学校に教員や関係者として入ると、はじめにさまざまなことを覚えたり知ったりしなければなりません。そのなかには、教育実習では教えきれない、けれどもとても大事なこともあります。その代表が「校務分掌」です。授業と部活動のほかに、先生方はいったい何をどれだけ抱えているのでしょうか。
この記事でわかること
- 校務分掌とは何か、どんな種類があるのか(一覧)
- 学校の「理想の組織図」と「実際の組織図」の違い
- 教員1人が担当する分掌の数と、音楽科教員の担当例
校務分掌(こうむぶんしょう)とは、学校の運営に必要な業務を教職員で分担する仕組みのことです。組織図に並ぶ「〇〇部」がその単位にあたり、部長や主任を中心に部員で仕事を分け合います。文部科学省の資料に示された中学校の例では、各種委員会・教務・庶務・渉外・事務といった区分で担当が割り振られ、1人の教員が11個の担当を持つ姿が描かれています。
指導教員として教育実習生を指導していたころは、「本当は時間があれば、こういうことも伝えたい」と感じる場面が何度もありました。3〜4週間の教育実習では主に教科教育の指導に限られてしまうため、校務分掌のような学校運営の仕組みまでは指導しきれないのです。
▶ 動画では0:36〜で詳しく解説しています
校務分掌の種類一覧|何をどう分担しているのか
校務分掌は「〇〇部」という大きな単位に分かれ、そこからさらに細かい担当へ枝分かれしていきます。文部科学省の資料にある中学校の例では、次のような区分で担当が並んでいます。
| 区分 | 担当の例(文部科学省資料の中学校の例より) |
|---|---|
| 各種委員会 | 総務委員会、教務委員会、就学指導委員会、文化行事委員会 |
| 教務 | 教務部(教務主任)、学習指導部(少人数担当・小中連携・情報教育・特別支援教育・環境教育)、生徒指導部(教育相談)、特別活動部(学校行事)、生徒会(保健委員)、学校祭、合唱コンクール、教科主任、部活動顧問 |
| 庶務 | 校内会計(実習費)、管理表簿(出席簿・指導要録・卒業台帳) |
| 渉外 | PTA本部・PTA総務部、外部協力者 |
| 事務 | 施設・設備(特別教室・理科室)、備品(各教科備品)、就学援助 |
重要なのは、この区分も名称も学校によって変わるということです。私は2つの中学校に勤めましたが、組織のかたちはそれぞれ違っていましたし、この資料の例とも違いました。校種や地域、学校の特色によって、分掌の名前も中身も変わってくるのだと思います。
▶ 動画では4:53〜で詳しく解説しています
学校の組織図で見る校務分掌の位置づけ
企業や団体の組織図は、業種や規模によって大きく異なります。ソフトバンクグループや東京電力ホールディングス、文部科学省など、サイトを検索すると組織図が公開されているケースも少なくありません。では、学校の組織はどうなっているのでしょうか。
ここでは、文部科学省の「学校の働き方改革特別部会」(平成29年)で使用された資料をもとに見ていきます。
▶ 動画では2:32〜で詳しく解説しています
理想の組織図の読み方
資料にある組織図(例)は、学年が6つあることから小学校の例とみられます。あくまで「例」であり、学校によって組織図は異なります。
- 校長・副校長/教頭 → 主幹教諭・主任教諭:組織図の上部にあたる部分です。
〇〇部=校務分掌:部のなかにはさまざまな仕事があり、部員で分担します。どの部も部長や主任には重圧がかかり、人一倍の負担がともないます。 - 学年主任:学年にも主任がいて、こちらも重圧と仕事量が多い役割です。学年主任は学級担任を外してもらえる場合もあれば、主任と担任を兼務する場合もあります。副担任が置かれる場合もあります。
- 教科:中学校の場合は、これらに加えて教科の単位もあります。
教員以外にも、学校を支えてくださる方が数多くいらっしゃいます。
▶ 動画では3:55〜で詳しく解説しています
▼学校を支えて下さるいろいろな人についての解説




校務分掌の実例|教員1人が11個の担当を持つ
文部科学省の資料には続きがあります。教員であれば、先ほどのようなすっきりとした組織図には到底ならないことを実感しているはずです。実際の組織図として示されているのは、中学校・各学年3学級・職員数19名の例です。「そうそう、これこれ」という声が聞こえてきそうな図です。
この資料では、アルファベットが1人の先生を表しています。
a先生(理科)の担当例
- 各種委員会:総務委員会、教務委員会
- 教務:教務部主任、学習指導部(少人数担当・小中連携・情報教育)、理科の教科主任、生徒指導部(教育相談)、特別活動部(学校行事)、テニス部顧問
- 庶務:校内会計(実習費)、管理表簿(出席簿・指導要録・卒業台帳)
- 渉外:PTA本部、外部協力者
- 事務:施設・設備(特別教室・理科室)、備品(各教科備品)
▶ 動画では5:27〜で詳しく解説しています
q先生(音楽科)の担当例
音楽科の教員は、この規模の学校ではたいてい1人です。資料内で音楽科の教科主任とされるq先生の担当は、次のとおりです。
- 各種委員会:就学指導委員会、文化行事委員会
- 教務:学習指導部(特別支援教育・環境教育)、音楽科主任、生徒会(保健委員)、学校祭、合唱コンクール、美術部顧問(吹奏楽部ではない点にご注目ください)
- 庶務:実習費
- 渉外:PTA総務部
- 事務:教科特別教室、各教科備品、就学援助
▶ 動画では6:40〜で詳しく解説しています
▼音楽科の教員が担任を持つときに気をつけたいこと

