皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。
現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
このYouTubeチャンネルでは学び続ける先生と学生さんのために、学校で役立つ情報と提案を発信しています。
今日はこれまでしてきた音楽の授業での失敗談をお話しします。
これまでこのチャンネルでは様々な授業の実践を紹介してきましたが、成功したものばかり紹介していてもしょうがありません。成功の裏側にはその倍以上、たくさんの失敗を重ねてきています。
今日はお恥ずかしながらその失敗談をお話しして、解決策をどのように見出してきたか。皆さんのヒントになればと思います。
器楽の授業 編
器楽の活動ではいろいろな楽器をたくさん並べたり、生徒に触らせたり、または和楽器など大きな音がなるもの。そういったもので失敗がたくさんありました。
器楽の授業での失敗
無法地帯
たくさんの楽器を手にした生徒たちはそれを鳴らしてみたくなってしまいます。それはとても良いことでもあります。
しかしたくさんの楽器を40人の生徒が一斉に演奏し始めたら、無法地帯になってしまって、音を止めさせるまでにとてものどが痛くなってしまったりします。
楽器を片付けない
たくさんの楽器を並べて、その楽器を演奏してもらうのはいいんですけれども、それを元に戻さなかったり、種類ごとに分類しなかったりして、次の時間に支障が出てしまう。教員がはじめのセッティングに戻すと、休み時間10分があっという間に潰れてしまうという状態です。
片付けない。これはもしかしたら、生徒が『片付けられない』のではないかということで、次には解決策をお話しします。
違うマレットやスティックビーターで叩いてしまう
音楽科教員はその楽器がどのマレット・どのスティックを使って、どのように叩くか(例えば力加減とか叩く位置とか)その正しい方法を知っています。ですのでそれを正しくさせようとすると、とても大変なことになってきてしまいます。違うマレットやスティックで叩いていると「おいおいおい」と言いたくなったり、違う場所を叩いていると「そこじゃないんだよ」と言いたくなったりしてしまう。
こういった器楽の失敗、どのように解決すればいいでしょうか。
器楽の授業での失敗の解決するには?
無法地帯
音がなかなか止まないという時にどうすればいいか。
解決策で一番効果的などは合図を決めておくということです。
高音のハンドベルでチーリンと鳴らしたり、和太鼓や和楽器の場合には鉦(当り鉦、チャンチキと呼ばれます)こういった鉦を鳴らしたら音を止めるという合図。これを決めておきます。
そして、必ず音を出す前に生徒と一緒にそのルールを共有しておくということです。
「この音が鳴ったら音を止めてね」、もっと具体的に「この音が鳴ったら楽器を手から離してね」そういうことを言っておきます。
そしてそれが破られてしまうとどのようになってしまうのか。その弊害や問題点も生徒と一緒に共有をしておきましょう。
「合図で音が止まないと私ののどがつぶれてしまう」というふうに正直に話すと、生徒はきちんと聞いてくれます。
音を始める前に必ず共有しておくこと。場合によってはそれを板書などで共有しておいてもいいかもしれません。
楽器を片付けない
片づけられない可能性もあるので、こちらも授業者の方できちんと手立てを打っておきましょう。
例えば置く位置を明確にしておいたり、カゴや箱などを準備しておいて、そこに置くように指示をしておく。
例えば「打楽器はこっち」とか「アゴゴベルはあっち」とか、そういった楽器の区分や楽器の名前は生徒がわからないかもしれません。その指導をする時間があればいいのですが、1回でわかるとは限りませんし、1週間後に覚えているかどうかもわかりません。
ですのでもっと簡潔に、スティック(叩く物)はこのカゴへ。「小さな楽器やここに入っていた楽器はこのカゴへ」というふうに指導しておくといいと思います。
もっと明確に机を分けるとか、位置を分けるとか。楽器の形や写真を置いておいて指示してもいいかもしれません。それぐらい丁寧に指示をしておくことが片付けられるようになることです。
片付けないのは子どものせいではありません。教員がどのように指示をするかによってこちらは解決すると感じました。
違うマレットで叩く
本当は違う楽器、また違う位置、違う奏法で叩いてしまうという場合は、壊れない限りある程度許容してあげるのがいいかなというのが私の解決策です。
もちろん全ての楽器の正しい奏法を教えられればいいですが、一気に様々な楽器を触らせたり体験させたりする場合には、いちいちそれを教えることはできませんし、1週間後2週間後に覚えているとは限りません。
壊れない程度でしたら許容して、逆に面白がってみてもいいかもしれません。
「そんな叩き方があるのか」とか「そういうふうに叩くと違う音がするね」というふうに、本来の叩き方・奏法・音に比べると違ったとしても、その叩き方や音が面白いかもしれません。ぜひ面白がって許容してあげてください。
もちろん時間があれば、正しい奏法を教えたり、器楽の教科書で学ばせたりということも大事ではあります。
面白かったのは例えばカウベル。通常でしたらスティックを上からコンコンと真下に叩きますが、カウベルの中に入れてカチャカチャカチャカチャと音を立てたりするといった例もありました。それはそれで面白いことですし、正しい奏法や音を知っているからこそ見えない、そういった工夫やアイディアもあります。
こういった器楽の授業での解決策を、ひとつの例として参考になさってください。
創作の授業 編
年に1度か2度ぐらい行うかと思いますけれども、そこでも結構失敗いろいろしてしまいます。
