生成AI時代に問われる音楽教育の本質─音楽科教員に求められる3つの役割

一歩先ゆく音楽教育(授業編)
一歩先ゆく音楽教育(授業編)
本サイトはアフィリエイトプログラム等による収益を得ています
PR

近年、生成AIの技術が急速に進化し、ボタンひとつで楽曲を作成したり、演奏を自動でアレンジすることも可能になっています。このような状況の中で、「音楽科の授業や音楽科教員の存在意義はどうなるのか?」と疑問を抱く方もいるかもしれません。

しかし、私は「生成AI時代こそ、音楽科がますます重要になる」と思います。この記事では、音楽科の新たな意義について、3つの視点から整理します。

 

学校で音楽科が必要な理由とは:新学習指導要領とこれからの教育」の動画では、新学習指導要領をもとに音楽科教育が必要な理由を解説しています。
学校で音楽科が必要な理由とは:新学習指導要領とこれからの教育
新学習指導要領で注目される「生活や社会と結びつく学び」。この記事では、音楽科が学校教育で果たす役割とその必要性を5つの視点から解説します。音楽教育の未来を考えるきっかけに!

 

 

PR

音楽の本質はAIには再現できない

まず1つ目のポイントは、「音楽の本質」についてです。

生成AIは楽曲の作成や演奏の自動生成が可能ですが、そこに“感情”や“文化的背景”が含まれているかというと疑問が残ります。

音楽とは、単なる音の並びではなく、作り手や演奏者の感情、背景、経験が込められているからこそ、価値が生まれるものです。例えば、同じ楽譜を使っても、演奏者が変わればまったく異なる表現になります。

AIはパターン学習を基に音楽を生み出すことはできますが、「なぜこの曲は人の心を動かすのか」「どう演奏すれば感動を与えられるのか」といった深い理解は人間にしかできません。音楽科教員には、生徒が音楽の本質に気付き、その力を実感できるように導く役割があります。

 

 

PR

創造力と感性を育む場としての音楽科

2つ目のポイントは、「創造力・感性の育成」です。

情報の受け取り方だけでなく、それをどう表現するか、どう創造するかが求められる時代において、音楽科はその力を育むのに最適な教科です。

例えば、生成AIにコード進行を提案させ、それを生徒がアレンジしたり、AIが作ったメロディを自分なりに変化させたりする学びのスタイルもあります。重要なのは、生成AIが作ったものをそのまま受け入れるのではなく、そこに自分のアイデアをどう加えるかという点です。

音楽は創造力や感性と非常に相性が良く、こうしたAIとの協働によって、より豊かな表現力が育まれることが期待されます。

 

 

PR

教員の新たな役割と実践例

3つ目のポイントは、「音楽科教員の役割」についてです。

これからの教員には、生成AIを効果的に活用しつつ、音楽の価値を伝える力が求められます。

実際の授業における生成AIの活用例としては、

– 作曲の授業でAIにメロディを作らせ、生徒がアレンジを加える
– 楽曲の分析にAIを使い、音楽構造を学ぶ
– AIが提案する演奏スタイルを比較し、生徒が自分の表現を探る

といった方法が挙げられます。こうした活動を通じて、生徒たちはAIには表現できない“音楽の楽しさ”を実感することができるのです。

 

 

PR

まとめ:AI時代だからこそ、人間にしかできない音楽を

生成AIはこれからも進化し、私たちの教育現場にもさらに浸透していくでしょう。だからこそ、音楽科教員は人間にしかできない音楽の価値を伝える存在として、今後ますます重要になっていくと私は思います。

生成AIを“道具”として使いこなしながら、生徒の創造力・感性を育て、音楽の本質を伝えていくことが、これからの音楽教育の大きな使命です。文部科学省の生成AIガイドラインでも「人間中心で生成AIを活用すること」が強調されており、私たち教員一人ひとりがその意識を持つことが求められています。

 

音楽科教育における生成AI活用法:文部科学省の最新ガイドラインを解説」の動画では、文部科学省が発表したガイドラインを基に、生成AIの音楽の授業での活用方法と注意点について解説しています。
音楽科教育における生成AI活用法:文部科学省の最新ガイドラインを解説
音楽科教育における生成AIの活用方法やリスクを解説。文部科学省の最新ガイドラインを基に、授業準備や教材作成の実践例、注意点、安全な活用方法を詳しく紹介します。

 

皆さんはどう感じましたか?ぜひ、これからの音楽教育について一緒に考えていきましょう。

 

動画「音楽の授業はもういらない?AIでは教えられない“音楽の力”と教員の3つの役割【生成AI時代】」では、さらに詳しくお話しています。是非ご覧ください。

「ネットや書籍、専門家に相談しても、今ひとつしっくりこない…」
そんな経験はありませんか?公立・国立の学校現場での実務経験をもとに、理論だけではなく、学校現場で実際に活用できる具体的な方策をご提案いたします。
現場の先生方の視点に立ち、一緒に「実行可能な解決策」を考えてまいります。

研修のご依頼・ご相談は
こちらの問い合わせページから受け付けています。
その他のご相談・ご質問
こちらの問い合わせページから受け付けています。

この記事を書いた人
原口直

東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー/元・東京学芸大こども未来研究所 教育支援フェロー

東京学芸大学教育学部卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。
東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で、教育実習生の指導、進路指導、「生活と社会に関わる音楽」分野の授業実践に取り組む。
会社員時代の経験を活かし、知的財産権教育に関する研究・発表も多数行う。

2020年春より、教室の外へとフィールドを広げ、YouTube・ウェブサイト・講演活動を通して、教員や教育実習生に向けた著作権教育コンテンツを発信中。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)

原口直をフォローする
PR