近年、生成AIの技術が急速に進化し、ボタンひとつで楽曲を作成したり、演奏を自動でアレンジすることも可能になっています。このような状況の中で、「音楽科の授業や音楽科教員の存在意義はどうなるのか?」と疑問を抱く方もいるかもしれません。
しかし、私は「生成AI時代こそ、音楽科がますます重要になる」と思います。この記事では、音楽科の新たな意義について、3つの視点から整理します。

音楽の本質はAIには再現できない
まず1つ目のポイントは、「音楽の本質」についてです。
生成AIは楽曲の作成や演奏の自動生成が可能ですが、そこに“感情”や“文化的背景”が含まれているかというと疑問が残ります。
音楽とは、単なる音の並びではなく、作り手や演奏者の感情、背景、経験が込められているからこそ、価値が生まれるものです。例えば、同じ楽譜を使っても、演奏者が変わればまったく異なる表現になります。
AIはパターン学習を基に音楽を生み出すことはできますが、「なぜこの曲は人の心を動かすのか」「どう演奏すれば感動を与えられるのか」といった深い理解は人間にしかできません。音楽科教員には、生徒が音楽の本質に気付き、その力を実感できるように導く役割があります。
創造力と感性を育む場としての音楽科
2つ目のポイントは、「創造力・感性の育成」です。
情報の受け取り方だけでなく、それをどう表現するか、どう創造するかが求められる時代において、音楽科はその力を育むのに最適な教科です。
例えば、生成AIにコード進行を提案させ、それを生徒がアレンジしたり、AIが作ったメロディを自分なりに変化させたりする学びのスタイルもあります。重要なのは、生成AIが作ったものをそのまま受け入れるのではなく、そこに自分のアイデアをどう加えるかという点です。
音楽は創造力や感性と非常に相性が良く、こうしたAIとの協働によって、より豊かな表現力が育まれることが期待されます。
教員の新たな役割と実践例
3つ目のポイントは、「音楽科教員の役割」についてです。
これからの教員には、生成AIを効果的に活用しつつ、音楽の価値を伝える力が求められます。
実際の授業における生成AIの活用例としては、
– 作曲の授業でAIにメロディを作らせ、生徒がアレンジを加える
– 楽曲の分析にAIを使い、音楽構造を学ぶ
– AIが提案する演奏スタイルを比較し、生徒が自分の表現を探る
といった方法が挙げられます。こうした活動を通じて、生徒たちはAIには表現できない“音楽の楽しさ”を実感することができるのです。
まとめ:AI時代だからこそ、人間にしかできない音楽を
生成AIはこれからも進化し、私たちの教育現場にもさらに浸透していくでしょう。だからこそ、音楽科教員は人間にしかできない音楽の価値を伝える存在として、今後ますます重要になっていくと私は思います。
生成AIを“道具”として使いこなしながら、生徒の創造力・感性を育て、音楽の本質を伝えていくことが、これからの音楽教育の大きな使命です。文部科学省の生成AIガイドラインでも「人間中心で生成AIを活用すること」が強調されており、私たち教員一人ひとりがその意識を持つことが求められています。

皆さんはどう感じましたか?ぜひ、これからの音楽教育について一緒に考えていきましょう。
動画「音楽の授業はもういらない?AIでは教えられない“音楽の力”と教員の3つの役割【生成AI時代】」では、さらに詳しくお話しています。是非ご覧ください。