創作の授業での失敗
授業開始直後から質問の応酬
最初の説明の時に「このようなルールで、このように作ってください」という説明をします。
もちろん予想される発言・予想される質問はこちらで事前に準備をしておくのですが、作り始めてからは「これはどうですか」「あれはどうですか」「これをしてもいいですか」という質問がたくさん出てしまうことがあります。
準備をしていても、です。
制限時間内に完成しない
時間内で例えば「10分以内に曲を完成させましょう」という風に言って始めますけれども、なかなか時間内に完成しない。それはこだわりすぎて完成しない場合もあれば、まったくアイディアやプランが浮かばずに完成しない場合もあります。
意見がまとまらないとか、こだわりすぎてしまって練習に時間がかかってしまうとか。そういった完成しないという失敗、私もたくさん経験してきました。
発表の時にゴチャつく
いざ完成したものを発表しましょうという段になった場合に、発表するグループやそれを聴いている人たちが、何かちょっと緊張感が足りなかったり、ちょっとゴチャついてしまって時間が余計にかかってしまったりということがあります。
こういった創作での失敗談、1度はご経験があるのではないでしょうか。
創作の授業での失敗を解決するには?
授業開始直後から質問の応酬
「あれはどうですか」「これはいいんですか」「これはどうなっているんですか」という質問。創作が始まってからたくさん出てくる。
その解決策は前年度や前時を生かすということです。
だいたい上がってくる質問は種類が限られていたり、同じようなことを質問してくることが多いです。場合によっては授業を途中で止めて「こういった質問がたくさんあったので、これについてはこうします」というふうに途中で切ったりしますけれども、そうすると創作する時間が短くなってしまいます。
そのためには前の年にどんな質問が上がったか必ず記録をしておいて、その次の年には同じ質問が出ないようにあらかじめ手立てを打っておくということ。
まだ前時を活かすは、同じ学年・同じ単元・内容の、違うクラスを行った場合に出てきた質問については、次のクラスではあらかじめそれを明らかにしておくと良いということです。おおよそ出てくる質問は同じような内容が多いですので、次のクラスの時には生かしておいてあげるといいと思います。
それから「目標1つ」というのは色々欲張らないということです。
今回はリズム創作。「リズム」を作ると決めたら、それ以外の言葉はなるべく排除する。今回は「強弱」と決めたら、強弱にこだわって創作をさせるといったふうに、目標は絞って1つ、多くても2つぐらいでいいと思います。
また主にする目標を明確にするのも大事です。
リズム創作をしていると、ついつい強弱を気にしてしまったり速度を工夫したくなってきてしまうものです。それはとても良いことでもあります。しかし「主になるものはリズムである」というふうにしておかないと、強弱や速度ばかり、違う目標ばかりに目がいってしまいますので、まずはリズム。その最低限の目標が1つ明確であると、生徒側も楽だと思います。
制限時間内に完成しない
これもよくあると思います。こちらは「進んでいる班を共有する」ということが大事です。
いくつかのグループで創作をしていると順調に進む班が出てきます。そういった順調に進んでいる班の速度や理由を共有するといいと思います。
「この班とっても進んでいるね」とか、その進んでる理由例えば「分担をしているね」とか「ここまでできたね」というのを全体を見ている教員が大きい声で全班に共有するというのが大事です。大きな独り言ですね。
そういった進んでいる班を共有することで、周りの反応人たちが危機感を覚えたり、それから進めるためのヒントにしたりということもあるでしょう。
時間内に完成させるために残り時間を共有するといったこともとても大事ですが、進んでる班の理由、それから進んでいる内容を共有してみましょう。
発表の時にゴチャつく
教員側ができることは「舞台を演出」してあげることです。
自分自身が舞台に上がって発表するという場面を想像してみてください。舞台に上がった場合はやり直しもききませんし、最初と最後には礼があって拍手があって、そして発表の前には司会者が紹介をするといったそういった段取りがあるはずです。
なんとなく始めて、なんとなく前に出てきて、なんとなく演奏を始めてしまうと、そういった緊張感を演出できずになんとなく失敗してしまって「もう1回やらせてください」という風になってしまったり。
いつ始まっていつ終わったのか、発表している本人も聴いているこちら側も何となくわからずにゴチャつくということもあると思います。
発表する際には先生が司会者役になって、
「次は2班の発表です。どうぞ!!」パチパチパチパチッと出てきて、2班が礼をして、そして演奏を始める。またその演奏を始める際にも、「演奏・舞台というのは一度限り。失敗した場合でもやり直せない」ということをはじめに言っておくと良いです。
そして演奏が終わったらまた
パチパチパチッ「2班のみなさん、ありがとうございました。素晴らしい演奏でしたね!続いては3班です。どうぞ!!」
といったふうに、きちんと舞台を演出してあげるのが発表でゴチャつかない解決策です。
ぜひこういったことを実践に取り入れてみてください。
鑑賞の授業 編
鑑賞の授業での失敗
教員が語りすぎる
その曲や作曲家・その背景・国などに思い入れがあると、語りすぎてしまって時間がいくらあっても足りないというのが鑑賞の失敗しやすいところです。
文字や資料が多すぎる
鑑賞によくある失敗です。
こういったことを解決するためにどのようにすればいいでしょうか。
鑑賞の授業での失敗を解決するには?
