皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。
現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
このYouTubeチャンネルでは学び続ける先生と学生さんのために、学校で役立つ情報と提案を発信しています。
今日は動画のコメントでご質問いただいた「職員合唱」についてお答えします。
文化的行事や卒業関連の行事にある「職員合唱」。
私が過去に在籍した2校では、合唱コンクールのエキシビションとして、また3年生を送る行事の1つとして職員の出し物がありました。
生徒は緊張感から解き放たれた状況でとても盛り上がりますし、子どもたちが毎年楽しみにしている出し物でもあります。
行事担当や音楽科、あるいは宴会係のような立場の教員が中心となるわけですが、子どもへの指導とはまったく違う準備や気づかいが必要です。どのようなことが必要かについてお話しします。
この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。
▶職員合唱を企画する側として何に気を付けたらよいか知りたいという方
▶職員合唱に出演する側として取り組み方を知りたいという方
▶子どもへの合唱指導と違う点をおさえたいという方
この動画の他には、
文化祭や合唱コンクールといった文化的行事で気を付けるべきこと…マルチタスクを意識したスケジュール管理、「郷に入っては郷に従え」の気持ち、音楽科の関わり方について話しています。
姉妹チャンネル「原口 直の学校著作権ナビ」では、「儀式的行事の著作権」を教員の担当別に解説した動画、合唱コンクールで歌詞を配布できるか、オンライン授業に欠かせない授業目的公衆送信補償金・SARTRASについて、行事のオンライン配信での注意点について話した動画等、行事に欠かせない著作権の知識を話しています。
併せてご覧ください。
職員合唱の演目の決め方
まず、何をするかと演目に頭を悩ませるところですが、結論「何をしたって、ウケます」。
普段まじめで厳しい態度で接していたり、音楽科の教員以外は音楽とは無縁のように見える教員が急に真剣に歌ったり、仮装したり、ダンスやコントをしたりしたら、間違いなく盛り上がります。
演目の決め方
では、どのような演目を選べばいいでしょうか。
まずは「何を求めるか」です。
簡単に言うと、笑わせたいのか、泣かせたいのか。両方だったら、バランスと最初・最後を何にするかです。
高いクオリティを求める合唱やダンスの場合は、曲数を少なくして集中できるようにしましょう。
次の章で詳しく話しますが、教員はアイデア豊富で「あれもこれも」と増えていってしまう傾向があります。少しハードルを高めに設定して、他に広げないようにしましょう。
演目数を複数考えたいという場合は「時事ネタ」です。
子どもたちの中で何が流行っているか?、YouTubeやSNS、また子どもたちに直接聞いたりして、どのような曲やダンス・お笑いが流行っているかをリサーチしましょう。
パロディは元ネタを知っていてこそ共感したり笑ったりできます。また、あまりハードルを上げすぎずにすぐマネできるものを選びましょう。
時間厳守が学校行事の原則
そして、時間。
行事でもっとも避けたいのは「時間が予定よりも延びること」です。
文化的行事はタイムスケジュールがきっちり決まっていますので、延長すると、後の演目や別会場との兼ね合い、片付け、さらに下校時刻等にも影響します。
職員合唱の場合、準備に時間がかかりすぎてしまったり、集合時間に集まらない・集まれなかったり、盛り上がりすぎて収集がつかなくなってしまったりします。
20分なら、出はけや準備・片付けすべて含めて計算しましょう。
職員合唱の企画担当者が重視すべき3つのこと
少数の企画担当者で決めていく
初めて企画担当になったり、「毎年すごく盛り上がるから」とプレッシャーに感じたりすることから、意見を広く求めがちですが、企画の主導権は1人または2人くらいの少数が良いと思います。担当者が多くいると、いちいち相談をしたり、承認を得たりしなければならず小回りが利きません。
文化的行事の準備期間はただでさえ、学級や教科発表、委員会・部活動等、教員は忙しく動き回ります。
子どもたちの活動が最優先ですので、職員合唱の優先順位は低いです。でも、クオリティを求めてしまうのが職員合唱なのです。
主導権を持つ人をしぼり、小回りが利く体制を作りましょう。
職員合唱の選曲・パート分けをスムーズにやるコツ
次に選曲やパート分けについてです。
合唱等の歌唱の場合、先ほど言った通り確保できる時間が短いので、初見の流行曲よりも教員自身や生徒が歌っていてすでに知っている曲…例えば、クラシカルな合唱曲『大地讃頌』『旅立ちの日に』『翼をください』等を選ぶと良いと思います。
カラオケのような少人数の歌唱やダンス・コントを伴う演目でしたら流行曲でもいいですが、全員で歌うなら定番曲が良いです。
