こんにちは、一歩先ゆく音楽教育の原口直です。
今回は「年度途中で採用された場合の注意点」についてお話しします。
年度途中で採用されるというのは、産休や育休の先生の代わり、または前任の先生が急に辞めてしまった場合などが考えられます。新しい学校で音楽を教えることになる期待と同時に、大きな不安を抱える方も多いのではないでしょうか。実際、私自身も8月から前任の先生の後を継いで赴任した経験があります。
ここでは、そのような状況での3つの大切な心得をお伝えします。
現状把握と引き継ぎを丁寧かつ迅速に
まず1つ目は「現状把握と引き継ぎ」です。
年度途中でのスタートは、まるで物語の途中から登場するようなもの。これまでの経緯を知らなければ、授業も生徒との関係もスムーズにはいきません。
まずは校長、教頭、副校長、学年主任、可能であれば教科主任にしっかり挨拶をし、情報を得る時間を設けましょう。音楽科が1人しかいない場合は、美術や図工、技術家庭、保健体育の先生からも情報を集めるのが効果的です。
また、前任者の年間指導計画、授業の進捗状況、評価の基準や方法は必ず確認しましょう。直接会って話を聞ける場合は、使用教材や生徒の様子、注意が必要な生徒についても具体的に尋ねてください。
私自身、前任者と会えたのはわずか1日数時間でした。そうした場合でも焦らず、周囲の先生方に積極的に質問する姿勢が大切です。学年の先生には「今●年生はどんな雰囲気ですか?」「この時期の活動は例年どのようなものですか?」と聞いてみましょう。
音楽室の備品や楽器、予算の執行状況なども早めに確認すると、後々の授業運営が円滑になります。年度途中では予算が限られていることもあるため、その点も含めて把握しておきましょう。
何よりも、「1人で抱え込まない」「分からないことは積極的に聞く」姿勢が大切です。

生徒との関係は焦らず丁寧に築く
2つ目は「生徒との関係構築」です。
先生の変更は生徒にとっても大きな出来事です。特に高学年や中高生は、戸惑いや不安、反発を抱くこともあります。
だからこそ、最初の授業が重要です。自己紹介では、「音楽への思い」や「これからどんな授業をしていきたいか」を、自分の言葉で丁寧に伝えましょう。笑顔で親しみやすい雰囲気を心がけることで、生徒の警戒心も次第にほぐれていきます。
前任の先生と比較されることもありますが、そのやり方をすべて否定せず、良いところは引き継ぎつつ、自分らしさを少しずつ加えていくのがポイントです。たとえば、前任の先生が大切にしていた歌や活動を残しつつ、新しいレパートリーを導入すると良いでしょう。
また、生徒の名前と顔を早く覚える努力も必要です。授業中に声をかけたり、良いところを褒めたりすることで、「自分を見てくれている」と生徒は感じやすくなり、信頼関係が築きやすくなります。
音楽という共通の話題も活用できます。「どんな音楽が好き?」「その曲知らない、教えて」などの会話から信頼が芽生えることもあります。

周囲を頼り、自分を大切にする
3つ目は「周囲を頼ることと自分を大切にすること」です。
年度途中の着任には、通常以上のエネルギーが必要です。新しい人間関係、慣れない環境、山積みの仕事で心身が疲弊することもあります。
大切なのは、「完璧を目指さない」ことです。「今日はここまでできた、自分を褒めよう」と思える姿勢を持ちましょう。
校内に音楽科の先生がいれば心強いですが、いない場合も管理職や学年の先生、養護の先生など、頼れる存在が周囲にはたくさんいます。「こんなこと聞いていいのかな」と遠慮せず、「困っています、助けてください」と具体的に伝えることが大切です。
校内行事、合唱コンクール、文化祭、部活動の運営などは学校によって進め方が異なるため、早めに担当の先生や過去の資料を確認しましょう。
また、時には好きな音楽を聴いたり、趣味に没頭したり、友人と話したりするなど、心と体のバランスを整えることも忘れないでください。

まとめ:自分らしい音楽教育を、ここから始めよう
年度途中の着任には困難もありますが、その分、新しい発見や出会いもたくさんあります。あなたが音楽を通じて生徒たちに伝えたいこと、一緒に作り上げたい時間があるからこそ、この道を選んだのだと思います。
焦らず、気負わず、あなたらしさを大切にしながら、新しい学校での音楽教育を楽しんでください。
この記事は、動画「【音楽科教員】年度途中での着任で困らないための3つのポイント」をもとに作成しました。