音楽教員歴10年の原口直です。
歌唱指導は避けては通れない項目です。特にピアノ専攻の人は自分が伴奏をしてきたということから、自分が歌っていない、合唱に参加していないという経験の人が多めです。今までの教育実習生でもそういう子が多かったです。それから、出身校(出身の小学校・中学校・高校)によって合唱に対する意欲やレベルがまちまちだったりします。
合唱指導についての指導書や雑誌、DVDなどたくさん出ていますが、今日はその合唱指導の前、基礎の基礎について話をしたいと思います。
この合唱の基礎の基礎がわかれば、どの校種・学年でも活かすことができます。また年間のうち多くの時間を割く合唱。これを押さえられれば自分の自信にもなると思います。また声楽専攻だからといっても、合唱指導はまた別の力が必要です。
ぜひこの動画を最後までご覧ください
合唱については、教育実習シリーズの中で専攻別【ピアノ専攻】【声楽専攻】【管弦打専攻】【音楽教育・音楽学・作曲専攻】の専攻別に話をしています。是非そちらもご参照ください。
【教員を目指す人へ】ピアノ専攻の皆さんへ送るアドバイス
【教員を目指す人へ】声楽専攻の皆さんへ送るアドバイス
【教員を目指す人へ】管・弦・打楽器専攻の皆さんへ送るアドバイス
【教員を目指す人へ】音楽教育・音楽学・作曲などを専攻する皆さんへ送るアドバイス
また運営については【行事運営】という動画もあります。そちらでも合唱について話をしています。
合唱指導の基礎【準備編】
まずは自分ができる準備をしましょう。
自分自身が合唱曲の全パートを歌ってみる
1つは自分で全パートを必ず全部歌ってみることです
いくらソルフェージュ力のある人でも、きちんと自分で歌っておくっていうのが大事です。特に女性の教員の場合、男声パートを歌うときに地声でいけるのか、オクターブ上げるのかといった調整も必要ですし、自分が歌ってみて引っかかるところは、必ず生徒が引っかかるところです。
そういったことを知るためにも、きちんと全曲・全パート自分で歌ってみるというのが大事です。
そしてその際、声楽専攻の人はなるべくヴィブラートを使わずに歌うといいと思います。
私は声楽専攻です。独唱の場合はヴィブラートをつけるのはもちろんいいです。けれども、合唱指導の場合はより正確に、そして生徒が聴きやすいように歌うというのが大事です。そうなってくると、ヴィブラートは時に邪魔ものになってしまいます。
このノンヴィブラートで歌う練習。これは声楽専攻の人にとっては意外と難しいかもしれません。ぜひ練習をしておいてください。
合唱曲の伴奏を弾いてみる
それから自分で伴奏を弾いてみるというのも大事な準備です。
ピアノが苦手な人はピアノ伴奏の見本などを何度も聴くというのでもいいです。
それをするのはなぜかというと、指導の中で間違いに気づくことができるということです。プロとは違いますので子どもは間違って歌ったり、間違って弾いたりします。楽譜通りにしないことがあるということですね。
音を間違えて弾いている、例えば臨時記号がないとかリズムが違うとか。そういったところに気づくためには一度自分で弾いたりよく聴いたりすることが必要です。歌に関してもピアノに関しても、生徒の間違いに気づくために自分がまずやってみましょう。
合唱指導の基礎【手順編】
合唱の音取りの手順概要
合唱の音取りの際の手順です。
まずは合唱で音を取るときまず「何をしたいか」これを先に言います。
これから歌う時に音を正確(旋律を正確)にとって欲しいのか、強弱をつけて歌って欲しいのか、子音を立てて歌って欲しいのか。これから歌うときには何を注意して歌うかということを先に言います。これはその後の評価につながってきます。
開始の位置を指示する
何をするかというのを言った後にまずは「開始の位置」を指示します。
合唱曲の楽譜のページ・練習番号・段・小節などを正確に指示をします。
開始音を出す
次に「開始音」を必ず出します
この開始音。楽器専攻の人、それから絶対音感の人に抜けがちなんです。必ず開始音を毎回丁寧にあげてください。
開始音のあげ方については、様々な方法目的に応じていろいろあります。下から順番にとっていく、上から順番にとっていく方法もありますが、私の場合、初めに主音など取りやすい音をパートかかわらずに取らせてから、順々に複雑な例えば7音目、9音目を上げたりします。
その時の目的、そして生徒の実力、発達段階に応じて考えてみてください。
入り方を指導する
次は「入り方」について指導します。
特にアウフタクトで入る場合、どのように入るのか。それも音の開始の位置ではなくて、息を吸う位置を教えてあげてください。音の始まる位置をどうしても教えがちなんですけれども、合唱の場合に大事なのは息を吸う(ブレスをする)位置です。必ずそれを教えてあげてください。
