卒業式や3年生・6年生を送る会などの卒業に関わる行事のBGMを任されて、何を基準に選べばよいか迷っていませんか。
この記事では、卒業学年と担任の先生の思いを生かす選曲の考え方、入場・退場など場面に合わせた子どもの希望の聞き方、カノンやG線上のアリアが卒業式の定番になっている理由を、音楽の要素の言葉で解説します。あわせて、市販のCDを流す・コピーする、式の映像を記念DVDにする、YouTubeやサブスクの音源を使うといった場面の著作権の考え方も整理しました。放送担当の先生、音楽科の先生のお役に立てればうれしいです。
卒業式のBGM選びで最も大切なのは、主役である卒業学年の意向と担任の先生の思い入れを最初に聞くことです。そのうえで、定番曲・トレンド曲・子どもの希望から候補を集め、「音楽を形づくっている要素」の言葉で選曲の理由を説明できるようにすると迷わず選べます。学校で購入したCDを入場料などのない式で流したり、BGM用に必要な範囲でコピーしたりすることは一般に許諾は不要と考えられますが、式の映像を記念DVDやホームページに使う場合は許諾が必要です。
卒業式のBGMは誰の思いを優先して選ぶ?
結論から言うと、最優先は卒業学年の意向です。そして、それと同じくらい大切なのが担任の先生の思い入れです。BGM選びは「どの曲が良いか」より先に「誰のための音楽か」を決めるところから始めましょう。
▶ 動画では1:38〜で詳しく解説しています
最優先は卒業学年の意向
小学校なら6年生、中学校なら3年生。主役である卒業学年の意向を、まず組み入れることが重要です。
- 学年の思い出の曲:3年間、あるいは6年間のなかで、みんなで歌った曲、合奏した曲、運動会で踊った曲などがあるはずです。学年の思い出に関連づけて、どの曲をいつ、どのタイミングで流すかを考えてみましょう。
- 学年のテーマソング:学年によっては「この学年のテーマソングはこれ」と決めている場合もあるかもしれません。
担任の先生の思い入れも聞く
学年の意向と同じくらい重要なのが、担任の先生の思い入れです。
- クラスの思い出の曲やテーマソング:学年とは別に、クラス単位の思い出の曲があるかもしれません。
- 先生が伝えたい曲:クラスで歌ったり演奏したりしたことがなくても、「この歌詞を伝えたい」「この曲が好きなんだよな」と先生が話していた曲や、好きな歌手の曲も候補になります。
学級を持つ担任の先生方がどんな曲を流したいと考えているのか。ぜひ事前に聞いてみてください。
「何でも良い」と言われたら?定番・トレンド・子どもの希望から選ぶ
学年の先生や管理職の先生から、「BGMは何でも良いよ」「案を出してほしい」と言われることもあるでしょう。そんなときは、定番・トレンド・子どもの希望の3つの視点で候補を集めると選びやすくなります。
▶ 動画では3:14〜で詳しく解説しています
定番の卒業ソングの探し方
卒業ソングと聞いてパッと思い浮かぶ曲は何でしょうか。世代によって違う曲もあれば、世代を超えて愛される曲もありますね。定番曲を探すには次の方法が役立ちます。
- 「教育音楽」のアンケートを参考にする:音楽之友社が発行する音楽科教員向けの雑誌「教育音楽」(小学版/中学・高校版)では、時期になると卒業で歌う曲・演奏する曲のアンケート結果が発表されます。
- GoogleやSNSで検索する:Googleで「卒業式 定番曲」と調べたり、SNSで「#定番卒業ソング」などの言葉で調べたりすると、たくさんの候補が見つかります。
- オムニバスCDの収録曲を確認する:卒業式向けに編集されたCDのラインナップを確認するのも、定番曲を探すうえでとても有効です。
具体的な曲名を知りたい場合は、「小学校の卒業式で人気の曲ランキング2026|先生が選ぶベスト5」もあわせてご覧ください。

トレンド曲の探し方
その年ならではのトレンド曲を知りたい場合も、「教育音楽」のアンケートが参考になります。検索するときに「#令和」「#トレンド」といった言葉を加えると、今の曲が見つかりやすくなります。
そして、いちばん良いのは子どもに聞くことです。
入場曲・退場曲は「場面」を示して子どもに聞く
子どもの希望を聞くときは、まず送る側に聞いてみましょう。中学校なら、3年生を送る1・2年生に「3年生に聞かせたい曲」を聞きます。もちろん、送られる側の3年生に「どんな曲を聞きながら卒業したいか」を選ばせるのも良い方法です。
ポイントは、次の2つです。
- 対象と場面を具体的に示す:「どんな曲を流したいですか?」と漠然と聞くと、ただの好きな曲の人気投票になってしまいます。「卒業生が会場に入ってくるとき」「退場するとき」「花道をつくって卒業生を送るとき」など、誰のために、どの場面で流すのかを示してから聞きましょう。
- 選曲の理由を添えさせる:なぜその曲を選んだのか理由を説明させます。その際、次に紹介する「音楽を形づくっている要素」の言葉を使うように伝えると、選曲が授業での学びとつながります。
▶ 動画では5:23〜で詳しく解説しています

