今日は「アドリブの力」についてお話しします。
様々な学校の研究会でベテラン教員の授業を参観した時、また多くの教育実習生の授業を参観や指導をした時、このように他人の授業を客観的に見ると、授業者のアドリブの力がとても大切だなと感じることがあります。生徒の突飛な発言にうまくアドリブで返すことで、授業の流れをうまく作ることができます。
アドリブ力はベテランと若手の授業を分ける大きな違いとも言えますが、中には年齢や経験に関わらずアドリブがうまい若手の先生もいます。
この「アドリブ力」お笑い芸人さんの能力に似ているな…と思いながらも、なかなか学校版に翻訳しにくいと感じていました。
今回は教員のアドリブの力を、芸能プロダクションでお笑い芸人の卵たちを近くで見てきた私なりに分析してみたいと思います。
この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。
▶授業でのうまい返し方を知りたいという方
▶アドリブの力で授業を良くしたいという方
▶生徒からの予想外の反応が怖いという方
この動画の他には、
予想される生徒の反応を100個考える理由、シーンとなるのは子どものせいではない、シーンとなった場合の質問の変え方、「予想外、大歓迎!」の理由について話しています。
基礎を抑えた上で、気をつけたい学習指導案の書き方についてお話ししています。事前に項目を確認する必要性について話しています。
併せてご覧ください。
「アドリブ」とは何か?
授業を参観している中でアドリブ力が必要な理由を感じる時は、子どもの反応への返しです。教育実習生の授業でも、「あの場面で、どう返したらいいだろう」とよく協議していました。
学習指導案の「予想される子どもの反応」を書いても、「反応に対する反応」つまり「返し」を考えているという人は少ないのではないでしょうか。
芸人さんのアドリブ力を分析
芸人さんが複数出演されている番組を見ていると、話し始めからオチまでの流れを何手も先まで読んでいて、それが共有されているということがわかります。
最後にこの人のリアクションや話でオチをつける。そのために、司会者からのフリがあり、数名でパスを回し、時には裏回しをして、オチまで導いています。この様子はサッカーに例えられたりします。
そのためには、「どのような能力を持っているかをお互いに把握」し、「最も輝けるポジションはどこかをわかって」いて、「それをお互いを信頼しあう」必要があります。
また、番組によってはアドリブのように見えてアドリブでない。
すべて計算されていたり、放送作家さんが作る台本に流れが示されていたり、事前の打ち合わせやリハーサルがあったり、他のライブやイベントなどで実践を重ねていたりします。
教員のアドリブ力に必要なものとは?
授業に置き換えて考えます。
「フリである発問」や「授業のまとめであるオチ」は教員が担当するとして、生徒がどのような能力を持っているかを把握し、ポジションを活かし、互いを信頼しあうが大切です。
そして、授業は台本もリハーサルもない一発勝負です。丁寧に予想をしたり、予想の精度をあげたりして、一発勝負に備えなければなりません。
YouTubeチャンネル「ナイツ塙の自由時間」の『若手芸人へ!「アドリブ」で笑いを取ろうとするな!【笑辞苑】』でナイツ塙さんと銀シャリ橋本さんがアドリブについて対談しています。
この中で漫才中にアドリブをしていい芸人の条件として「1000舞台を超えた芸人はアドリブしてもいい」とおっしゃっています。
教員も1000時間がアドリブができる条件だとすると…中学校音楽科なら、3学年・各学年4クラス計12クラスで年間460時間。そう考えると、アドリブができるのは3年目からということでしょう。妥当な数字と言えます。
それくらい、アドリブは腕や経験が必要ということです。
【理論】教員がアドリブ力を身につける方法
授業なら子ども・芸人さんならお客さんや他の出演者に対する「返し」は、どのように学んで力をつけていけばいいでしょうか。
芸人さんのアドリブは実際のところ…
芸人さんの場合。
台本があったとしても、細かな一言ひとことは芸人さん自身が考えていることもあります。話の筋は一字一句書いてあっても、返しは台本に「(リアクション)」と書いてあるだけだったり、放送作家さんが考えたセリフが一例としてあるだけだったりします。
また、話す場の特性によっても自由度が異なります。
