「音楽の教員になった。さあ、すばらしい合唱の授業をするぞ」
胸を高鳴らせて音楽室に立つ。子どもたちが整列し、目を輝かせ、一斉にこちらを見て歌い始める——。
そんな想像をしていました。
現実は、合唱の「前」でつまずく
ところが、実際に音楽室で待っていたのは、こんな場面でした。
- 「楽譜、忘れた〜」が毎時間繰り返される
- おしゃべりが止まらず、歌い始められない
- 「なんで歌わなきゃいけないの?」と真顔で聞かれる
- 「お腹すいた〜」と授業中に言われる
ハーモニーの組み立てや歌詞の理解どころか、合唱以前の問題が次々と立ちはだかります。
初任の頃の私は、この現実に打ちのめされました。東京都の小規模中学校で、校内たった一人の音楽科。右も左もわからないまま、誰にも相談できないまま、毎日の授業に向かっていました。
2つの「オンガクカ」
あの頃の自分に、もし一つだけ伝えられるとしたら、こう言います。
「あなたがイメージしているのは『音楽家』の指導。でも、求められているのは『音楽科』の指導だよ」
同じ読みの「オンガクカ」でも、この2つはまったく違います。
「音楽科」は、歌いたくない人を、歌いたくさせる。
音楽科の教員になる人の多くは、自分自身が音楽に前向きに取り組んできた「音楽家」側の人間です。だから教壇に立つとき、無意識に「音楽家」の指導をイメージしてしまう。
でも、学校の教室には歌いたくない子がいて、その子たちを含めた全員を合唱に向かわせるのが「音楽科」の仕事です。
この2つの「オンガクカ」の違いについては、以前こちらの記事やYouTube動画でも詳しくお話ししています。

このギャップに気づけるかどうか
「音楽家」の指導と「音楽科」の指導のギャップ。このギャップの存在を知っているだけで、見える景色が変わります。
「自分の指導が下手だから歌ってくれない」のではなくて、そもそも求められている指導の種類が違った——そう気づけると、具体的に何を準備すればいいのか、何を学べばいいのかが見えてきます。
逆に、このギャップに気づかないまま「こんなはずじゃなかった」と悩み続けると、せっかくの情熱を失ってしまうこともあります。音楽以前のことで頭を悩ませて、教員を辞めてしまうのは、あまりにもったいないことです。
「音楽科」のスタートラインに立つための本を書きました
この「音楽家と音楽科」の話を、2020年に教育実習生向けの記事や動画で発信しました。
それから6年。YouTubeやウェブサイトで「音楽科」のための情報を届け続ける中で、合唱指導に絞って体系的にまとめたいという思いがずっとありました。
今回、それを1冊の本にすることができました。
『歌いたくない生徒を歌いたくさせる 中学校音楽教師のための合唱指導』(明治図書出版・中学校音楽サポートBOOKS)
3章・全75項目。音楽室の環境づくりから、授業準備、生徒対応、合唱コンクールの運営、そして著作権まで。パート練習やハーモニーの組み立て「以前」のことを、実践的にまとめています。
この本には、ハーモニーの作り方は書いてありません。発声法の詳細も載っていません。それは「音楽家」の指導書——指揮者や声楽家の先生方の書籍や研修から、大いに学んでください。
本書は、そのスタートラインに立つ前に読む本です。
こんな先生に、手に取ってほしいと思っています。
- 初任で音楽科を担当することになった先生
- 合唱の授業や行事に不安がある若手の先生
- これから教育実習に行く学生
- 合唱コンクールの運営を任されている先生
- 時代の変化に合わせて合唱指導を見直したいベテランの先生
初任の頃の自分に教えてあげたい——そんな気持ちで書きました。ピンときた項目から、開いてみてください。
詳しい書籍紹介ページはこちらからどうぞ。

書誌情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 歌いたくない生徒を歌いたくさせる 中学校音楽教師のための合唱指導 |
| シリーズ | 中学校音楽サポートBOOKS |
| 著者 | 原口 直 |
| 出版社 | 明治図書出版 |
| 発売 | 2026年3月 |
| 判型 | A5判・176頁 |
| 定価 | 2,420円(税込) |
| ISBN | 978-4-18-169119-6 |




