なぜ親が子供に経済事情や家族形態を説明すべきなのか?

【教員の思い】親が子どもに説明して欲しい家庭の話 一歩先ゆく音楽教育(スキルアップ編)
一歩先ゆく音楽教育(スキルアップ編)
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今日は「子どもに説明する家庭のこと」について、教員ができる保護者への働きかけを話します。

教員として子どもに関わっていた時に、子どもを通して家庭を見ていました
学校にいる時間は、子ども同士の人間関係などの生活指導・子どもと教科の学習指導・子どもと行事委員会や部活動といった教科外の指導をします。

しかし、子どもが学校で過ごすのは8~16時の約8時間。1日の3分の1に過ぎません。8時間は睡眠を取っているとしたら、学校で過ごすのと同じくらい家庭の中で過ごしていますので家庭での時間は重要です。

学校側から見ていると、「子どもと保護者がもっとコミュニケーションを取ればいいのに…」「保護者が子どもに説明すればいいのに…」と思う事があります。

もちろん、「家庭によって時間が確保できない」「反抗期でまともに会話できない」等の理由はあると思います。
しかし、説明しない理由が「まだ子どもだから」とか「言ってもわからないだろう」とか「隠しておきたい」ならば、子どもに説明することを前向きに考えて欲しいと教員から促してみてください。

子どもにとって家庭も学校も心地よい場所にするために、保護者に話をする時の参考にして欲しいと思います。

 

この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。

教員として
「保護者にどう説明すればいいだろう」と悩んでいる方
「保護者よりも教員自身が年下で話しにくい」と思っている方
「子どもを家庭と学校の両方で育てたい」と考えている方

 

この動画の他には

【すぐに分かる】生徒の家庭生活・性格が分かる3つの身だしなみとは?
【すぐに分かる】生徒の家庭生活・性格が分かる3つの持ち物とは?
中学では週1時間しかない音楽科は、短い時間と少ない情報で子どもを見取る必要があります。すぐに目が行く身だしなみ3つや、子どもや家庭を映す持ちもの3つを紹介しています。

 

生徒・同僚・上司・保護者に好かれる先生とは?
では、保護者との連携について話しています。「子どものことを想う」という共通目的を持つ、保護者と教員。味方に付ければ、これほど強力な協力者はいないという話をしています。

 

 

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なぜ親が家庭の事情を子どもに説明する必要があるのか?

内閣府が実施した「子どもの貧困調査」

内閣府が子どもの貧困について全国的な調査が実施した「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」が令和3年12月に公表されました。

 

1.1.分析結果の概要
保護者・子供の生活状況について、全国的な実態を把握するとともに、「等価世帯収入」の水準と「親の婚姻状況」別に比較分析を行った。
分析の結果、世帯収入の水準や親の婚姻状況によって、子供の学習・生活・心理など様々な面が影響を受けていた。

 

「家庭は『子どもの学習・生活・心理などに影響する』」という、感覚ではわかっていたことがデータによって証明されました。

詳細は「報告書」の原本をご覧ください。

 

 

保護者への質問は
✓「食料が買えなかった経験」や「衣服が買えなかった経験」があるか
✓「テレビ・ゲーム・インターネット等の視聴時間等のルールを決めている」かどうか
✓子供が将来どの段階まで進学するかの希望・展望子どもへの質問は
✓学校がある日に授業以外の勉強をするか
✓進学したいと思う教育段階について
✓「朝食」や「夏休みや冬休みなどの期間の昼食」について
✓部活動等に参加していない割合やその理由

などがあります。

心理的な状況や新型コロナウイルスの影響、支援の利用状況等についても調査されています。興味がある方は、内閣府のホームページをご覧ください。

 

新しい学習指導要領

保護者に理解してもらうには、子どもたちの思考を学校でどのように育てているかを説明してもいいでしょう。
子どもたちが学ぶ学習指導要領は保護者の世代とは異なりますし、現在の学習指導要領について詳しい保護者はなかなかいません。

 

新しい学習指導要領では、

✓「学んだことを人生や社会に生かそうとする力」「未知の状況にも対応する力」をつけていくということ。
✓「何を学ぶか」ではなく「どのように学ぶか」が重視されていること。

を伝えてもいいでしょう。

また、家庭の問題は正解がないものが多くあります。
子どもは学校の中で社会問題や環境問題といった「答えのない問い」に向き合う問題解決型学習(PBL)をしていることを保護者に伝え、一人の人として冷静かつ対等に話し合う機会を促しましょう。

 

 

そして、学習指導要領に新しく入った「特別の教科 道徳」の話をしてもいいでしょう。中学校の内容項目には「家族愛、家庭生活の充実」「生命の尊さ」があります。

 

 

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親が子どもに伝えるべき家庭の事情とは?

