皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。
現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
このYouTubeチャンネルでは学び続ける先生と学生さんのために、学校で役立つ情報と提案を発信しています。
今日は「ショパンコンクールって何がすごいの?」をピアノ未経験者に向けてお話しします。
毎年話題になる「ショパンコンクール」。ポーランドの作曲家フレデリック・ショパンの作品を演奏するピアノのコンクールで、正式名称を「フレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクール」と言います。一般のニュースでも「誰が何位だった」「日本人は…」と取り上げられます。
ショパンコンクールの動画は公式な演奏動画はもちろんのこと、曲やコンクール・演奏者の解説動画はあります。
今回はピアノを全く弾いたこと聴いたことがない人が理解できる方法を私なりに考えました。中学生に向けて授業をしてきた経験を活かしてお話しします。
この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。
▶「ピアノに憧れがある」という方
▶「ショパンコンクールのすごさがいまいちわからない」という方
▶「クラシックは一部の人が聴くものでしょ」という方
この動画の他には
教科書のクラシック音楽定番曲《交響曲第5番ハ短調》ベートーヴェン作曲を、現在の学習指導要領に即してCSR(企業の社会的責任)を学ぶことに結び付けて「なぜ今、ベートーヴェンを聴くのか?」に明確に答える実践について話した動画
人気の習い事ピアノについて、習う目的や目標とする曲、学業との両立や辞め時について話した動画もあります。
運動能力としてすごい
運動としてのすごさをこの動画を見ながら、実感してください。
指の運動⑴独立
①右の手のひらを、机やももの上につけてください。
②指先はつけたまま、手首だけ5㎝くらい上にあげてください。
③親指を上げて、おろす。人差し指を上げて、おろす。中指、薬指、小指も同じようにします。
④親指をつけたまま、同じように他の指を上げ下げします。人差し指をつけたまま、同じように他の指を上げ下げします。中指、薬指、小指も同じようにします。
⑤次はショパンコンクールに入賞した反田さんが『情熱大陸』のYouTubeチャンネルの中でしていた指の練習。親指・中指・小指をつけたまま、人差し指と薬指を上げ下げします。(反田さんは両手で線対称になるようにして、ゆっくり練習していました。)
他にも2本・3本つけたままで他の指を動かしたり、下ろし方をすべての指を同じ強さにしたり、1本だけ強くしたり。早くしたり遅くしたり。右手でできたら、左手でも同じようにしたり、同時にしたり…
すべての指を、どのような状況であっても、同じようにコントロールする運動能力が必要なのです。
指の運動⑵速さと記憶
親指を1・人差し指を2・中指3・薬指4・小指5の番号をつけます。
この順番に動かしてください。
351425
1秒以内で動かしてください。
倍に増やします。
351425251314
1秒以内で動かしてください。
これはショパン『黒鍵』という曲の1小節目で、全部で85小節のうちほとんどがこの指の速さで動きます。今覚えた12の動きの80倍くらい、指の動きを覚えるということです。
当然、左手は違うことをしていますので、左手の指と音も覚えます。
指が早く動くのはもちろんですが、指の動きを記憶する能力も必要です。
腕の運動
①右手を体の正面に置きます。
②30㎝くらい右に移動して、親指を置いて印をつけます。
③①と②の位置を何度も往復します。
だんだん早くしても、右手を見なくても②の位置を正確に置くことができますか?
左手ではどうですか?
同時に両手ではどうですか?
倍の距離に印をつけたらどうですか?
誤差が許されるのは約1㎝、黒鍵の幅です。1㎝以上ずれると、ちがう音が出てしまいます。指の幅も1㎝ありますので、ほとんどズレは許されません。特にショパンの曲は左手が離れた位置を、ものすごい速さで往復します。往復の距離は毎回違う上、複数の音を押します。
さらに指や腕とは別に足もペダルを踏む/放すの運動を繰り返しています。タイミングは指とは違い、0コンマ1秒の誤差で音が濁ってしまいます。
ほんの一部ですが、このように運動能力がいかに優れているかをおわかりいただけたと思います。
暗記力がすごい
演奏をする時に必要な物は楽譜。ショパンコンクールの映像を見るとピアニストは楽譜を見ていません。すべて覚えています。
指の動き、腕の動き、音を覚える。しかも、1曲ではありません。
ショパンコンクールの反田恭平さんは
1次予選で4曲約25分
2次予選で4曲約35分
3次予選で6曲約49分
本選で1曲約43分
計3時間ほどの曲を記憶しているということです。
もっとたくさんの曲、ショパンの他の曲も、他の作曲家も含めると途方もない数の曲が反田さんの頭や体に記憶されているということです。
先ほどの12ケタの指番号、覚えていますか?あれは1秒です。
これはピアノを弾いている人ならば当たり前のことです。幼いころから発表会や入試、コンクールは暗記するのが当たり前なのです。
年齢がすごい
これまで紹介してきた能力ですが、ショパンコンクールに出るようなピアニストは指や腕の運動だけで見ると「ようやくこの年齢になって、正しく動かせるようになった!!」というわけでは全くありません。
動きだけで言えば、小学生のころから弾けます。
ですので、「指が早く、正確に動くからすごい。それを覚えているからすごい」というモノサシではありません。ショパンコンクールで弾かれた曲の中には音楽高校入試の課題曲にもあるくらいですので、中学生で「ピアノがうまい」と言われ、合唱コンクールで伴奏を弾く人の中には弾ける人もいるでしょう。
では中学生でも運動能力的には弾ける曲をどうやって世界の舞台で比べるのでしょうか?
そこには指の速さという運動能力的な単純なものではなく、表現力や構成力、独創性、理解力などが審査されるのです。
運動能力を早くから才能や努力によって習得した上で、さらに高い音楽を求めて努力して、音楽で戦う場に出られることがすごいのです。
まとめ:【ショパンコンクールは何がすごい?】音楽教員がピアノ未経験者にわかりやすく解説
今日はショパンコンクールのすごさについて、ピアノになじみがない人にわかりやすく伝えたつもりです。
ショパンコンクールの演奏は全部・全員すばらしいです。それぞれの人の評価をコメントや記事などで見ると、人によって評価は様々ですし、ピアノをある程度は弾いてきた私でも評価を見ても演奏を聴いても、正直わかるところとわからないところがあります。
ともあれショパンコンクールが一般的なニュースとして報道されるのは、ピアノやピアニストに対する関心が高まることにつながるのでうれしいことです。
ショパンが作曲家として活躍した1840年は私が大好きな『勧進帳』が初演された年です。
ショパンコンクールでの日本人の入賞のニュースを見るたびに、日本の文楽や歌舞伎を外国人が演じて上位入賞するということだと、もちろん一概にはイコールとは言えませんが、それでもそういうことかと考えるとおもしろいなと思います。
この記事の内容は動画と同じです。
動画「【ショパンコンクールは何がすごい?】音楽教員がピアノ未経験者にわかりやすく解説」も是非ご覧ください。
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