音楽科の褒め方|知覚・感受・表現を育てる3ステップの言葉がけ

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授業で子供を褒めるとき、「上手だね」「すごいね」という言葉が出てしまうことはありませんか。
こうした言葉は子供のやる気を引き出すスパイスになりますが、「音楽の学びにつながっているか」「具体的にどこが良いのかが伝わっているか」と不安になることもあるはずです。

実は音楽科には、子供の耳と音楽的な思考を育てる「魔法の褒め方」があります。
この記事では、小学校高学年から中学生を対象に、学習指導要領の考え方をもとにした3ステップの言葉がけを具体的に紹介します。

 

 

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なぜ「上手だね」だけでは不十分なのか

平成29年告示の学習指導要領では、音楽の学びは「知覚と感受を働かせ、工夫したり味わったりすること」と整理されています。抽象的な褒め言葉を、リズム・強弱・音色といった「音楽を形作る要素の言葉」に置き換えていくことで、子供たちの中に音楽的な見方・考え方の種が蒔かれます。

3つのステップを整理すると、以下のようになります。

ステップ何を褒めるかキーワード
① 知覚を褒める音楽の要素に「気づいた」ことリズム・強弱・音色など
② 感受を褒める要素から「感じた」こと+その理由音色→優しい感じ、速度→落ち着いた感じ など
③ 表現・工夫を褒める要素を使って「工夫した」ことフレーズの強弱・速度の変化 など

 

 

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ステップ①:知覚を褒める

「気づいた耳」を肯定する

最初のステップは「知覚」、つまり音楽を形作っている要素に子供が気づいたことを褒めることです。

授業中に「あ、リズムが速くなった」「ここだけ音が重なっている」という発言が出たとき、それがチャンスです。

声かけの例:

  • 「今、強弱の変化に気づいたね」
  • 「この曲のリズムの特徴をよく見つけたね。聴けている証拠だよ」
  • 「素晴らしい耳を持ってるね」

 

なぜ知覚を褒めることが重要なのか

知覚とは、旋律の上がり下がりや音色の違いに注目して聴くことです。この「聴き方そのもの」を褒めることで、子供は「音楽のここを聴けばいいんだ」という自信を持てるようになります。

▶ 動画では2:30〜で具体的な声かけ例を解説しています。

 

知覚のポイント:「間違いがない」安心感

知覚のもう一つの重要な特徴は、「音楽を形作る要素は、誰が聴いても同じように感じる」という点です。つまり、知覚の発言には間違いがありません。子供が自信を持って発言できるための大切なヒントになります。

褒めた後は「他にも強弱が変わるところを見つけられるかな?」と促すことで、知覚をさらに深める活動につなげることができます。

 

 

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ステップ②:感受を褒める

「感じた理由」まで肯定する

2つ目のステップは「感受」、つまり音楽の要素が生み出す雰囲気を感じ取ったことを褒めることです。

知覚が「要素への気づき(誰でも同じ)」であるのに対し、感受は「その要素から何を感じたか(人によって違ってよい)」という点が異なります。

子供が「ここは優しい感じがする」と言ったとき、「良い感性だね」で終わらせず、こう声をかけてみてください。

声かけの例:

  • 「音色の違いを『優しい』と感じたのは、とても素敵な発見だね」
  • 「ゆっくりとした速度だから落ち着いた感じがするという気づき。それは音楽の特質をしっかり掴んでいるね」

▶ 動画では4:10〜で感受と知覚の違いを詳しく解説しています。

 

感じた理由を音楽の言葉と結びつける

音楽を聴いてどう感じるかは自由ですが、学校教育としての音楽科では、「感じた理由を音楽の要素の言葉(音色・リズム・強弱・速度・テクスチュアなど)と結びつけること」が求められます。

「どうしてそう感じたの?」と問いかけながら感じた理由を音楽の要素で考えさせ、そこを褒めることで、子供の感性は論理的な裏付けを持ち、他の曲や別の場面でも発展的に活用できるようになります。

 

 

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ステップ③:表現の工夫を褒める

「考えて工夫したこと」を見逃さない

3つ目のステップは「表現・思考」、つまり音楽の要素をどう使って工夫したかを褒めることです。歌唱・器楽・創作の場面で、子供なりに考えたポイントを見つけてください。

声かけの例:

  • 「フレーズの終わりをあえて弱くした表現、曲の雰囲気にぴったりだね」
  • 「グループでリズムを揃えようと意識したから、音楽がぐっと前に進んだね」
  • 「速度の変化をつけて盛り上がりを作っているのが、聴いている側にもよく伝わったよ」

▶ 動画では6:09〜で歌唱・器楽・創作の場面ごとの例を紹介しています。

 

「工夫→再挑戦」のサイクルをつくる

工夫を褒めた後は、次の挑戦へつなげることが重要です。

「今の強弱の変化すごく良かったよ。じゃあ次のフレーズを逆に強くしてみたらどうなるかな?」

自分の工夫を認められた安心感があるからこそ、子供は失敗を恐れずに新しい表現に再チャレンジできるようになります。この「工夫→再挑戦」のサイクルが、さらなる探求心につながります。

 

 

まとめ:音楽の言葉で褒めることが、音楽的な見方・考え方を育てる

ステップ褒めるポイント次の一手
① 知覚音楽の要素への気づき・耳の使い方「他にも見つけられるかな?」と促す
② 感受感じた理由を音楽の要素と結びつけたこと「どうしてそう感じたの?」と問いかける
③ 表現要素を使った工夫「次は〇〇してみたら?」と再挑戦を促す

音楽科における良い褒め方とは、「上手だね」という抽象的な言葉を、リズム・強弱・音色といった具体的な音楽を形作る要素の言葉に置き換えていくことです。

教育実習生や若手の先生方は、最初どの言葉を使えばよいか迷うかもしれません。完璧を目指さなくて大丈夫です。まずは目の前の子供が気づいた小さな変化を一緒に喜ぶことから始めてみてください。

 

この記事は、動画「音楽科の褒め方|知覚・感受・表現を育てる3ステップの言葉がけ」をもとに作成しています。

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この記事を書いた人
原口直

東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー/元・東京学芸大こども未来研究所 教育支援フェロー

東京学芸大学教育学部卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。
東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で、教育実習生の指導、進路指導、「生活と社会に関わる音楽」分野の授業実践に取り組む。
会社員時代の経験を活かし、知的財産権教育に関する研究・発表も多数行う。

2020年春より、教室の外へとフィールドを広げ、YouTube・ウェブサイト・講演活動を通して、教員や教育実習生に向けた著作権教育コンテンツを発信中。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)

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