子どもと話し合う大きな機会は進路だと思います。

 

音楽教員が学級担任として進路指導に関わる際の3つのポイント」の動画では、受け持ち授業時間が少ない音楽教員が自クラスの生徒のことをどのように把握していくのかヒントを紹介しています。

 

進路の検討に伴って、学習や学校選びで重視すること・学校説明会や手続などを話し合うと思います。進路の話になって初めてひざを突き合わせて話すのではうまくいかないかもしれません。

普段から子どもと、時には対等に話し合い、大人から説明する機会があってもよいと思います。
何を説明すればいいか、ケース別に「金銭面・仕事・家族」に分けて話します。

 

 

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子どもと話す家庭の事情【お金、仕事、介護・結婚離婚再婚】

家庭の経済事情

私は小さい頃から「うちは貧乏だから」と聞かされていたのを覚えています。
実際に収入がどうだったのか?、全国の平均と比べてどうだったのか?はその当時は調べようがありません。また、親の真意や意図もわかりません。

このことは私にとって悪い思い出でも卑屈な印象でもなく、「そうなのかな」くらいでした。
服や自転車等はおさがりが当たり前でしたし、何かが欲しいと思ってもおこづかいをもらっていませんでした。他の子は新品の自転車、漫画、ゲームを持っている…確かにそうでしたが、そういうものだと思っていました。

反面、音楽や英語の習い事には小さなころから通わせてもらったり、楽器を買ってもらったり、旅行に行ったりと音楽と経験にかけてもらった金額は計り知れません。

保護者には、子どもにどれくらいの水準であるかは伝えてもらう方が、子どものためにもいいと思います。「申し訳ない」「親としてのプライドが」と思うかもしれませんが、子どもは大人が思う観点で金銭を見ないと思います。金銭の価値が社会的価値であるという考えにとらわれているのは、大人の方かもしれません。

 

教員自らもお金の話をタブー視せずに考えて欲しいという思いを込めて、「教員が最低限身につけるべきお金の知識~貯金・保険・投資~」の動画をアップしています。

 

親の仕事

再び私事で恐縮ですが、私は小学校5年から大学を卒業するまで父親と別で暮らしていました。理由は単身赴任とそれぞれの親の介護です。

単身赴任や転勤といった保護者の仕事の都合も、子どもには説明しておくといいと思う項目です。
単身赴任や転勤がある職種なのか?、どのくらいの周期でどの程度の範囲(国内なのか海外も含むのか)の転勤なのか?といったことです。わからない場合も、可能性は説明した方がいいです。

「そうなったら、あなたはどうする?」は、その時の状況やその時の子どもの考えによるので、予め無理に聞いておく必要はないと思います。
また、話をした時に思いを聞いたとしても、実際の状況では正反対のことを思うこともあるでしょう。大人が「前にこう言っていたから」と思いこまずに、現在の状況での思いを再度ていねいに確認しましょう。

併せて、保護者の職業について…仕事の内容や誇り・転勤を伴う理由・転居するメリットデメリット・別居するメリットデメリットなども、子どもだからと隠さずに、現状を伝えたり意見を聞いたりするといいです。

学習指導要領で話したように、「答えのない問い」に向き合うことを子どもは体験しています。

 

【書き方・キャリア形成の考え方】キャリアパスポートとは?(最後に私も書いてみた)」では、2020年4月にスタートしたキャリアパスポートについて解説しています。

 

家族の形(介護、結婚・離婚・再婚)

先ほど出てきた介護。介護や保護者の婚姻状況(結婚・離婚・再婚)といった家庭内の話題も、子どもの生活や心に深く関わりますので説明することを促したいものです。

介護は保護者の親、子どもにとっては祖父母です。祖父母の介護は、場合によっては保護者の生活や心理を大きく左右します。例えば、介護のために施設や家に通ったり、入退院の対応をしたりするのを子どもは見ていますし、付き添うこともあるでしょう。

認知症のお年寄りに対する対応を子どもが学ぶという授業実践を見ました。介護や病気について子どもに説明すること、共に学んだり考えたりすることも大切だと思います。

また、受け持った中学生の中には、保護者の婚姻状況(結婚・離婚・再婚)に心を大きく左右された子どももいました。学校生活に支障が出る場合もあります。曖昧にすることが子どもを傷つけることもあります。
親子や保護者の関係性や状況がもちろん最優先ではありますが、保護者の気持ちや考え、見通しを伝えることは大切だと思うケースはありました。

 

 

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まとめ:親が子どもに伝えるべき家庭の話

今日は「子どもに説明すべき家庭のこと」について話しました。

子どもの指導で「ここからは家庭、ここからは学校で教える」という線は理論上はありますが、実際にはグラデーションになったり互いに関わりあったりしています。

 

 

今日話した家庭のことは、そもそも保護者が教員に話さないかもしれませんし、教員が積極的に聞く必要はありませんし、話を担任にしてきた時はすでに子どもの生活や心に何か問題が起こっている段階かもしれません。

特定の保護者に話すのはもちろんですが、全体の場で話したり学級だよりなどで促したりして、保護者や保護者を通じて子どもに話すのもよいでしょう。

 

記事の内容は動画と同じです。
動画「親が子供に対して経済事情・親の仕事・家族形態を説明してほしい理由」をご覧ください。

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この記事を書いた人
原口直

元東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー

東京学芸大学教育学部卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。
東京都内の公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校において、教育実習生の指導・進路指導・新しい学習内容「生活と社会に関わる音楽の授業実践」を重ねる。
会社員時代の経験を活かした知的財産権教育の研究・発表実績多数。

2020年春より教室からYouTube動画・ウェブサイト・講演にフィールドを移し、教員や教育実習生が学ぶためのコンテンツを発信している。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)

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