音楽教員歴10年の原口直です。
教員だって怒らなくていいのなら怒りたくないです。しかし、毎日のドラマティックな学校生活の中でどうしても怒らなければいけない場面は出てきます。何度も何度も怒ったり、毎回毎回怒っていると、だんだん怒り方がわかってきます。
今日は10年間の教員生活で身につけてしまったプロの怒り方について3つ話をします。
原則:「強く」怒る
基本的には感情的に怒らないというのが大事ですが、時には強く怒らなければいけない時があります。
それは、本人や周りに危険が及びそうな時、差別的な発言や行動、人や物を傷つける時。こういった時はまず感情的にびしっと怒ることが必要です。
危険が伴う場合は本人だけの問題ではなくなってしまいますし、ケガにつながってしまうのはとても怖いことです。差別的な発言も同様です。本人が無意識で発言してしまうこともありますが、まずは「いけない」と先に言うことが大事です。人や物を傷つけることも絶対にさせてはいけません。
理由はともかく、第一歩は「強く怒る」です。
怒るときの手順
怒った理由を話す
強くびしっと怒った後には必ず個別で話す時間を設けます。その時は問題を起こした生徒と向き合って、冷静に座って話すのが大事です。
まずはなぜ私が強く怒ったかという理由を話します。
あなたや周りに危険が及ぶかもしれなかったのだ、もしそのままにしていたら、こういう怖いことが起こったのかもしれないのだとゆっくりと話してあげます。
問題を起こした生徒の言い分を聞く
その次には問題を起こした生徒の言い分を聞きます。聞く時には途中で遮らずに最後まで聞いてあげること。
途中で「ん?」と思ったり、「イラッ」としてもそこは抑えて、「うんうん」「そうだね」と肯定のあいずちを打ちながら、ひとまず最後まで聞きます。
質問する
その次には矛盾点、もっと詳しく知りたい点について、こちらから質問をします。
「これとこれは話が矛盾しているけれど、どういう風になっているの?」
「どういう気持ちだったの?」
「ここについて詳しく話してくれるかな?」
と聞きます。
その回答をしている時も、話は遮らず、最後まで聞いてあげます。これを何度か繰り返します。
怒った生徒に対して良い所・悪い所・改善点を伝える
その上で良い所・悪い所・改善点を最後に話します。
もし、その子が怒られるような問題行動をした時にも良い所は1つ2つはあるはずです。
例えば、誰かに暴力をふるったとします。その時に
「自分を守りたかった」
「前に自分が嫌なことをされた」
「仕返しをしたいと思っていた」
とか、こういうことを話してくれて、一方的にその子が悪いだけではないこともありますので、感情の部分…良い所を少しでもいいので見つけて言ってあげます。
その後に悪い所を言います。
言い分はわかったけれども、それを暴力という形にしてはダメだという悪い所をズバッと言います。
その上で改善点も言います。
もしイラっとしたら、暴力…手を出すのではなく言葉で説明すればいい。できそうもなければ、その場をはなれて冷静になって、他の人に協力を得たり、先生に話したりすればいいという改善点まで話します。
ここまでくると冷静に話すことができていますので、最後は笑顔で「もっとこういう風になってくれればよかったんだよ」「今回のことでこういうことがわかったよ」と最後は肯定的に生徒を送り出します。
この個別指導の手順。なぜ強く怒ったかを話す。生徒の言い分を遮らず最後まで聞く。良い所・悪い所・改善点を話す。この手順が大事です。
生徒を怒る時の注意点
教員側は複数で対応する
1対1で話した方がいいと思われがちですが、生活指導の場合、自分の冷静さを保つためや証拠を残すため、役割分担などの理由で複数の教員で対応することが基本です。
どうしても1人で対応しなければならない場合も、時間を改めて作って、教員が2人以上で対応できるようにして話をする。これが鉄則です。
指導内容を記録する
基本は生活指導専用のノートを作って、記録をしていくのがいいです。言ったことややったことを書いていくのが一番いいです。色々な場所に書いてしまったり、紙ペラに書いてしまうと情報が洩れてしまたり、どこかへ行ってしまったりします。生活指導専用ノートを作って、そのノートは鍵のかかるところで管理をするのがいいです。
記録の方法としてレコーダーもありますが、これはあまりおすすめしません。ICレコーダーが目の前に会って話すのは大人でもちょっと気分が悪いですし、身構えてしまいます。ICレコーダーを撮らなければいけない場合もありますが、きちんと許可を取っておくことも大切です。なるべく避けたいところです。
特別な支援が必要な生徒かもしれません
特別な支援が必要な生徒かもしれないということを頭の片隅に置いて指導する。
感情的に動いてしまう生徒の場合は、自分の言いたいことやりたいことが口で伝えられないので暴力になってしまうことがあります。特別な支援が必要かもしれないな、感情を言葉に表すのが苦手かもしれない、暴力という手段しか知らないのかもしれないという配慮が必要です。
学校関係者・保護者との連携
生徒がしたこと、指導をどのようにしたかを管理職や学年主任、生活指導主任、そして養護教諭や保護者といった周りの人たちと連携を取って指導するのが大事です。
怒ると言っても、1対1の間での感情のぶつかり合いではありません。時間や人、手間をかけてその子をいい方向に導いていく「指導」なので、1人では絶対にできないことです。周りの人たちと協力・連携してその子を指導していきましょう。
まとめ:中学生を効果的に叱る方法:教員が教える現場の実践ガイド
子どもを怒る時、子ども側からしたら「こわい」「うるせぇな」となるかもしれませんが、教員側は意外と冷静です。
この子をどのように指導してあげたらいいのか、良い方向に導いてあげたらいいか。声が大きくて怖いかもしれませんが、頭は冷静なのです。また、怒ったこと・ぶつかったことが後々その子との絆になることもあります。怒ったからと言ってその子のこと全部を嫌いになるわけではもちろんないですし、人格を否定することもありません。
そこに対して怒った時に、その後何が待っているかは大人がきちんと見てあげましょう。
記事の内容は動画と同じです。
動画「【家庭で使える】教員が教える中学生の怒り方」も是非ご覧ください。
コメント