生放送の情報番組や緻密に計算されたバラエティ番組のように流れが細かく決められているものもあれば、対談形式のラジオやYouTubeのようにおおまかにしか決められていなくて話ができるもの、賞レースのネタのように一字一句・語尾やコンマ何秒の間まで計算されているものもあります。
授業の返しは一発勝負ですので、事前に考えておくのは困難です。あらかじめパターンを知っておくのは良いです。ここでは理論から学ぶ方法と、耳から慣れる方法を紹介します。
アドリブ力を鍛える方法を紹介
まずは理論です。
「「褒められたとき」に何と返す?コミュ力の高い、好かれる人の答え」というダイヤモンドオンラインの記事では芝山大補(しばやまだいすけ)さんが「ほめられた時の返し」として、謙遜ボケ、もう一度言わせるといった手法を書いています。
「職場の雰囲気を明るく! 笑いを誘う「返し」の言葉」NIKKEI STYLEキャリアの中で中北朋宏(なかきたともひろ)さんは「けなされた時の返し」として、くり返し、例え返し、ノリ返しといった手法を紹介しています。
お笑いの手法を解説した書籍も色々出ています。芸人を目指す人はもちろん、話し方やコミュニケーションを学びたい社会人にも有益な情報です。教員も人が相手の職業ですので、芸人さんのスキルを理論的に学びたい人にはよいでしょう。
次に耳から慣れる方法はラジオやトーク番組を聞くことです。
私は高校生のころからお笑いが好きで、爆笑問題さんのラジオ・トーク番組・ネタ番組を撮って何度も何度も覚えるくらい聞いていました。
聞いていればできるようになる、という単純なものではありませんが、笑いの要素を学べる方法の1つとして、ラジオ・番組・落語を聞くのはよいと思います。
【実践】やる気のない子供へのアドリブでの対応法
授業の流れに反する態度の生徒・やる気がない発言をする生徒への返し
現在進行形(be動詞+ing)を学んでいる時
おなかすいた~
You are ハラヘリングだね
単純な書き写しを指示してすぐ
何するかわからない~
えっ!?「眠い」か「お腹すいた」か「帰りたい」の3択だと思ったのに、まさかの4つ目が出た!
特活や行事など
やる意味がわからない~
わからない意味がわからない
どれも授業の流れに反している態度・やる気がない発言です。
子どもは「こう言うと教員が困るかな」とか「教員はどんな反応をするだろう」と思っています。本心でないかもしれません。また、発達段階やそれまでに構築されている関係性なども関係します。
怒るとか声を荒げる感じではなく、子どもと同じテンションやぼそっと小さい声で返すのが良いと思います。
子どもは、予想外の反応が来るとニヤっとしたり、驚いた表情を見せたり、強い言葉をかぶせるのをやめたりします。話の腰を折って興味の対象をそらすということです。
生徒の突飛な発言・言葉に反応するのは、もはや大喜利です。
『笑点』『IPPONグランプリ』以前に放送されていた『着信御礼! ケータイ大喜利』はもちろん、YouTubeやTwitterなどでも大喜利があります。大喜利も理論で、回答をグループ化すると「あるある」や「コトバ遊び」「裏切り」などいくつかのパターンになります。大喜利を勉強するのもアドリブを鍛える力になるかもしれません。
授業を参観する中で「ん?言われた先生はどう返すかな?」という場面で、実際に返した言葉を記録したり、自分ならどう返すかを積み重ねてみましょう。
まとめ:お笑い芸人から学ぶ教員のアドリブ力の鍛え方
今日は「アドリブ」について話しました。
あまりうまく言語化できませんでしたが、芸人さんたちの「返し」を学ぶことは授業につながると思っていただければうれしいです。
ナイツ塙さんがおっしゃっているように、アドリブはそう簡単にできるものでも、して良いものでもありません。ピアノでも芸事でも同じで、決められた型を何度もくりかえして無意識に落とし込むくらいまで体得して初めて、自分らしい表現や自由な表現が出てきます。
始めからアドリブをしようとせずに、できるようになったり、したいと思えるようになったりするまで待って、力を徐々につけていきましょう。
記事の内容は動画と同じです。
動画「お笑い芸人から学ぶ教員のアドリブ力の鍛え方」も是非ご覧ください。
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