音楽の先生は、音楽が好きで得意だからこそ教員になったという方が多いため、生徒が音楽を嫌ったり苦手に感じたりする感覚を理解しづらいことがあります。
しかし、そうした生徒にどのような背景があるのか、どのように対応すればよいのかを知ることは、教育実践において極めて重要です。
音楽が苦手・嫌いな生徒の理由を探る
まず、音楽が苦手・嫌いな生徒の原因について考えます。たとえば歌唱の授業で「歌わない」生徒がいる場合、それには必ず理由があります。その理由を理解するためには、「なぜ私たちは歌えるのか」という視点を持ち、その裏側を見つめ直すことが必要です。
考えられる理由には、楽譜の仕組みがわからない、その日の気分が乗らない、体の動かし方や技術が未熟である、失敗や恥ずかしさの経験、声変わり、そして授業者との信頼関係の欠如などが挙げられます。
こうした要素を理解する上で、「中学校の音楽の授業とは」(第3回)での詳しい解説動画も参考になります。
生徒のプライドを傷つけないために
次に、そうした生徒たちに対する具体的な対応についてです。絶対に避けなければならないのは、生徒のプライドを傷つけることです。
「歌わない」「歌えない」理由を丁寧に考え、その子の人格を決して否定してはいけません。歌わないからといって、その子を嫌ったり、人格全体を否定するのは厳禁です。理由を探っていくと、その子の姿が徐々に見えてくるはずです。
また、音楽以外の分野でその子が得意なことがあれば、そこをしっかり認めて褒めることも効果的です。
音楽教員の視点:広い目・長い目で見る
三つ目は、音楽教員としての考え方の持ち方です。苦手意識を持つ生徒に対しては、「広い目」と「長い目」で見る姿勢が求められます。
広い目とは、その子が音楽のどの部分を嫌いなのか、何ができないのかを見極めることです。
たとえば、人前で歌うのが苦手、一人で歌うのが苦手、といったこともあります。反対に、他の音楽活動は好きかもしれませんし、音楽以外のことに大きな才能を持っているかもしれません。
長い目とは、今は歌わなかったとしても、次回やその次の授業、あるいは1年後、5年後、10年後に音楽が好きになる可能性を信じるということです。目の前の一瞬だけで判断しないことが大切です。
また、教員側の指導方法を見直す機会として捉えるのも重要です。教室の雰囲気づくりに問題がなかったか、発言が無意識に生徒を委縮させていなかったかなど、自分自身の指導を振り返る良いきっかけにもなります。
クラスに35人いれば、全員が音楽を心から好きになるとは限りません。先生自身も、学生時代に苦手だった教科があったはずです。音楽が嫌い・苦手という理由で生徒を否定せず、広い心で接していきましょう。
まとめ:音楽の授業を見直すチャンスに
今回は「音楽が苦手な子・嫌いな子」への対応についてお話ししました。私自身、学生時代は数学が苦手でしたが、大人になってからその面白さや重要性が理解できるようになりました。
苦手を理解することは、逆に自分の得意を見つける手がかりにもなります。すべての生徒が音楽を好きになる必要はありませんし、それは教員の責任でもありません。だからこそ、自分を責めず、生徒も責めず、音楽の授業のあり方を一緒に見つめ直していきましょう。
この記事は動画「音楽が嫌いな子への授業対応:プライドを守り、やる気を引き出す指導法」をもとに作成しました。
コメント
こう言う考え方の先生に習いたかったですね。私が習った先生は嫌な人ばかりでした。何も分からないまま、指揮して下さいと言われ適当に振ったら、鼻で笑われました。今でもそいつの顔は忘れません。