2つに共通するものは「目標1つ」ということです。
教員が語りすぎる
例えばシューベルトの《魔王》を話すときに「この曲の作曲家はシューベルトで…」と言った瞬間にシューベルトに対する想いが溢れすぎて、シューベルトの生涯について語ってみたり、自分が歌ったシューベルトの思い出なんかを話してみちゃったり、国について話してみたり。そんなことで脱線しまくってしまうというのは、よくある話です。
《魔王》の声の変わり方についてやるというふうに目標1つ決めたら、その曲について話すときに極端に言えば「作曲家が誰か」ということはどうでもいいかもしれません。また、時代なども別にどうでもいいかもしれません。
目標は1つ。声の高さの変わり方と決めたら、それ以外の事は実にあっさりと。教科書に載っている情報、見てわかる読んでわかる情報もありますので、それ以上の言葉を語りすぎないようにするということが大事です。
自分が好きな作曲家・自分の思い入れがある曲、それから時代。そういったものであればあるほど、語りすぎてしまいますので、目標は1つそこからブレない。
それ以外の言葉どんなに好きでもどんなに思い入れがあっても、切り捨てるぐらいの気持ちで進めると良いと思います。
文字や資料が多すぎる
「目標は1つ」それは2つ目の文字や資料が多すぎるにも言えることです。
こちらはワークシートや パワーポイントの作り方の動画でもお話ししていますが、不親切であることが大事です。
一見、何のことを言ってるのかわからない、どんな活動をするのかわからないぐらいのワークシートやパワーポイントでいいのです。
文字だらけ、写真がたくさん。それも大事なことですが、取捨選択をして目標…この授業で何を伝えたいか、その伝えたいことに対してその資料は必要であるか。きちんと取捨選択、断捨離が必要だと思います。
こちらもどうしても伝えたいこと、どうしても覚えてほしいことがあるのはやまやまですが、不親切ぐらいがちょうどいいです。生徒が「これから何が始まるのか」「わからないどんなことを説明するのか、先生の話を聞かないとわからない」くらいがちょうど良いと思います。
鑑賞で語りすぎる、資料が多すぎる。この「すぎる問題」についての解決策はこのようになっています。
「10分で理解する音楽鑑賞授業の3つのコツ【定番曲「魔王」のチェックポイントも紹介】」
「音楽のオンライン授業実践編《教材:ブルタバ(モルダウ)》」
「鑑賞の定番「ブルタバ(モルダウ)」の教材の作り方【Googleサイトの使い方】」
まとめ:中学校音楽教員の失敗談告白【器楽の授業・創作の授業・鑑賞の授業】
今日は失敗談について3つの場面でお話をしました。
私もたくさんの失敗をしてきました。動画では成功例ばかり話していますが、当然その裏側にはたくさんの失敗があって、たくさん悩んで、解決策もたくさん考えて、やってはみてもやっぱりそれでも失敗してしまって、ということたくさんあります。
そういった失敗を共有することもとても大事だと思います。
教育書や実践例はやはり成功例が多いです。裏側にある失敗例、どんなにベテランの方でも、どんなに実践を重ねている方でも、裏側には失敗例がたくさんあるんだということ。またそれを解決・改善した授業であるということを見ていきましょう。
自分が授業などで失敗してしまったときに、それを悔やむだけではなく、必ず改善そして解決に結びつけていきましょう。それがひいては子どものためにもなります。
サイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「中学校音楽教員の失敗談告白【器楽の授業・創作の授業・鑑賞の授業】」も是非ご覧ください。
コメント