皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。
現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
このYouTubeチャンネルでは学び続ける先生と学生さんのために、学校で役立つ情報と提案を発信しています。
受験がある中学校に通学してもいましたし、教員として勤めてもいました。
受験と音楽の間にある問題が「ピアノをいつまで続けるか問題」です。
音楽科教員であれば、子どもや親御さんから相談をされることもあるかもしれません。
実際に子どもから「ピアノを続けたいけど、成績が落ちたらもしくは受験が近づいたら止めなきゃいけない」と聞いたこともあります。
私の場合は音楽科の高校に進みましたので、ピアノを続けることは必須であり、やめる選択肢はありませんでした。往復3時間の通学時間の中でよく続いたと思います。
しかし、音楽の進路でもないのにピアノを続けることに疑問や不安をもつ子どもや親御さんは多いようです。
音楽の習い事で人気があるのはピアノです。
最近では東大生の幼少期の習い事として「水泳」に次いで「ピアノ」が上位にあがったことで注目が集まったり、色々な観点から分析が進んだりしています。
今回は代表的な例として「ピアノ」としますが、他の習い事に置き換えても共通する話題もありますので、自分の習い事に置き換えてみてください。
この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。
▶ピアノはいつまで続けるのか?、続けさせるのか?に悩んでいる方
▶ピアノを辞めたくない・両立したいという方
▶そういえば何のためにピアノを習わせるの?と疑問を持った方
他の動画には、
1文字違いが大違い。音楽家は歌唱者・指揮者・伴奏者の能力。音楽科はプラス2つの能力が必要
お金を払うのかもらうのか。音楽で戦うのか戦わないのか。
ピアノ「を」学ぶ/ピアノ「で」学ぶ は大違い
ピアノを習う時に気をつけたいことは「ピアノ“を”学ぶ」のか「ピアノ“で”学ぶ」のかです。
「ピアノを学ぶ」とは?
「ピアノ“を”学ぶ」場合は、ゴールが明確で、そこに向かう道筋も明確です。
例えば、音楽大学を目指す場合は必然的に教材が西洋音楽・クラシックになります。
ハノンやツェルニー、ブルグミュラーのエチュード、モーツァルトやベートーヴェンのソナチネ・ソナタ、バッハやショパン、ドビュッシー、リスト…と音大の課題曲や必要なレベルに向かう道筋が決まっています。
大学やピアノコンクールを目指さなくても、ジャズを弾けるようになりたい、ディズニーやジブリ、ポップスを弾けるようになりたい。また、校内合唱コンクールの伴奏を弾く1曲だけ弾けるようになりたい、などゴールは明確です。
また、ペースもある程度決まってきます。目標のゴールから逆算して、どれくらいの年齢でどれくらいの技術や経験を身につけていなければならないということが決まってきます。
「ピアノで学ぶ」とは?
「ピアノ“で”学ぶ」は、過程を重要視する場合です。
ピアノを習う事によって身につける副次的なもの、例えば、
「できなかったことを、努力してできるようになる経験」
「ピアノの発表会によって、緊張感を味わったりそれに打ち勝ったりする経験」
「ピアノの先生に対して敬意を払ったり、おじぎや言葉づかいなど礼節を学んだりする経験」
「連弾やアンサンブルをすることで、人と呼吸を合わせたり意思の疎通をしたりする経験」
「自分の思いや気持ちを、言葉でなく音楽で現すという表現を学ぶ経験」
こういったこと経験を積むためには、何も音楽大学やピアノコンクールを目指すクラシックピアノでなくても学ぶことができます。
やめ時や他との両立を悩む人は「ピアノ“を”」なのか「ピアノ“で”」なのかを考えてみてください。
音楽の教員を目指すならば、当然前者です。ピアノの演奏家を目指す課題曲まではとは言いませんが、教育学部の音楽の実技試験にも低くないレベルがあります。
ピアノのやめどき(レベルとタイミングの決め方)
ピアノを続けるかどうかの線引きは、小中高校の受験や卒業をキリにする方が多いです。
子どもの話を聞くと「中学受験をするために小学校5年でやめた」「高校受験のために中学校3年生の1学期でやめた」と言うのが男女関わらず多かったです。
ちょうどよいキリとして、このような年齢や環境もそうですがピアノのレベルで判断してもいいと思います。
私は音楽科教員として、4月に入学してきた中学1年生に毎年アンケ―トを実施していました。様々な質問がある中で「ピアノのレベル」についても聞いていました。その回答で合唱伴奏ができるかどうかを判断していたのです。
判断基準は「何才から何年生まで」とか「何年間」ではありません。「何が弾けるか」です。
成長の幅は音楽も同じく人それぞれです。
ピアノが好きで練習を自分から進んでする子どももいれば、先生が厳しくて怒られたくないからする子ども、親が練習時間を管理する子どもなど様々です。
また、時間に比例して技術が上がるかと言うと、ある程度は関係がありますが、習得が早い子どももいれば、なかなか上達しない子どももいます。ですので、「時間」は弾けるかどうかの目安にしていませんでした。
「エリーゼのために」が弾けるレベルは基準となる
「何が弾けるか?」は、中学1年生が歌う合唱曲でしたら『エリーゼのために』を弾けるかどうかを1つのキリとしていました。
左手のオクターブの感覚と単音の連打があること・ペダルを濁らずに踏めること・転調ができること・ロンド形式の理解など一定程度の技術が必要です。
ただこれも、『エリーゼのために』を楽譜通り指を動かすだけの子どもと表現豊かに弾く子どもでは差がありますので、曲でキリを決めるのは難しさもあります。
ショパンの『革命』が弾けます。と言っても、『革命』だけ楽譜通り指が動かせるだけかもしれません。
判断は難しいですが『エリーゼのために』は1つのキリだと思います。
このレベルであれば、ブランクがあっても再開のハードルは高くはないですし、学校で合唱の伴奏者になってもある程度は練習で補えます。
このように年齢ではなく、「この曲が終わるまで」「この本が終わるまで」というキリを設けてもいいと思います。
ピアノと塾・学業を両立するなら?
ピアノの先生に状況を伝えることが大切だと思います。
例えば「塾を始めるので…」と伝えた時に、先生のリアクションは様々になるでしょう。
「それは困る」「両立できるペースにしましょう」「ピアノは息抜きでいいですよ」など、善し悪しや正しい間違いではなくピアノの先生のポリシーや考え方なので、どれも正解です。
「塾」とひとくちに言っても、学校の勉強を補うための塾なのか、進学校を目指す塾なのか、予習復習宿題が多い塾なのかなど色々です。
また、子どもにとっても「ピアノが好きで少しでもいいから続けたい」という気持ちの子どもと、「ピアノが嫌でようやくやめる口実ができた」という気持ちの子どもでは大違いです。
もし両立をしたいなら、ピアノの先生とピアノを習う子ども、習わせる親御さんのニーズに合った「両立」ができるかどうかを見極めましょう。経験の多い先生なら、これまで塾と並行してきた他の子どもの例を知っているかもしれませんね。
もちろん音楽高校・音楽大学を目指すなら、学校や国語英語などの勉強と、音楽の勉強であるピアノ・ソルフェージュ・楽典などの両立は必須です。
このサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「受験・学業とピアノの習い事は両立できるか(やめどきを判断する曲とは?)」も是非ご覧ください。
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