皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。
現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
このYouTubeチャンネルでは学び続ける先生と学生さんのために、学校で役立つ情報と提案を発信しています。
「鑑賞の授業をどのようにするか」というのは歌唱と並んでとても多い…実践例の多いものだと思います。実際に本やDVD、指導書などが鑑賞について、たくさん出ています。
一方で鑑賞の授業を初任で作ったものをそのままずっと使っているとか、時間がなくて改善していない。それでも何とか乗り切れてしまうという鑑賞の授業もあります。
この動画では基礎の基礎を話しますので、鑑賞の授業をこれから作る人にはヒントになりますし、すでにある人には見直すきっかけや見直す視点をお話できればと思います。
この動画のほかには
音取りの手順から話しているもの。
それから鑑賞に使える《春》《運命》《ブルタバ(モルダウ)》3つの実践例を動画で話していますのでそちらも併せてご覧下さい。
鑑賞授業で「何を学ばせるか」を明確に
学校・学年・学級・生徒のカラーや時代背景を反映させる
教科書や指導書などの始めには「何々を教える」とか「何々を学ぼう」という明確な目標が記されていることが多くありますが、必ず自分で一度考え直してみてください。あくまでも教科書に書いてあるのは例だと思ってください。
自分の目の前にいる生徒。学年のカラーやクラスの雰囲気。それを教える時期、そして時代を反映させるべきだと思います。
そうでないと、1本の授業の動画があれば全国で同じことができるということになってしまいます。
実際は絶対にそうではなく、各学校・各学年・各学級のカラーがあって、それを教員がきちんと読み取って鑑賞の授業をすべきだと思います。
学習指導要領を意識する
また鑑賞の授業の場合「学習指導要領のどの部分に当たるか」というのを意識しておきましょう。
もちろん他の領域、歌唱・器楽・創作でも大事なのですが、特に鑑賞は意識する必要があります。
その理由は、自分が好きなことを好きなように解釈して伝えられてしまうという危険性があるからです。また、聴いて感想を書くなど、なんとなく成立してるように見えてしまうからです。
この鑑賞の授業が「学習指導要領のどの部分に当たっているか」というのは、他の領域よりも意識をしましょう。
2021年からの学習指導要領で言うと「生活と社会の関わり」という言葉がありますので、今年度の中学3年生の「生活と社会との関わり」が鑑賞教材・鑑賞授業と関わりが見えるような、具体的に見えるような、そういった内容にして欲しいと思います。
鑑賞に陥りがちな自己満足・自己解釈にならないように気をつけましょう。
同じ曲の演奏を3つ以上見て授業題材を決める
例えばオーケストラの曲を探すときに、色々な指揮者・色々なオーケストラ・色々な国・色々な年代。そういった演奏を少なくとも3つ以上は見て欲しいと思います。
演奏を見る際の観点は、演奏の内容や音質はもちろんですけども、教員としての目…例えばカメラワーク。聴かせたいモチーフの部分でその楽器がきちんとアップになっているかということ。これは先ほど話した「何を学ばせるか」につながってくると思います。
その学ばせたいことが、きちんとクローズアップされている視聴覚教材であるかというのを観点の一つとして選んでいきます。
それから字幕。教材の中には字幕が入っているものもあります。第何楽章とか標題が書かれたりしますね。そういった字幕が必要な時に必要な場所にあるのかないのか。もしくは余計なところに出ていないのかというのをしっかりチェックして視聴覚教材を探す必要があります。
それから視聴覚教材を見せるときに、生徒に見せて鑑賞させるのか。
音のみで鑑賞させるのか。音のみで聴かせる箇所も作るのか。そういった事も考えて選んでみましょう。
具体例:魔王のチェックポイント
オーケストラの曲だけではなくわかりやすいのは《魔王》。
《魔王》の声種も様々ですし調も様々です。教科書の調と鑑賞させた調が違って困ったということもありました。
また《魔王》の場合、言語も様々です。
歌っている言語はもちろんですが、字幕の言語…日本語なのか、ドイツ語なのか。また日本語も古文体なのか口語調なのか、というのもありますね。
そういったものが何が表示されるのか、何で歌われているのかというのも必ずチェックしましょう。
また、《魔王》では演出も要チェックです。
紙芝居調になっていたりとか、歌手やピアニスト、ピアニストの手。歌手の全身を映していたり、顔を映していたり。また演出で赤い怖いような照明が入ってたり、なんてこともありますので、どういった演出で撮影されているか。これも要チェックです。
《魔王》に限らずすべての鑑賞教材において、音楽家だけではなく音楽科教員としての目で鑑賞をしてみてください。そして自分が何をしたいか何を学ばせたいかに最も適した鑑賞教材を選んでください。
鑑賞指導時の教員の視線はどこが正解?
これは授業の実践。
授業中になりますが、スクリーンの大画面に映像を映しているとき教員はどこを見ているでしょうか。
生徒と一緒に画面を見ているでしょうか?
教科書を見ているでしょうか?
はたまた、楽譜やスコアなどを見ているでしょうか?
視聴覚教材が画面で流れているとき、生徒が何を見ているのか。
例えば画面をじーっと見ているのか、教科書を見ながら聴いているのか、またきちんと集中して見ているのか、眠そうなのか、演奏中に目が輝いた瞬間はいつか、笑った瞬間はいつか、集中が切れた時はいつか、俯いた時はいつなのか。
そういったことを、生徒を見ながら鑑賞を続けていきましょう。そして生徒を観察した上で、鑑賞の中に反映をさせましょう。
生徒を指名するときにこのとき「あなたはこういう反応したけど、どうしてそうだったの?」とか。「鑑賞している最中に笑ったのはなぜ?」とか。「どういったことに気付いたのかな?」とか。
そういったふうに、次の投げかけにつながるように、教員は生徒をじっと観察しておくことが大事です。
ややもすると一緒に鑑賞教材を見てしまいがちですが、それは絶対にしてはいけませんし、教材研究の段階で何度も見ているはずですので、教員は生徒を見ておきましょう。
まとめ:10分で理解する音楽鑑賞授業の3つのコツ【定番曲「魔王」のチェックポイントも紹介】
鑑賞の教材探しについては「【教育実習生必見】指導教員が教える音楽の教材研究のやり方のコツ」の中で話をしていますし、実際に教科書に載っている曲。どんなものがあるか、まず全部一度聴いてみるといいと思います。
「鑑賞」の授業は眠い目をこすりながら聴いて、なんとなく感想を書くという授業ではもうありません。「生活と社会を感じる」そして参加する、何かを学ばせる。そういった鑑賞の授業をぜひやってみてください。
記事の内容は動画と同じです。
動画「10分で理解する音楽鑑賞授業の3つのコツ【定番曲「魔王」のチェックポイントも紹介】」も是非ご覧ください。
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