皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。
現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
このYouTubeチャンネルでは学び続ける先生と学生さんのために、学校で役立つ情報と提案を発信しています。
今日は音楽科が必要な理由についてお話をします。
2020年度に小学校から新学習指導要領がスタートして、中学・高校とそれぞれ次年度ごとにスタートしていきます。
新学習指導要領で注目されているポイントは外国語教育やプログラミング、また道徳の教科化、高校では新しい科目「公共」や「歴史総合」そして「情報」などが入ってきました。
新しいものが入るということは何かが減るということです。
例えば私が高校生の時にあった「リーディング」「ライティング」「オーラルコミュニケーション」これはなくなりましたし、「数学C」これもなくなりました。もっと古いので言うと「国民」とか「修身」「芸能」なんていう教科が昔はあったのです。
そしてこのなくなる科目として挙げられるのが「中学校・音楽科」…音楽を教科として学ぶことです。
音楽科は学習指導要領改定のたびになくなるのではないかとヒヤヒヤ、いつも危機感を持っています。そのために「音楽科がどうして必要か」ということを訴え続けなければいけません。
今日はそういった内容「なぜ教科としての音楽が必要なのか」ということをお話しします。
この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。
▶新しく求められるスキル(例えばタイピングや金融教育それから税制など)の教育よりも音楽は必要なのか?本当にそう言えるのか?と疑問に思う方。
▶中学校に教科として音楽が必要なのかな?と疑問に思う方。
▶生徒に「どうして音楽を学校で学ばなければいけないのか?」と聞かれた時に何て答えたらいいのか悩んでいる方。
この動画のほかには、
2021年度からの中学校の学習指導要領について3点まとめて話した動画があります。ここでは学習指導要領に新しく入った「生活・社会と関わる音楽科」それから新しい言葉「口唱歌」そして内容が3倍くらいに増量された「知的財産権」、この3つについて話しているという動画があります。
合唱指導の際、音楽家の場合は3つの視点ですが、音楽科の場合は5つの視点が必要だということを事例を交えてお話ししていますので『音楽家と音楽科も違い』この動画も是非ご覧ください。
音楽は好きだけど音楽科(教科)が必要かと質問されると…
まずこの2つの言葉をきちんと分けて説明します。
「音楽が必要か」と問われれば、「必要だ」と答える人は多いと思います。
しかし、科目の科がつく音楽科。「これが必要か」と言われると「?」という人が多いかもしれません。
音楽を学校で教科として習う必要があるかということです。
「音楽が必要か?」「音楽科が必要か?」。一文字違いですが大違いです。
音楽を愛好してくださっている方はとても多いです。
例えばYouTubeなどでもたくさん音楽が再生されていたり、ミュージックビデオもたくさんあがっています。また CDやDVDの売り上げも好調ですし、ライブやエンターテインメント業界は2019年がピークとなっていました。また身近な音楽で言うとカラオケの愛好者が多いこと。それから吹奏楽や合唱、こういったものも年齢問わず広く愛好されていて、日本では吹奏楽人口・合唱人口が多かったり、カラオケの愛好者がとても多いという調査もあります。
音楽が好き、趣味で好きという人が多い。これは事実としてあると思います。
次は科目…学問として科目としてどうかという話をしていきます。
音楽の授業は「生活や社会」を学ぶ科目として最適です
音楽の授業が役に立つか?という調査では悲惨な結果
平成25年に行われた調査「平成20年に告示された中学校学習指導要領の実施状況調査」というのがあります。
学習指導要領が広く伝わっているか、きちんと学ばれているかというのを調査している国立教育政策研究所が出した調査です。
ここでは音楽の学習内容が問われているのと同時に、質問もされています。
それは「音楽の授業が役に立つかどうか」という調査です。残念ながら
「どちらかというと思わない」27.7%
中学3年生の回答です。音楽の授業、学習は逆に立たないと思われているということです。
しかし音楽を授業で学ぶことで、音楽の周りにあるもの・また先にあるものを、音楽を通して学べるものがあると思います。
音楽の授業は知的財産権・税金・CSRを学ぶハードルを下げる
まず「生活や社会と関わらせる」という今回の学習指導要領の改定の言葉。これを実践してきた私としては、音楽が身近であるので生活や社会を学ぶときにハードルをグッと下げてくれると思います。
例えば私が行っている「知的財産権」を音楽から切り込むことで、知的財産権という一見堅そうな言葉を、ハードルを下げて学ぶことができると思います。
また税金に関してもそうですし、企業のことやジェンダーのこと。こういったことも音楽を入口にすることによって、自分ごととして考えられたり導入がとても入りやすくなったりします。
■音楽を通じて著作権を考える授業例→音楽科で教える知的財産権の内容とは?
■音楽を通じて税金を考える授業例→「文楽」をテーマに取り上げた授業を実施しました
■音楽を通じてCSRを考える授業例→音楽のオンライン授業実践編《教材:交響曲第5番ハ短調(運命)》
海外の大学における音楽を学ぶ意味付けとは?
それから著書「ハーバード大学は「音楽」で人を育てる」では色々な大学が音楽を導入しているという例を挙げています。
ハーバード大学では音楽を「多様な価値観を理解す力」を育むために使っています。また同じ本でマサチューセッツ工科大学では「創造的な思考力を育む目」、スタンフォード大学では「心理に迫る質問力」を育てる。そのために音楽を学んでいると書いてあります。
音楽そのものを学ぶのではなく、音楽を通してそういった力をつけているのです。
また「【教員におすすめ】教育分野以外のおすすめの本3冊」の動画でも紹介している『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』という著書の中でも、「論理や理性では勝てない」「直感と感性の時代」ということで、美意識・芸術について見識を深めるといいという話が書いてあります。
このように音楽そのものを学ぶ道ではなく、音楽を通して学ぶ。こういったことを進めている本もありますし、私も実践者としてそれをとても実感してきました。
音楽を通して学べることがたくさんある。だから音楽科は必要です。
音楽の授業で「音楽を聴き分ける力」を身につける
音楽は非常に身近で心を和ませたり楽しませたりするものですが、時に音楽は武器にもなります。第二次世界対戦下で大衆を扇動する際に音楽が使われたのは有名な話です。
音楽を聴き分ける力が必要だと考えます。音楽を聴き取り、それを取捨選択する力が必要だと私は思います。
実践例として、動画「音楽のオンライン授業実践編《教材:ブルタバ(モルダウ)》」で社会を動かす音楽について話しています。
《ブルタバ(モルダウ)》の作曲された背景や作者の思いなどから、社会を動かす音楽…今で言うと《花は咲く》とか《We Are The World》といった曲。こういったものに共通する音楽的な内容や音楽の持つ力について考えさせるという授業をしてきました。
音楽を聴き分けて、音楽を武器にしない。こういった聴き分け方を身につけるためにも音楽科は必要だと考えます。
まとめ:音楽という教科の必要性を知る【音楽の授業いる?いらない?】
今日は音楽科が必要な理由について話しました。
新しい学習指導要領の「生活や社会と関わる」という文言は、音楽が教科として必要なその理由を生徒だけではなく教育者である我々にも問いかけているのではないかなと思います。
音楽の記号や楽譜を読めたり、美しい声で歌える。「だから何なのか」ということをきちんと説明できるようにならなければならないと思います。新しい学習指導要領の2021年度ぜひ1人ひとりが音楽科の必要性について考えてみてください。
記事の内容は動画と同じです。
動画「音楽という教科の必要性を知る【音楽の授業いる?いらない?】」も是非ご覧ください。
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