担任の仕事は、この一覧に入っていない
資料の最下段にある「各職員の担当数」では、理科のa先生・音楽科のq先生がともに11個の担当を持ち、最も多い保健体育科のj先生は20個にのぼります。
ポイントは、この一覧に学年学級の担任・副担任の分担が含まれていない点です。肌感覚としては、a先生が学年主任、q先生が担任にあたると考えられます。組織図上の「学年主任」「各担任」という担当がさらに重なり、学年・学級経営はもちろん、学年独自の行事や会計も分担することになります。
これは大げさな例ではありません。また、子どもの人数が減って教員の人数が減ったとしても、校務分掌そのものはほとんど減らないという実情があります。子どもの数が減ることで校務にかかる時間は短くなっても、校務という業務そのものがなくなるわけではないのです。
▶ 動画では7:23〜で詳しく解説しています
▼担任・副担任の仕事についての解説記事


学校の特色によって、分掌はさらに増える
ここまでの分掌に加えて、学校の特色に応じた担当が加わります。
- 入学に試験がある学校では、入試の担当が割り振られます
- 研究に力を入れている学校では、研究会の運営や郵送物・冊子の作成などが加わります
- 教育委員会や児童相談所、子ども家庭支援センター、フリースクールなど、子どもを支える学校以外の組織とのつながりも大切なものです
▶ 動画では8:41〜で詳しく解説しています
校務分掌はどこで学べるのか
「教員になったら、学級や教科に集中できるように校務分掌を先に学んでおきましょう」と言いたいところですが、そう簡単ではありません。校務は現場のなかでしか伝えられないことがあったり、口伝で引き継がれていたりして、現場でしか学べないことばかりなのです。
だからこそ、組織図というかたちで全体像を先に見ておくことに意味があります。職員室で飛び交う「〇〇部」「主任」という言葉が、どこにつながっているのかが見えてくるからです。
まとめ|教員が多忙な理由は校務分掌の量にある
この資料がつくられた文部科学省の「学校の働き方改革特別部会」では、こうした資料をもとに働き方の見直しが図られました。フォーラムや資料も公開されており、改善は進んでいるはずです。
そのなかで、文部科学省は教員の校務を次の3つに整理しました。
- 基本的には学校以外が担うべき業務
- 学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
- 教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
この整理を目にしたことがある先生も多いのではないでしょうか。「個人情報が…」「学校のやり方が…」といった事情を全部ひっくり返して、校務を外部発注できればもっといいのにな、と思うこともあります。
外注できる業務や削減できる校務を選びながらすっきりとした組織図になり、直接子どもに関わる学級や教科に時間を割ける組織になっていくことを期待しています。実習生や初任の皆さんも、まずは全体像を知るところから始めていただければ十分です。
▼外部の力を借りる「アウトリーチ」という選択肢

(資料:文部科学省「資料2-1 学校における働き方改革に関する緊急対策(平成29年12月26日 文部科学大臣決定)【概要】」より抜粋)
よくある質問(FAQ)
Q. 校務分掌とは具体的に何を指しますか?
A. 学校の運営に必要な業務を教職員で分担する仕組みのことです。組織図上の「〇〇部」がこの単位にあたり、各種委員会・教務・庶務・渉外・事務などに分かれます。1人の教員が複数の分掌を兼ねるのが一般的です。
Q. 校務分掌にはどんな種類がありますか?
A. 文部科学省の資料にある中学校の例では、各種委員会(総務・教務・就学指導・文化行事など)、教務(教務部・学習指導部・生徒指導部・特別活動部・教科主任・部活動顧問など)、庶務(校内会計・管理表簿)、渉外(PTA・外部協力者)、事務(施設設備・備品・就学援助)に分かれています。区分も名称も学校によって異なります。
Q. 教員1人が担当する校務分掌はいくつくらいですか?
A. 文部科学省の資料の例(中学校・各学年3学級・職員数19名)では、理科のa先生と音楽科のq先生がそれぞれ11個、最も多い保健体育科のj先生は20個の担当を持っています。しかもこの数には、学級担任・副担任の仕事は含まれていません。
Q. 校務分掌は教育実習で教わりますか?
A. 基本的には教わりません。教育実習は3〜4週間と短く、主に教科教育の指導に限られるためです。校務は現場でしか伝えられないことや口伝も多く、実際に学校に入ってから学ぶことになります。
教育実習生・若手の先生向けの情報は、中学校音楽の教育実習ガイドにまとめています。実習前の準備から実習後まで、順番に読めるようになっています。
この記事は、動画「校務分掌とは?学校の組織図でわかる教員の仕事分担【元中学校教員】」をもとに作成しました。










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