで開催されます。
会場は駅周辺から多数の中学生と観覧者でごった返し、人と楽器、時に顧問や部長の指示の声が交錯します。裏には学校づきの楽器屋さんが運送を仕切ったり、裏方の運営を大学生たちがサポートしてくれたり、各校の保護者からの差し入れがあったりと、実に多くの人が関わります。
それもそのはず…日本は世界有数の吹奏楽大国で、現役は100万人、経験者は1000万人ともいわれます。吹コンは1940年から、戦争の影響で中断した期間をのぞき、68回を数えています。
人数だけでなく、名曲も多数。参加した人なら、自分の課題曲をパッと思い出せるはずです。ハミングしながら、指が動く、身体が、呼吸が…もう頭の中は今日一日、課題曲でいっぱいです。
大人目線でみると、人の他には多額の資金が必要だったことがわかります。参加費の約20,000円では、まかなえないのではないか…そこで企業の出番です。
コンクールに参加した人は知っています、朝日新聞のすごさを。
吊り看板にロゴマークがドーン。結果の速報。そして、出場校ごとにまるで1面記事のようなポスターをいただけました。もちろんロゴ入り。以前、教材研究でCSR(企業の社会的貢献)を調べた際、改めて朝日新聞の教育や音楽への貢献に気づきました。

大人目線の吹奏楽コンクール。その経済効果
これだけ多くの人の心や行動を動かす吹コンの経済効果はどれくらいでしょうか。
2012年度から中学校の部・高校の部で全国大会を行う、名古屋センチュリーホール。この会場を使うことによって得られる経済効果を算出しているレポートがあります。
その額、なんと6億円!!
内訳は対個人サービス、運輸などの直接効果は約3.5億円
対事業所サービス、商業、飲食など波及効果は約2.5億円
(参考:都市の求心力を高める「名古屋MICE」/共立総合研究所/2015/4/3)
中学・高校の、全国大会の、会場の名古屋市、だけでこの効果です。各都道府県の予選、楽器・楽譜、練習のための会場、生徒の移動などを考えると、もはや計算できません。
全国大会のチケットがプラチナチケットとなり、伴って様々な問題もありました。2019年度からは、全国大会をライブビューイングも行う事態に!もはや一流ミュージシャンのコンサートと同等の扱いです。それだけ、吹コンの影響は強いのです。やはり、中止は大きい…
しかし、吹奏楽は負けません。リモート吹奏楽部の演奏も4月初旬から始まり、その輪を広げています。
取り組む学校数、曲数がどんどん増えています。みんな、早く演奏したい。合奏したい。気持ちが伝わります。泣きたくなるくらいつらい練習もある。他人に自分にメッチャ腹立つこともある。どーでもいぃ人間関係に振り回されてヤんなることもある。
でも、それがどれだけ愛おしいか。今回わかりました。
今から練習する、練習できてしまう2021年度の課題曲…来年度にどんなすばらしい演奏が聴けるのか、本当に楽しみです。
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