カウントの方法を統一する
次は「カウント」です。
カウントを必ずいつも同じようにあげてください。どういうことかというと6/8拍子を例にとると、
・「123456」とカウントあげる場合と
・「123223」とあげる場合、それから
・「いーち にーい」 とあげる場合。
そういったいろいろなパターンがあると思います。
これを毎回必ず同じにしてあげてください。音楽を知っている教員にとっては何気ないことでも、生徒たち子どもたちにとってはとても大切な情報です。
「123456」にすると決めたら、どんな時でもどんな場所でも、そして日をまたいでも「123456」これで統一するという風にしてください。
以上が手順です。
合唱練習への評価
目的・開始位置・開始音・入り方・カウントの指示、そして最後に「評価」です。
目的に対して評価をします。音程をとるということが目的だったら「音程が取れていたね」「違ったね」という評価をします。もし強弱を目的としていたら「とても良い強弱がついていた」とか「もっとフォルティッシモは力強くいこう」という風に話をします。
よくあるのが初めの目的と評価がバラバラであることです。強弱をつけようと言って歌わせているのに、歌い終わった後に違うこと「音が外れている」とか「子音が聞こえない」とかそういう別の事を言うというのはよくあることです。そこに気づいて気になってしまうのはわかるんですけれども、生徒が何を目的に歌い始めているかということをよく考えてください。
せっかく強弱を気持ちよくつけられるように注意して歌ったのに、全然違うことを評価されたらこれは悲しいです。ぜひ目的と評価がイコールになっているようにしてください。
合唱指導の基礎【指揮者を立てる】
「指揮者が絶対」という考えを生徒に植え付ける
指揮者というのはその音楽にとって最も重要な最も偉い人です。その偉い人というのを教員が自らきちんと生徒の前で示すということが大事です。指揮者は絶対であるということを生徒の前で指導しますが、その「指揮者は絶対」を教員も守るということです。そしてそれを生徒に植え付けるのです。
どういうことかというと、例えば演奏し終わった後に気付いた点についてコメントする時、それをまず指揮者に聞くことです。
どうしても教員が初めに色々とあーだこーだと言いたくなってしまうんですが、「指揮者が絶対」なので、まず指揮者に「どうだった?」というふうに聞きます。そして指揮者が言ったことを補うように、指揮者の話したことを音楽科教員が詳しく解説したり、具体的な方法を述べたり、さらに新しい課題を追加したりというふうにします。指揮者にまず話をさせるということが大事です。
指揮者を立てる、その理由とは?
その理由には、合唱はクラスで練習することがあるからです。つまり授業以外で練習することがあります。生徒は音楽の授業以外にも様々な立場や役割を持っています。その子が指揮者という役割でありながら、他の教科では違う役割かもしれないですし、他の委員会や係なども違うかもしれません。
しかし音楽においては絶対的な存在なんだというのをきちんと授業で植え付けておくと、合唱をクラスで練習するときにその後に自然に従うようになってくれます。
音楽の先生がその子を絶対だと言っていれば、音楽活動をする時には、その子を立てるようにクラスがくれるはずです。まずはその第一歩(下地)を音楽科の教員が音楽の授業でやってあげるというのが大事です。指揮者の子が授業でももちろんクラスでもうまくやっていけるようにそのような下敷きをつくってあげる、これも大切です。
まとめ:10分で理解する合唱指導の3つのポイント【学校種・学年・先生の専攻は不問の合唱コンクール対策】
発展的な発声練習とかエチュードとか歌詞の解釈とか、様々な指導方法が本やDVDで出ています。そういったところはぜひいろいろ学んでみてください。実践例がたくさんありますし、優秀な先生方がたっくさんいらっしゃいます。
しかし、足元をきちんと固めてすべての合唱指導において今言った3点を大切にしてほしいと思います。合唱指導に自信を持てれば担任の先生などにも頼りにされますし、何より合唱コンクールなどでは保護者の方やお客さん担任の先生などいろんな人に褒めていただいたり評価してくださったりしてくれます。
合唱指導をきちんとできるように基礎を固めていきましょう。
ブログ記事の内容は動画と同じです。
動画「10分で理解する合唱指導の3つのポイント【学校種・学年・先生の専攻は不問の合唱コンクール対策】」も是非ご覧ください。
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