学校に教員や関係者として入ると、はじめにさまざまなことを覚えたり知ったりしなければなりません。その中には、教育実習で教えきれないこと、しかしとても大事なこともあります。
この記事でわかること
・校務分掌とは何か
・学校の「理想の組織図」と「実際の組織図」の違い
・音楽科教員が実際に担当する校務分掌の具体例
校務分掌とは、学校運営に必要な業務を教職員で分担する仕組みのことです。組織図に並ぶ「〇〇部」がこの分掌の単位にあたり、部長や主任を中心に部員で仕事を分担します。
指導教員として教育実習生を指導していたなかでは、「本当は時間があればこういうことも伝えたい」と感じる場面が何度もありました。3〜4週間という教育実習の期間では主に教科教育の指導に限られてしまうため、校務分掌のような現場の仕組みまでは指導しきれないのが実情です。
▶ 動画では0:36〜で詳しく解説しています
学校の組織図とは?
企業や団体の組織図は、業種や規模によって大きく異なります。ソフトバンクグループや東京電力ホールディングス、文部科学省など、企業のサイトを検索すると組織図が公開されているケースも少なくありません。
では、学校の組織はどうなっているのでしょうか。学校によって組織のかたちは異なりますが、ここでは文部科学省の「学校の働き方改革特別部会」(平成29年)で使用された資料をもとに、学校の組織図を見ていきます。
▶ 動画では2:32〜で詳しく解説しています
理想の組織図の読み方
文部科学省の資料にある組織図(例)は、学年が6つあることから小学校の例とみられます。あくまで「例」であり、学校によって組織図は異なります。校種や地域、学校の特色によっても違いが出てきます。
この例では、校長・副校長/教頭の下に主幹教諭や主任教諭がいます。
・〇〇部=校務分掌:部の中にはさまざまな仕事があり、部員で分担します。どの部も部長や主任には重圧がかかり、人一倍の負担がともないます。
・学年主任:学年にも主任がいて、こちらも重圧と仕事量が多い役割です。学年主任は学級担任を外してもらえる場合もあれば、主任と担任を兼務する場合もあります。副担任が置かれる場合もあります。
・教科:中学校の場合は、これらに加えて教科の単位もあります。
教員以外にも、学校を支えてくださる方が数多くいらっしゃいます。
▶ 動画では3:55〜で詳しく解説しています
▼学校を支えて下さるいろいろな人についての解説




校務分掌の実例:教員一人が担う仕事の量
文部科学省の資料には続きがあり、教員であれば、先ほどのようなすっきりした組織図には到底ならないことを実感しているはずです。実際の組織図として示されているのは、中学校・各学年3学級・職員数19名の例です。
この資料ではアルファベットが1人の先生を表しています。a先生(理科担当)に注目すると、次のように複数の分掌を兼ねています。
【a先生(理科)の担当】
各種委員会:総務委員会、教務委員会
教務:教務部主任、学習指導部(少人数担当・小中連携・情報教育)、理科の教科主任、生徒指導部(教育相談)、特別活動部(学校行事)、テニス部顧問
庶務:校内会計(実習費)、管理表簿(出席簿・指導要録・卒業台帳)
渉外:PTA本部、外部協力者
事務:施設・設備(特別教室・理科室)、備品(各教科備品)
音楽科の教員は、この規模の学校ではたいてい1人です。資料内で音楽科の教科主任とされるq先生の担当は、次のとおりです。
【q先生(音楽科)の担当】
各種委員会:就学指導委員会、文化行事委員会
教務:学習指導部(特別支援教育・環境教育)、音楽科主任、生徒会(保健委員)、学校祭、合唱コンクール、美術部顧問(吹奏楽部ではない点に注意)
庶務:実習費
渉外:PTA総務部
事務:教科特別教室、各教科備品、就学援助
資料の最下段にある「各職員の担当数」では、理科のa先生・音楽科のq先生がともに11個の担当を持ち、最も多い保健体育科のj先生は20個にのぼります。
重要なのは、この一覧には学年学級の担任・副担任の分担が含まれていない点です。肌感覚としては、a先生が学年主任、q先生が担任にあたると考えられます。組織図上の「学年主任」「各担任」という担当がさらに重なり、学年・学級経営はもちろん、学年独自の行事や会計も分担することになります。
これは大げさな例ではありません。また、子どもの人数が減って教員の人数が減ったとしても、校務分掌そのものはほとんど減らないという実情があります。子どもの数が減ることで校務にかかる時間は短縮されても、校務という業務そのものがなくなるわけではないためです。
▶ 動画では4:53〜で詳しく解説しています
▼担任・副担任の仕事についての解説記事


学校の特色によって、さらに分掌は増える
ここまでの分掌に加えて、学校の特色に応じた担当が加わることもあります。
・入学に試験がある学校では、入試の担当が割り振られます
・研究に力を入れている学校では、研究会の運営や郵送物・冊子の作成などが加わります
・教育委員会や児童相談所、子ども家庭支援センター、フリースクールなど、学校外の組織との関わりも校務の一部です
この資料をもとに、文部科学省の「学校の働き方改革特別部会」では働き方の見直しが図られ、フォーラムや資料も公開されています。改善は進んでいるはずですが、校務分掌の多くは現場でしか伝えられない、いわば口伝のかたちで引き継がれているのが実情です。
▶ 動画では8:40〜で詳しく解説しています
まとめ:教員が多忙な理由は校務分掌にある
文部科学省は「学校の働き方改革特別部会」のなかで、教員の校務を次の3つに整理しました(出典:文部科学省「資料2-1 学校における働き方改革に関する緊急対策(平成29年12月26日 文部科学大臣決定)【概要】」)。
- 基本的には学校以外が担うべき業務
- 学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
- 教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
この整理を目にしたことがある先生も多いのではないでしょうか。外注できる業務や削減できる校務を選びながらすっきりとした組織図になり、直接子どもに関わる学級や教科に時間を割けるような体制になっていくことを期待しています。
(資料:文部科学省「資料2-1 学校における働き方改革に関する緊急対策(平成29年12月26日 文部科学大臣決定)【概要】」より抜粋)
よくある質問
Q. 校務分掌とは具体的に何を指しますか?
A. 学校運営に必要な業務を教職員で分担する仕組みのことです。組織図上の「〇〇部」がこの単位にあたり、各種委員会・教務・庶務・渉外・事務などに分かれます。
Q. 校務分掌は教育実習で教わりますか?
A. 基本的には教わりません。教育実習は3〜4週間と短く、主に教科教育の指導に限られるため、校務分掌のような学校運営の仕組みは現場に入ってから学ぶことになります。
Q. 音楽科の教員は校務分掌が少ないのですか?
A. そうとは言えません。記事内の例では、音楽科教員も理科教員と同様に11個の担当を持っており、教科の人数が少ないからといって分掌が軽くなるわけではないと考えられます。
Q. 校務分掌は学校によって異なりますか?
A. 異なります。校種・地域、入試の有無や研究指定の有無といった学校の特色によって、組織図や分担の内容は変わってきます。
本記事の執筆者・原口直の著書『歌いたくない生徒を歌いたくさせる 中学校音楽教師のための合唱指導』もあわせてどうぞ。
この記事は、動画「校務分掌とは?学校の組織図でわかる教員の仕事」をもとに作成しました。










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