音楽教員歴10年の原口直です。
知的財産権は新学習指導要領に載っています。教科書にも載っています。これまで知的財産権(著作権)の話は色々してきました。
学校での著作権の解説の動画(「学校における著作権入門(教員のためのシーン別著作権)」・再生リスト「【学校と著作権】授業・学級経営・行事で著作物を利用する」など)を作ったり、「学校・先生のための著作権相談室」を設けたりしましたが、実際に私が知的財産権をどのように実践していたか、中学生に教えていたかをまだ話していませんでしたので紹介します。
中学校音楽「AKB48から知的財産権を学ぶ」の授業の流れ
授業の導入部
「AKB48はいったいいくらもらっているのか?」という話からします。
常時活動で授業の始めに曲を1曲聴かせるということをしていました。この1曲を前の年に一番売れたCD1位の曲をかけます。それが毎年AKB48でした。
曲を聴いた後にその曲がどのような曲か、音楽を形づくっている要素の言葉を用いて解説してもらいます。その上で、売り上げ枚数・印税・歌った人に何%入るのかという話をします。
そうすると生徒からは「少ない」「48で割るのか」とか色々なリアクションが来ます。
その後、作った人に目を向けます。
授業の展開
CDが1000円だとして、歌う人には1~2%入るという話をすると、残りの98%は誰に入るのかという話になります。そこで、音楽を作っている人・支えている人を意識させます。
小さなグループに分けて、それぞれのグループに1枚ずつCDを配布します。それぞれ色々なアーティスト、曲のCDです。そこから作詞者・作曲者・レコード会社などを探させます。それをする時に、周りに色々な職業や役割の名前があることを知らせます。
例えばプロデューサー・コーラス・マネージャーといった色々な役職の人がいることがCDのケースや歌詞カードからわかります。その人たちに98%が入っていることをわからせます。
それ以外に、プロモーション・セールスする人・お店の人・運ぶ人・在庫を管理する人・実際にCDを箱詰めしたり封入したりする人…こういった人たちがいることを知らせます。
そうすると音楽の後ろにはたくさんの人がいて、生活がかかっている、それを支えているということがわかります。そこで初めて「著作権」の話をします。
もし、その音楽がタダで手に入ってしまったら、違法に入手してしまったら、その人たちの生活が危ぶまれてしまう。ここで初めて権利の話をします。
さらに展開では、身近な著作権に関する〇✖クイズ…例えば「アップロードしていいか」「SNSに歌詞を書いていいか」「文化祭で吹奏楽部が演奏することはいいか」といった生徒に身近なクイズです。
授業のまとめ
生徒に考えさせることをします。
「知的財産権(著作権)に関して、どのような問題が起きているか。また、作り手になった場合にどのような問題が考えられるか」を考えさせます。
その時はあらかじめ司書の方にお願いをして、著作権や知的財産権に関する本をたくさん集めてもらいます。本だけではなく、新聞記事や協会が出している冊子も集めてもらいます。
音楽に限らず、著作権がどのようなものか。もっと広く知的財産権がどういうことかを、生徒の興味に応じて様々な書籍や新聞記事、インターネットを駆使して課題をまとめさせる、という授業です。
まとめ:【音楽の新学習指導要領】音楽科で教える知的財産権の指導方法の実践例
このように自分事として考える、そして今後の課題を考えるというレポート作成につなげる授業をしていました。
生徒の意見では、
「色々な法律や規制、チェック体制があっても、必ずかいくぐってしまう人がいる。なので、やはり使う側、聴く側の気持ちが大事」という意見がありました。
他に「もっと早く法律を知りたかった」これがとても多かったです。
「自分の好きなアーティストを守りたい、音楽活動を守りたい」という中学生らしい意見もありました。
知的財産権(著作権)の授業を行ったことで、生徒が暮らす生活の見え方が変わってきたと確信しています。この授業の略案や使ったワークシートはウェブサイトにアップするので、興味がある方はぜひご覧ください。
知的財産権の指導は必ず必要なことです。ぜひ皆さんも取り組んでみてください。
この記事の内容は動画と同じです。
動画「【音楽の新学習指導要領】音楽科で教える知的財産権の指導方法の実践例」も是非ご覧ください。
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