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歌を奪われて改めて思う歌う意味

ニュース解説
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「歌うな」と言われたことがありますか?

人がしゃべっているのに「歌うな
道端で唐突に「歌うな
練習で喉を傷め、咽喉科のお医者さんから「歌うな

 

これらの「歌うな」には、

人がしゃべっているのに「歌うな」→「音を立てるな。集中しろ」
道端で唐突に「歌うな」→「恥ずかしい」
練習で喉を傷め、咽喉科のお医者さんから「歌うな」→「治すために使うな」

を当てはめることができます。

 

新型コロナウイルス感染防止としての「歌うな」は、何と言い換えられるでしょうか。

 

 

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「歌おう」ー歌を強制することー

「歌いましょう」
「歌おう」
「声出せ~~~」

音楽の教員は言いがちですね。(おおいに自覚有)

歌を強制するのは、学校ではよくあります。もちろん学習指導要領には「歌唱」の項目があり、いくつかの曲は「歌うように」と指定されています。

小学校では《うみ》《虫のこえ》《ふじ山》《もみじ》《こいのぼり》《ふるさと》など各学年4曲ずつ
中学校では《赤とんぼ》《夏の思い出》《花》など7曲から各学年で1曲以上

授業以外にも入学式・卒業式などの式典には歌がつきものですし、合唱コンクールや合唱祭では指揮者やパートリーダーの目が光り、時に音楽科教員よりも厳しい指導をしています。

 

歌を強制することは集団を動かす手段として用いられてきました。考えや思いを歌にのせ共感を得たり、大きな運動にしていったりするのは、現在でも同じです。

集団のアイデンティティを示す歌(校歌や社歌、寮歌、応援歌など)は、他者と自分との境を明確にする歌です。大学の校歌や学生寮の寮歌、社歌、スポーツの応援歌も、場合によっては涙なしでは歌えない。そして、他者の歌は口が裂けても歌えない。大げさでなく、このような役割を持っています。

そして、集団内のコミュニケーションにも歌は利用されてきました。狩りに行く前に歌う。歌が合わなければ狩りに行かない。なぜなら、命の危険につながるから。また、歌が揃わなければ食料を獲り逃し、一族が死に至る。このような命がけの歌もあります。

 

小泉文夫著作選集(1) 人はなぜ歌をうたうのか
1:(1)人はなぜ歌をうたうか 2:音楽の場/打楽器の文化史/子守唄の社会学 3:わらべうたと民俗性/人はなぜ歌をうたうか 4:(2)アジアの音楽・ヨーロッパの音楽 5:アジアの音楽・ヨーロッパの音楽/アジア音楽の魅力 6:アジアの中の沖縄...

 

高校3年間を長野県で過ごしました。長野県の歌。

もうおわかりですね。県歌《信濃の国

 

 

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「歌うな」ー歌を禁ずることー

さて、この事態です。

文部科学省、東京都はじめ、音楽の授業での歌を禁じています。

>>詳細は新型コロナウイルス感染症対策と学校運営に関するガイドライン(令和2年5月 28 日
東京都教育委員会)

責めるつもりはまったくありません。今回は歌を禁じることについて見解を述べるまでです。

冒頭の通り「歌うな」は様々に置き換えることができます。今回の「歌うな」という対応は「他人と自分の健康を守るため」であり、異論はありません

「歌うな」の歴史や役割は、「歌おう」の逆です。考えや思いを歌に乗せないようにするため、そして大きな運動にしないために歌を禁止してきました。

 

私は野球が好きです。特にプロ野球、社会人野球は年に十数回。大学野球は数回、観戦します。心待ちにしていたプロ野球の再開!

 

 

しかし、歌を禁じています。

 

Ⅳ.観客の皆様への対応
2.野球・サッカー観戦の観客に対する感染予防策
・応援歌合唱、鳴り物使用の応援スタイルの変更と観客同士のハイタッチ等接触の禁止

[応援スタイルのリスク評価例]
▽感染リスク中
応援団による声の指揮による歌唱+拍手応援

【提言】日本野球機構・日本プロサッカーリーグにおける新型コロナウイルス感染症対策(2020/5/22)

 

野球応援における歌は球団の歌だけでなく、選手個人、チャンス、得点、敵チームへの威嚇??など様々なパターンがあります。

楽譜が配られる訳ではない上、一緒に練習を重ねる訳でもなく、ソルフェージュの訓練をしてきたとは思えないような人が、一致団結して声高らかに歌います。(ア・カペラで始まっても、絶対音で歌い出せるのは本当にナゾ。)

社会人野球では社歌に加え、独自の応援歌や定番曲の替え歌などが多数あり、応援団以外の人は(社員でもないのに)歌えるからすごい。

歌とスポーツは一体だったことに、失って、初めて気づいています。

 

 

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歌を奪われた後の「他者との境」

歌を知っている/知らない
歌を歌える/歌えない(歌わない)

で、隔てられていた境は何に代わっていくのでしょうか。

 

プロ野球を例に取ります。

持つグッズ、座る席、身につける色でわかります。オレンジ色を身につけて「オリックスファンです」とは言いますまい。

もちろん、知識や熱量でもわかります。選手、数字、昨年のこと…そして、今年にかける意気込み。歌を奪われたことで、より自分(たち)とは何かを他の何かでアピールすることでしょう。

…イヤ逆を返せば、歌を知らなくてもこれからは野球観戦がしやすくなります。球場へ行くハードルを下げるチャンスでもあると考えます。

新しい【歌のない】生活様式。どうなるやら。

 

芸能界での社会人生活経験で培った「情報収集力」と学校現場での指導経験を活かして、必要な情報の「取捨選択」を行った上で、教員の皆さんの参考になるニュースと解説をこちらから発信しています。

 

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この記事を書いた人
原口直

東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー/公立中学校音楽科教員

東京学芸大学教育学部卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。
東京都内の公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校において、教育実習生の指導・進路指導・新しい学習内容「生活と社会に関わる音楽の授業実践」を重ねる。
会社員時代の経験を活かした知的財産権教育の研究・発表実績多数。

2020年春より教室からYouTube動画・ウェブサイト・講演にフィールドを移し、教員や教育実習生が学ぶためのコンテンツを発信している。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)

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