皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。
現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
このYouTubeチャンネルでは学び続ける先生と学生さんのために、学校で役立つ情報と提案を発信しています。
今日は「子どもの予想外の反応」という話をします。
教育実習生ならば学習指導案を書く段階で「予想される子どもの反応」を記入します。学習指導案で書き込むのは3~5つくらいですが私が受け持った教育実習生には、「100個考えておきましょう」と話していました。その理由もお話しします。
また、教員になったらいちいち学習指導案は書きませんが、経験を積んで子どもの実態がわかったり、くりかえし同じ教材を使っていると予想の精度があがってきたりします。
教育実習生には恐ろしい「予想外の反応」
どのように対応すればよいか3つのポイントをお話しします。
この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。
▶子どもの予想外の反応の前にできる準備を知りたいという方
▶実際の授業で、子どもから予想外の反応が来たらどうしようと不安に感じている方
▶子どもからの予想外の反応を楽しむためにはどうすればいいの?という方
この動画の他には、
学習指導案のフォーマットを使って、1から学習指導案を解説しながら書くという動画をアップしています。
併せてご覧ください。
予想される子どもの反応を事前に100個考えよう!
予想外を防ぐためには、より精度の高い予想が必要です。
ベテラン教員が子どもの反応を予想できる理由とは?
児童生徒と歳の離れたベテラン教員と歳の近い教育実習生なら、教育実習生の方が予想が当たりそうですが、ベテランの方が精度が高いです。
理由は中学1年生なら、中学1年生という発達段階がどの程度まで知識があって、どのような生活をしているかを知っているからです。しかも、1クラス35人なら35例あり、クラス分、毎年更新されていきます。
精度を高めるには多くのデータが一番です。AIの会話が良い例ですね。
ベテランは「中学1年生ならこれくらい」と知っている。その上、さらに個やクラスのパーソナリティが加わって「あの子ならこう言うだろう」「このクラスならこういう流れになるだろう」と予想できます。
さらに、音楽科の場合はたいてい同じ教材や内容で毎年授業を行います。共通の歌唱教材や合唱・和太鼓等、人によって異なりますが毎年取り組みます。
そうすると、「去年こんな風になったから、今年はこうしよう」と予想の幅が広がっていきます。同時に「予想していたこれは去年出なかったから、今年も出ないだろう」というように、取捨選択の「捨」の精度も上がってきます。
子どもの反応を100個考えるわけ
経験に互角に太刀打ちするのは難しいですが、教育実習生がより予想の精度を高めるためには数考えることです。
私が実習生に言っていた「予想される反応を100個考えておきましょう」というのは、100の中身だけが大切なのではなく、101個目が出てきたしまった時のための心の支えです。
また、授業外で児童生徒と関わる機会を学級や放課後に持ち、どのような語彙を持っているか?、思考の仕方をしているか?、よく観察しましょう。
子どもからの予想外の反応への対処策
それでも出てくる101個目です。
準備で100個考えた時の101個目と準備で5個考えた時の6個目では、気持ちの余裕が違います。100個考えておけば、心の余裕も出てきます。練習や努力が、緊張緩和やパフォーマンス向上につながることは、音楽科の実習生や教員なら納得できるはずです。
予想外の反応のよくある例はいくつかに分類できます。
②子どもからの反応が数多く出てきすぎる場合
③子どもから反応が全く出てこない場合
子どもの質問に対して教員が答えられない場合
「〇〇は、こうなんですか?」という質問が出た場合です。
わからない時は素直に「わからない」と言います。
その後はいくつかの選択肢があります。
「調べて、次回教えます」
必ず調べて、個人か全体に伝えましょう。うやむやにするのは一番よくないです。
子どもは覚えているもので、次の時間に「あれはどうでしたか?」と聞かれて答えなしでは信頼を失います。
「誰か知っていますか?」
中学生くらいになると、分野によっては生徒の方が知っていることもありそうです。
音楽の習い事をしている生徒や音楽系部活動の生徒に聞いてもいいですね。
「一緒に調べましょう」
教科書外のことでも、今はGIGA端末があれば調べられそうです。
おもしろい流れは作れますが、学習指導案から脱線したり時間がかかってしまったりするリスクを考えましょう。
子どもからの反応が数多く出てきすぎる場合
まとまりがつかなくなるパターンです。
指導者としては、こっちの方向にもっていきたいし発言の中に出ている。しかし、他の視点や意見が大量に出てくる、また、正反対の意見が同時に存在してしまうというパターンです。
例えば、歌唱曲の「歌い終わりをクレシェンドにするか?デクレシェンドにするか?」
教員としてはクレシェンドにしたい。でも、意見は色々出てくるし、いい意見もあるし、両方とも良い。
