「学校の先生」と聞くと、多くの人は学級担任や教科担任の先生を思い浮かべるかもしれません。しかし、学校という場所は、それ以外にも非常に多くの専門的な知識を持った人々の力によって支えられています。
特に、これから教壇に立つ教育実習生の皆さんにとっては、短い実習期間の中では、担任以外の先生方の仕事の重要性になかなか気づけないこともあるでしょう。
この記事では、元教員の私の視点から、子どもたちの心と体を支える専門職の方々の知られざる役割を解説します。
この記事を読めば、あなたが担任になったとき、「自分は一人ではない」と実感できるはずです。学校を支える様々な人々の存在を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
この動画の他には、
「学校を支える人々」シリーズをこれからアップしていきたいと思います。
また具体的な役割として、
楽器屋さんの話:【学校を支える人】音楽教員のための楽器屋との付き合い方
調律師さんの話:【学校を支える人】音楽教員のための調律師との付き合い方
も紹介していますので、こちらの動画もあわせてご覧ください。
学校に不可欠な存在「養護教諭(保健室の先生)」の多岐にわたる仕事
子どもたちにとって最も身近な存在の一人が、「保健室の先生」こと養護教諭です。保健室に行くといつも温かく迎えてくれる養護教諭ですが、その仕事は私たちが表面的な関わりから想像する以上に多岐にわたります。
ケガや病気の対応だけではない、養護教諭の驚くべき記憶力と観察眼
ケガの手当てや体調が悪い時の対応、身体測定の補助などが養護教諭の仕事としてよく知られています。しかし、その専門性はそれだけにとどまりません。
私が特に驚いたのは、その記憶力です。何百人といる全校生徒の顔と名前をすぐに覚え、特にアレルギーや持病など配慮が必要な生徒については、その子の状況はもちろん、支えている保護者や通院先の病院のことまで深く理解しています。
また、近年ではケガや病気だけでなく、子どもたちの心配事や困りごとに関する相談に乗るのも、養護教諭の重要な役割となっています。
検診や行事の縁の下の力持ちとしての役割
養護教諭は、身体測定や歯科検診、内科検診といった各種検診のスケジュール管理も担います。どのように教員や器具を配置し、委員の生徒を動かすか、さらには外部の学校医と連携して日程を調整するなど、その計画力はまさに専門的です。
身体測定も、ただ数値を測って終わりではありません。体重の著しい増減など、顕著な変化が見られた場合には、学級担任や家庭と連携を取ります。内科検診では、補助をしながらも生徒の体に傷がないか、痩せすぎていないかといった細やかなチェックも行っています。
宿泊行事の頼れるパートナーとしての一面
養護教諭のもう一つの特徴は、宿泊行事に必ず帯同することです。例えば山登りのような行事では、毎年全学年についていくため、山の情報に非常に詳しい先生もいます。また、修学旅行にも帯同するため、京都や奈良の情報に詳しい養護教諭の先生もいました。
このように、養護教諭は子どもたちの心と体の両面から学校生活を支える、なくてはならない存在なのです。
健診だけじゃない?心と体の「見えないSOS」を支える専門家たち
学校には、養護教諭以外にも子どもたちの心身の健康を支える専門家が関わっています。それが学校医とスクールカウンセラーです。
年に一度だけじゃない?「学校医」の日常的な関わり
学校医は、内科検診や歯科検診などの際に学校へ来て、生徒たちの検診を行う医師のことです。年に一度程度の関わりのように思えますが、たくさんの生徒を一度に、しかも正確に診察するのは、通常業務を抱える医師にとって大変なことです。私たち教員も養護教諭と協力し、スムーズな検診を心がける必要があります。
また、大きな怪我や事故、病気が発生した際には、学校医に助言を求めたり、その先生の病院で診てもらったりと、日常的にも学校に深く関わってくださっています。
子ども・保護者・教員の心をケアする「スクールカウンセラー」の役割
スクールカウンセラーは、公認心理士や臨床心理士、精神科医、大学教員といった専門的な資格を持つ人々です。各学校に配置され、週に数回勤務することが多いでしょう。
その主な役割は、学習や学校生活に馴染めない、人間関係で悩んでいる、といった子どもたちの話を聴き、分析することです。しかし、その支援の対象は子どもだけにとどまりません。
近年では、保護者からの相談(人間関係、進路、生活、学習など)に応じたり、教員自身が子どもの指導について相談したり、時には教員自身がカウンセリングを受けたりと、その役割は拡大しています。
悩みを抱える人々と外部機関をつなぐハブ機能
スクールカウンセラーは、相談内容に応じて、管理職や担任、教科担任と情報を共有するだけでなく、外部機関と連携することも重要な役割です。例えば、児童相談所や心療内科など、より専門的な支援が必要な場合に、その橋渡し役を担います。
スクールカウンセラーもまた、現代の学校にはなくてはならない大切な存在です。
子どもたちの胃袋を支える食のプロ「栄養教諭・栄養職員」
給食のある学校には、栄養教諭や学校栄養職員(栄養士さん)、そして調理師さんがいます。彼らは、子どもたち、そして教員の胃袋を支える食のプロフェッショナルです。
献立作成に求められる専門的な視点
栄養教諭の主な仕事は、給食の献立作成や必要な食材の発注、調理師とのコミュニケーションです。
献立は、ただ考えればよいというものではありません。栄養のバランスやカロリー計算はもちろん、予算との兼ね合いも考慮しなければならず、非常に専門的な力が試されます。
最近では給食も多様化しており、様々な国の料理や旬の食材、地元の食材を使った地産地消などを意識した献立が組まれています。家庭の状況によっては、給食が唯一のしっかりとした食事になる子どももいるため、学校で提供される食事は非常に重要です。
食育やアレルギー対応など、子どもと直接関わる重要な仕事
栄養教諭は、子どもたちに栄養に関する教育を行ったり、給食委員会の運営に関わったりと、直接子どもたちと関わる場面も多くあります。
また、近年特に重要視されているのが、食物アレルギーへの対応です。学級担任と密に連携しながら、個々の生徒の状況を把握し、除去すべき食品を正確に確認するなど、細心の注意を払って業務にあたっています。
まとめ:あなたは一人ではない。たくさんの仲間が学校を支えている
今回は、学校を支える人々の中から、心と体に関わる専門職として「養護教諭」「学校医」「スクールカウンセラー」「栄養教諭・栄養職員」をご紹介しました。
学級担任や教科担任は日々の教育活動の中心ですが、その活動は決して一人で成り立っているわけではないのです。今回紹介した方々をはじめ、本当にたくさんの人々が、それぞれの専門性を発揮して子どもたち、先生方、そして学校そのものを支えています。
これから教員になる皆さんも、今現場で奮闘している先生方も、ぜひこのことを心に留めておいてください。あなたの周りには、頼れる仲間がたくさんいるのです。
この記事は動画「【初任者・実習生へ】先生は一人じゃない!養護教諭・スクールカウンセラーとの連携で知る「学校のチーム力」」をもとに作成しました。
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