年齢層の幅に対応でき練習時間が短くすみますし、生徒の練習を何度も何度も聴いているので曲をよく知っていて、人によっては生徒のパート練習に付き合ったりして歌える人もいるからです。
次にパート分けについて、歌が好きな教員・苦手な教員がもちろんいます。また、「歌は下手だから」とか「苦手だから」と謙遜もします。
でも、教員は歌が好きな人やうまい人が多いです。しかも、普段から大きな声を出している人が多くて、腹式呼吸ができています。パート分けは自己申告を尊重しつつ、技量を見極めて企画者が割り振りましょう。
企画は前もって決めすぎない
そして、企画内容は8割くらい固めておくのがいいです。
提案したり、練習を進めていったりすると、「こうしたらどうか」「あれも入れたらどうか」「ちょっとこれはできない」と他の教員からアイデアが出てきます。より良くしたい!盛り上げたい!という気持ちや、もともとのクリエイティブ力とクリエイティブ欲があふれてくるのです。
100%バッチリ企画したものが、どんどん変更修正されると「考えた時間は何だったの…」と悲しくなります。8割決めて、あとは変えられてもいいやくらいの気持ちで臨むのが、企画者のために良いと思います。
職員合唱の準備
職員合唱の指導が大変です。
定番曲やすぐにマネできるものを選ぶという理由は、ここにあります。
教員の練習時間は十分に確保できないからこそ…
まず、全員揃いません。全員揃うのは本番だけと思ってください。リハもゲネもありません。文化的行事の準備期間は日々の授業に加えて、教科の展示や作品づくり・委員会の活動・部活動の準備など、たくさんの校務があります。
さらに、文化的行事に付きものなのが学級のもめごと。誰が来ない、練習に参加しない、〆切を守らない…毎年もめます。そのたびに学級担任はもちろん、学年を組む他の教員・教科担任・委員会や部活動の顧問は、もめごとの仲介をしたり、生徒をなだめたり、鼓舞したり、熱く語ったり、裏まわしをしたり…とにかく大変です。
職員合唱の優先順は一番下。全体指導の後、個別指導をし、授業のふりかえりや準備をします。練習日時を決めても音楽室に来たのは1人…なんてこともありました。
また、時短勤務や変則的な勤務時間の人、勤務時間内17時より前と考える人もいるでしょう。そうなると集まりません。
また、職員合唱は子どもに秘密なので、基本的に子どもが下校した後ということになります。これも集まりが悪くなる一因です。
練習の日時に参加できない人、合唱なら歌が苦手な人へのフォローも大切です。個別でレッスンをしたり、練習用の音声や動画を作ったりということもしなければなりません。自分から「教えてください」と来てくれればよいのですが、忙しさを考えると企画者から動く必要があります。
教員の指導に授業規律は通用しないからこそ…
また、指導も大変。
集まって私語、段取りや並びを説明している時に聞いてない、楽譜を失くす、歌った後にすぐしゃべる…子ども相手なら「ガツン!」と言ったり、授業規律にのっとってペナルティを与えたりできますが、相手は教員。それができないのです。
企画者としては、限られた時間の中で「今日はここまでしなければ」と焦りますが、なかなかうまくいきません。演目の選択・フォローが大切になってくるのです。
なるべくハードルの低いものを…企画者の首をしめないためにも必要なことです。
何をやってもウケるのだから、クオリティは求めない。また、フォーメーションが難しいダンスやセリフのかけあいが多いコントなどは、避けた方がよいでしょう。
まとめ:【絶対にウケる!?】教員の職員合唱のネタ・企画・運営・練習をどうするか?
今日は「職員合唱」について話しました。
コメントをいただいた時は、動画1本分の内容になるかな?と思いましたが、伝えたいことがたくさん出てきて大作になってしまいました。
文化的行事の場合、音楽科の教員なら職員合唱の企画担当を外してもらうことが最善策です。担当は外れても、合唱の指導やパート音源づくりは手伝うといった関わり方でもよいでしょう。
また、オンラインで行事をする昨今では、職員の出し物の在り方も変わっているのかもしれません。動画を作るというのも1つの手ですが、企画・撮影・編集はとんでもなく時間がかかる上、担当者の負担はとても大きくなります。
リレー形式の歌唱にする、既定のセリフの動画を自分で撮ってもらって集約する等、編集の手間がかからないような内容にしたいものです。
そして、配信の際は著作権の意識をお忘れなく。
オンラインの行事配信については「原口 直の学校著作権ナビ」で行事ごと、ケースごと・教員の役割ごとに話しています。ぜひご覧ください。
記事の内容は動画と同じです。
動画「【絶対にウケる!?】教員の職員合唱のネタ・企画・運営・練習をどうするか?」も是非ご覧ください。
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