このようにまとまりがつかなくなってしまったら両方演奏してみる。その上で再度考えたり、指揮者に考えさせたり、「この時間はクレシェンドにしてみよう」と教員の意見を伝えて後日に改めて考えさせたりと工夫をします。
出てきすぎるのは大変うれしいことではありますが、舵取りが大切です。
いたずらに多数決にしたり、声の大きな子どもの意見に流されたりしすぎないよう気を付けましょう。
子どもから反応が全く出てこない場合
「意見がある人?」「どう思いますか?」に対して、教室がシ~ンとなる。本当にシ~ンと聞こえてくるような状況です。教育実習生の焦りが募る場面です。
子どもの発達段階の問題か学級の問題か考える
まずは発達段階を考えましょう。
小学校ならば、挙手がたくさんあったり意見をぶつけあったりできる積極性や関係性があるので、それでも出てこないというのは大変なことです。一方、中学高校という発達段階では、意見は頭の中に浮かんでいるけど挙手するのが恥ずかしい・面倒くさい・ワークシートに書けばいい…色々な考えがあるでしょう。
次は学級の状況。誰かが発言すると「何なの?」「いい子ぶってる」「調子にのってる」という空気が流れる場合です。
これは発達段階や時代の問題ではなく、学級の問題です。良好な人間関係が構築されていないので、心理的に安全な場所ではないということです。年度初め・長期休み明けや行事前に合唱でもめてる、といった場合によくある空気です。きちんと空気を察知して、規則的な指名にしたり、必然性のある指名にしたりしましょう。
子どもへの質問の仕方を工夫する(クローズドクエスチョン・選択式)
対処方法はまず発問の問題です。特によく発言する・意見が出やすいクラスにおいて意見が出ないというのは、100%発問に問題があります。
子どもからすると、何を聞かれているかわからない・何を答えていいかわからない。
そこで、スモールステップで考えましょう。
答えにくい原因が発問の難しさという場合が大半ですので、質問の形式を変更したり、具体的にしたりして、答え方を簡単にします。
例えば合唱で「サビの強弱を考える」という場面で、「サビの強弱をどのように歌えばいいですか」と聞いても出なかったとします。
この場合、まず質問の形式を「はい」「いいえ」で答えるクローズドクエスチョンや選択式に変えます。
「サビを強くしたいですか?弱くしたいですか?」これに答えたら、「それはなぜですか?」と踏み込んだ質問ができます。
具体的にする場合は、例えば数字を使うということです。
「歌いだしの強弱を10段階で3として展開部を5だとすると、サビはいくつですか?」
数字で答える方式してこれに答えたら、「それはなぜですか?」「そうするためにはどうすればいいですか?」と踏み込んだ質問ができます。
今回3つ紹介しましたが、予想外の反応のよくあるパターンが予想できれば、もうそれは予想内です。
②子どもからの反応が数多く出てきすぎる場合
③子どもから反応が全く出てこない場合
「子どもからの予想外の反応は大歓迎!」になったら
3年目を終えて、3学年を一周したころには「予想外の反応、大歓迎!」という気持ちになります。
経験を重ねて予想の精度が上がって、授業が順調に進むのは快適ではありますが刺激が少ないです。
たまに「そう来たか!」「一本取られた!」というような反応があると、うれしいものです。
例えば、長調と短調の説明の時に「短調が明るい」と言われた時は、明るい短調をつまみに作曲専攻の同級生と話したいという衝動にかられました。そして、次にこの問いをどのような授業にできるかなと考えていました。
映画で残虐なシーンなのに美しい曲が流れるという演出があったはず…
暗い長調ってあるのかな…
旋律は長調だけど歌詞が悲しい曲ってあるのかな…
授業のタネはたくさん生まれます。
予想外の反応が来たことをきっかけに、「考えてみたい」「調べてみたい」という気持ちに火が点き、次の年の授業につながる例はたくさんあります。同じ教材でも、世の中や子どもたちはどんどん変わっていくのだから、まったく同じ内容にせず来年はこうしようと考えます。
まとめ:授業での子どもからの予想外の反応に困ったときの対処法
今日は「予想外の反応」について話しました。
予想外の反応があるからこそ、音楽科教員は必要です。
すべて想定内なら、YouTube授業動画を1本作って「あなたはこう思いましたね」「こう考えられます」と断定して進めてしまうことができます。実につまらないです。
人間だから予想外があって、人間が応える。それに子どもだからこそ出る予想外があるのです。
教育実習生は授業をすることはもちろん、それ以前に子どもたちの前に立つことが怖い・危険を回避したい・失敗をしたくないという気持ちがあることはよくわかります。失敗をしないために努力をしてきた真面目な学生ほど、そう思うでしょうし正しい恐がり方です。
しかし、反応が予想できなかったことはマイナスではありません。教育実習の指導教員はベテランばかりですから、予想できなかったことをダメだという人はいないでしょう。
予想外の反応を楽しめるように、観察・準備・歓迎をしましょう。
記事の内容は動画と同じです。
動画「授業での子どもからの予想外の反応に困ったときの対処法」も是非ご覧ください。
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