なぜカノンやG線上のアリアは卒業式の定番?「音楽を形づくっている要素」で説明する
カノンやG線上のアリアがなぜ卒業式にふさわしいのか説明できるでしょうか。「なんとなく卒業に合っている」「雰囲気が良い」「毎年そうだから」。いろいろな理由があると思います。しかし、選曲の根拠を示すなら、「音楽を形づくっている要素」の言葉を使うのがいちばんです。
▶ 動画では6:35〜で詳しく解説しています
「音楽を形づくっている要素」とは
「音楽を形づくっている要素」とは、学習指導要領に示されている音楽の特徴を捉えるための言葉です。子どもたちは音楽の授業でこの言葉を日常的に使っているので知っているはずです。選曲を担当する放送担当の先生にもぜひ知っていただきたい言葉です。
| 要素の言葉 | 具体的な例 |
|---|---|
| 音色 | 声、楽器など |
| リズム | 拍の刻み方、リズムのパターンなど |
| 速度 | 初めに設定された速度、その変化など |
| 旋律 | 旋律の流れ、なめらかさなど |
| テクスチュア | 音の重なり、組み合わせなど |
| 強弱 | 強弱の変化など |
| 構成 | 反復、変化など |
カノンを要素の言葉で説明すると
たとえば、卒業式の定番曲であるパッヘルベルの「カノン」を、要素の言葉で説明すると次のようになります。
弦楽器の音色がとても美しく、複数の弦楽器の旋律が重なり合っています(テクスチュア)。また、ゆったりとした速度の設定が、厳かな卒業式に合っています。同じようなコードの繰り返し(反復)があるのも特徴です。
このように説明すると、「なんとなく」が、根拠をもった選曲理由に変わります。要素の言葉は選曲するときのヒントにも根拠にもなるのです。
▶ 動画では7:11〜で詳しく解説しています
G線上のアリアは?
バッハの「G線上のアリア」も要素の言葉で説明してみましょう。
一定に保たれたゆったりとした「速度」と、規則正しく刻まれるベースの「リズム」が、式典の厳粛な空気や、入退場時の歩調に自然と調和します。
その上に、なめらかな「旋律」が乗ることで落ち着いた空間が生まれます。複数のパートが緻密に絡み合う「テクスチュア」と、弦楽器の「音色」は、その場にふさわしい重厚感を与えます。
劇的な「強弱」の変化で過度に感情をあおるのではなく、安定した「構成」で進むため、主役である卒業生や式辞の言葉を邪魔しません。式の品格を高める背景として、非常に理にかなっているのです。
定番曲が定番であるのには、音楽の言葉で説明できる理由があるのです。

卒業式のBGMと著作権|許諾がいらない場合・必要な場合
結論から言うと、学校で購入したCDを入場料などのない卒業式で流したり、BGM用に必要な範囲でコピーしたりすることは、一般に許諾は不要と考えられます。一方で、曲が流れている式の映像を記念DVDにしたり、ホームページに載せたりする場合は許諾が必要です。考えるときに大切なのは、「どの音源か」「誰がどの場面で流すか」「映像や音声を形に残すか」の3点です。
▶ 動画では9:06〜で詳しく解説しています
| 場面 | 許諾 | ポイント |
|---|---|---|
| 市販のCDを入退場のBGMとして流す | 一般に不要 | 入場料・出演料のない学校行事であること |
| BGM用に市販のCDをコピーする | 一般に不要 | 卒業式は授業に含まれる。必要な範囲であること |
| BGM用のコピーを記念DVDなど別の目的に使う | 必要 | 授業以外の目的になる |
| 曲が流れている式の映像を記念DVDにする | 必要 | 市販CDの音源なら、レコード会社などの許諾も必要。1枚だけでも同じ |
| 曲が流れている式の映像をホームページに載せる | 必要 | 授業の範囲を超え、誰でも見られる状態になる |
市販のCDを流す・コピーするのは許諾不要と考えられます
CDを式場で流すことは、法律上は「演奏」にあたります。すでに公表されている曲を、入場料を取らず、出演者に報酬を払わずに、営利を目的としない学校行事で流す場合は、許諾は不要と考えられます(著作権法第38条)。
また、卒業式などの学校行事は「授業」に含まれます。そのため、教員や子どもがBGMとして使うために学校で購入したCDを必要な範囲でコピーすることも、一定の条件のもとで許諾なく行えると考えられます(著作権法第35条)。ただし、このコピーを記念DVDなど授業以外の目的に使う場合は、改めて許諾が必要になります。
▶ 動画では10:30〜で詳しく解説しています
記念DVDやホームページに使うなら許諾が必要です
曲が流れている式を録画・録音して記念DVDにする場合や、その動画を学校のホームページに載せる場合は、許諾が必要です。DVDは教員と子どもだけで使うものではなくなり、ホームページは誰でも見られる状態になります。どちらも授業で使っているとは考えられないためです。
ここで見落としやすいのが市販CDの音源です。BGMに市販CDの音源が入っている場合は、作詞者・作曲者などの著作権者に加えて、レコード会社などの許諾も必要です。DVDを1枚だけ作る場合も同じです。カノンのように曲の著作権が切れていても、CDの音源にはレコード会社などの権利が残っていることが多いので注意しましょう。
では、どうすれば安心して形に残せるのでしょうか。子どもたちや先生の演奏を録音したものをBGMにする場合は、著作権者の許諾で足ります。曲を使った卒業ムービーやスライドショーをDVDにして配る場合も、記念DVDと同じく許諾が必要と考えられます。使う曲の長さや曲数、配布する枚数などによって使用料が変わりますので、早めに確認しましょう。
▶ 動画では10:55〜で詳しく解説しています
なお、式次第への歌詞の掲載やオンライン配信など、卒業式の著作権は学校著作権の解説サイトで担当別に詳しく解説しています。


