近年、「ワークライフバランス」や「働き方改革」といった言葉が頻繁に使われるようになりました。日本の小中学校教員の労働時間は世界一長いとも言われており、その働き方には大きな注目が集まっています。
「忙しい自慢」や「昔はこうだった」という話は一度脇に置き、自身の時間の使い方について改めて考えてみませんか?
この記事では、多くのビジネス書が提唱する時間術とは一線を画す、教員のリアルな現場に即した時間管理のヒントを、音楽教員歴10年の経験から具体的にお伝えします。
ビジネス書の時間術は教員に通用するのか?
ビジネスの世界では「時間の使い方=賃金」と直結するため、時間管理に関する書籍が数多く出版されています。しかし、その考え方が教員の仕事にそのまま当てはまるとは限りません。
一般的な4つの時間管理術
多くのビジネス書では、主に以下の4つの方法が推奨されています。
- やるべきことのリストを作る
- 頭を使うことは午前中に行う
- 余裕のあるスケジューリングをする
- やることの優先順位を付ける
では、これらの一般的な時間管理術が、多忙な教員の現場で本当に役立つのでしょうか。一つひとつ、教員の視点で具体的に掘り下げていきましょう。
分析①:やるべきことのリスト作成は教員にも有効
これは教員にとっても非常に有効な方法です。
週ごとや月ごとにやるべきことを週案やスケジュール帳に書き出し、完了したらチェックを入れたり塗りつぶしたりすることで、達成感を得ることにも繋がります。
分析②:「頭を使う作業は午前中」は教員には当てはまらない
ビジネス書では常識とされるこの方法ですが、教員の場合は事情が異なります。
午前中から授業があり、生徒も登校してきます。そのため、「頭を使う作業は午前中に」というルールは、教員の現場には当てはまりません。
教員のためのスケジュール管理術|「動かないスケジュール」を制する
教員の仕事には、「動くスケジュール」と「動かないスケジュール」の2種類が存在します。この2つを意識することが、時間管理の鍵となります。
「動く仕事」と「動かない仕事」を区別する
まず、自身の仕事を2種類に分類してみましょう。
- 動く仕事(スケジュール):
- 生徒指導
- 保護者からの電話
- 急な会議
- 急な書類作成
- 動かない仕事(スケジュール):
- 時間割で決められた授業
- 朝の学活、終学活
- 曜日が決まっている部活動
まずは、授業や部活動といった「動かないスケジュール」を先に確定させ、手帳やカレンダーに当てはめておくことが重要です。
添削や教材研究は「固定された時間」として確保する
授業でワークシートを使用した場合、その添削時間は必ず必要になります。これも「動かないスケジュール」として、あらかじめ授業の後に組み込んでおきましょう。
例えば、35人学級を4クラス担当していれば、140枚のワークシートを添削することになります。まずは試しに1枚だけ添削して時間を計ってみましょう。その時間に枚数(例えば140枚)を掛ければ、作業全体の所要時間が見積もれます。この「見える化」が、現実的なスケジュールを組む第一歩です。
評価の観点を統一するためには、まとめて添削するのが理想ですが、まとまった時間が取れない場合は、「この時間にこのクラスの分を添削する」というように、1〜2クラスずつでも構わないので、あらかじめ時間を決めておくことが大切です。
教材研究も同様です。得意な領域か、昨年度と同じ内容か、全く新しい内容かによって、教材研究にかかる時間は異なります。「空いた時間にやろう」と考えるのではなく、授業を行う前にどれくらいの研究時間が必要かを逆算し、「動かないスケジュール」として固定しておくことをお勧めします。
行事や研究授業は数ヶ月前から逆算して計画を
あらかじめ日程が決まっている行事や研究授業については、数ヶ月前からやるべきことをリストアップしましょう。そして、一つひとつのタスクにどれくらい時間がかかりそうかを逆算し、週案などのやるべきことリストに落とし込んでおくと、直前に慌てることがなくなります。
最優先事項は「生徒対応」?優先順位の考え方
教員の働く時間を大きく左右するのが、優先順位の問題です。どうしても生徒や保護者への対応が最優先となり、せっかく立てた「動かないスケジュール」が動いてしまうことがあります。
これは予測不可能なことであり、ある程度は仕方がないことです。しかし、あらかじめやるべきことを細かくスケジュールに組み込んでおけば、急な予定が入っても、他のタスクを動かすだけで調整が可能になります。
なるべく先を見通し、やるべきことを細分化してすぐにスケジュールに組み込んでしまう。この工夫が、予測不能な「動くスケジュール」に対応しやすくするための鍵となります。
参考図書の紹介:
まとめ|「時間の枠」を先に作るという発想
ここまで具体的な方法を紹介してきましたが、「とは言え、現場ではそう上手くはいかない」と感じる気持ちもよく分かります。
しかし、大切なのは心がけ一つです。
やるべきことを次々と積み重ねていくのではなく、まず「時間の枠」を先に作り、そこにやるべきことを当てはめていくという発想の転換が重要です。
今日から少しずつでも、時間の使い方を改善してみてはいかがでしょうか。
この記事は動画「【教員の働き方改革】残業ゼロの鍵は「動かないスケジュール」にあった!」をもとに作成しました。
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