YouTubeやサブスクの音源は使える?
最近よく質問を受けるのが音源の手に入れ方です。
- YouTubeからのダウンロード:YouTubeの動画や音源を外部ツールなどで保存することは、YouTubeの利用規約で禁止されています。また、違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードすることは、著作権法上も違法です。行事の音源は、学校で購入したCDなどを使いましょう。
- サブスクリプションサービス(YouTube Music、Spotify、Apple Musicなど):多くの場合、教員が自分の名前とアカウントで登録し、個人で楽しむための料金を払っています。使える範囲はサービスごとの利用規約で決まっていて、サービスによって異なります。著作権法とは別に、サービスとの契約の範囲を守る必要があるためです。「個人での利用に限る」と書かれている場合は、学校では使えない可能性がありますので必ずご自身が契約しているサービスの利用規約を確認しましょう。
▶ 動画では11:46〜で詳しく解説しています
2026年の法改正(レコード演奏・伝達権)について
2026年に、店舗などでCDや配信音源を流したときに歌手やレコード会社が使用料を受け取れる「レコード演奏・伝達権」を設ける改正著作権法が成立しました(施行日は未定)。非営利・無料の利用は対象外とする仕組みと説明されているため、学校行事の扱いは大きくは変わらないと考えられます。最新情報は文化庁のウェブサイトでご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 卒業式のBGMを子どもに選ばせたいときにどのように聞けばいいですか?
A. 「卒業生が入場するとき」など、対象と場面を具体的に示してから聞きましょう。選んだ理由を「音楽を形づくっている要素」の言葉で説明させると、人気投票で終わらず授業での学びともつながります。
Q. 学校で買ったCDを卒業式で流したいときはどうすればいいですか?
A. 入場料や出演料のない卒業式であれば、一般に許諾は不要と考えられます。BGM用に必要な範囲でコピーすることも同様です。ただし、そのコピーを記念DVDなど別の目的に使う場合は、改めて許諾が必要です。
Q. 卒業式の映像を記念DVDにしたいときはどうすればいいですか?
A. 曲が流れている映像を記念DVDにする場合は許諾が必要です。市販CDの音源が入っていれば、レコード会社などの許諾も必要になります。子どもたちや先生の演奏を録音したものをBGMにすると、著作権者の許諾で足ります。
Q. サブスクで聞いている曲を卒業式で流したいときはどうすればいいですか?
A. まず、ご自身が契約しているサービスの利用規約を確認しましょう。「個人での利用に限る」とある場合は、学校では使えない可能性があります。迷うときは、学校で購入したCDを使うのが安心です。
まとめ
卒業式は、卒業生はもちろん、学校全体にとっての晴れの舞台です。音楽は、その舞台を盛り上げたり、しんみりとした雰囲気をつくったりと、演出を支える大切な役割を担います。
重要なのは、卒業学年と担任の先生の思いを聞き、要素の言葉で選曲の理由を説明できるようにすること。そして、音源の扱い方を原則に則って確認することです。正しく選んで正しく使う。その積み重ねが、子どもたちの心に残る卒業式につながるのです。
この記事は、動画「卒業式のBGM、何を基準に選ぶ?カノンが定番の理由と著作権の注意点」をもとに作成しています。







コメント