皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。
現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
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今日は「学校の教員が塾をどう考えているか」についてお話しします。
1つの意見として参考になさってください。
2018年4月に文部科学省が小学校6年生・中学校3年生に実施した「平成30年度全国学力・学習状況調査」。
これを分析した資料「平成30年度全国学力・学習状況調査の結果資料」(国立教育政策研究所)によると、「学習塾など学校や家以外の場所で勉強している」と答えた割合は
小6生32.2%
中3生42.1%
(最も高いのは小学校では東京都44.5%、中学校では神奈川県56.1%となっています。)
実際に東京都目黒区の自由が丘駅周辺と神奈川県青葉区の青葉台駅周辺には、学習塾が多数あることがわかります。
学校の教員は子どもが塾に通っていることについて、学校でどのように考えているのでしょうか。塾に通う子どもがあまり多くなかった公立中学校と、とても多かった国立中学校で勤務する中で感じたことをお話しします。
学校の環境や子どもの状況、教員によっても様々な見解がありますので、あくまで私とその周りとして聞いてください。
この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。
▶子どもが塾に通っていることを学校の教員はどう思っているのか?を知りたい方
▶教員の立場で塾に通うことをどう配慮すればいいのか?を知りたい方
▶塾に通うことを教員に相談しようか迷っているという方
この動画の他には、
習い事で人気のあるピアノ。その習う意味や受験との両立、やめどきについてお話ししています。
学期末や長期休みにおこなう三者面談について、3つの視点「三者面談(子ども編)」「三者面談(保護者編)」「三者面談(教員編)」で語り分けた動画があります。教員は三者面談で子どもと保護者の何を見ているのか。親子の力関係を見るポイントについて話をしています。
併せてごらんください。
教員は塾を気にするか?
子どもや保護者は、塾選びや塾に通う目的などについて時間をかけて慎重に検討したり、方針や時間・金銭面等を比較したりということをするようですが、教員からすると、「誰がどこの塾に行っているか?」「何時間?」「どんな教科?」「夏期講習は?」…ということは、私の経験では気にしません。
塾に通っているかどうか、また、どの塾かということも、知りませんし、興味がありませんでした。
志望校に塾の方針が深く関わる場合や、生活指導の観点から子どもの学校外の生活スケジュールを聞く目的で塾について尋ねることはあっても、「どの塾に行っているか?」「教科や時間をどれくらい割いているか?」などを尋ねることはありませんでした。
もっとも、私は音楽科(実技教科)なのでというのも強いかもしれませんが、それでも5教科の先生であっても「知らない」「知らなくても構わない」という教員が多かったように思います。
それは塾に行こうが行くまいが、学校の教科指導そのものには関わりがないからです。
もし、塾に行くことが学校の教科指導に関わっていたとしたら、塾に通っている生徒と通っていない生徒を分けるとか、通っている塾の特性ごとに指導を変えなければいけない、ということになります。それは全く現実的ではありません。
教員が気にするのは『子どもが心身ともに健康な生活を送れているか?』です。
「塾に通うことで睡眠時間が削られていないか?」とか、「学校の休み時間に塾の宿題をしているな」とか、「部活動や学校行事等との兼ね合いは大丈夫か?」とか、「最近言葉がきついけど何かあったかな?」…といったことを気にしています。
塾に通っているか、よりよほど大切なことです。
教員が塾を勧めることがあるか?
これも人によるのかもしれませんが、私が見てきた限りのことを言います。
学校の成績が上がらないとか、学校の授業についていけないからといって「塾に行きなさい」と指導する教員はあまり見たことがありません。
子どもや保護者が「塾に通うことを考えているけど、どういう所がいいか?」という質問をしてきた場合は、学習状況や家庭環境・志望校等を考慮して助言をすることはありますが、能動的に塾を勧めることはなく、勧めたとしても勉強法やワークやドリルなどの補助教材だと思います。
学習の基本は教科書です。
2020年8月にアップされた『「お金かけずに東大生」の勉強法が効率的すぎた』という東洋経済オンラインの記事には、『「教科書」が最強の勉強ツールと理解する』という項目で「教科書こそ勉強における「最強のメインコンテンツ」であることを忘れてはならない」とあります。
教員は学習指導要領の内容や時期・順序で指導をおこなうので、先取りをする塾や特徴の強い塾に通うことを積極的に勧める人はあまりいないのではないかと思います。
塾に対する教員の考え方(学級担任・教科担任・部活顧問の目線)
塾の見え方を「学級担任の目線」「教科担任の目線」「部活動の顧問の目線」の3つの観点でお話しします。
学級担任の目線
担任が気にするのは、先ほど強調した『子どもの心身の健康』これが最優先です。
子どもを形成する上で、教科教育はたった1つのパーツにすぎません。
食事や睡眠時間、第二次性徴期・反抗期の気持ちや行動、友人や家族関係、学校外の時間の過ごし方など、気にすることが教科教育以外に多くあります。
塾は学校外での時間ではありますが、塾の内容や成績そのものを気にするよりも、塾に通うことによっておこる他への影響…主には学校生活への影響を考えます。
私が学級担任をしていた時は塾に通っているかについて生徒に聞いてはいましたが、目的は教科の成績ではありませんでした。「何時に寝ているの?」「夕ご飯は、いつ何を食べるの?」「しんどくない?」塾に通っている生徒は特に生活面で注意を払っていました。
教科担任の目線
私は音楽科ですので、国数英社理(5教科)の塾について直接口出しすることは全くありません。
音楽高校を目指すという場合は、主専攻はもちろん、ピアノやソルフェージュ、楽典などの個人塾に行かなければならないということは早めに伝えていました。学校の内容ではとてもまかないきれないからです。
「音楽高校・音楽大学を志望する生徒の進路指導で大切なこと」という動画で話している通り、音楽科が学校に1人の場合は全学年・全クラスの子どもに対して進路指導をします。家庭や外の音楽の塾との連携も大切です。
また、5教科の塾と音楽との関わりで言うと、ピアノ教室との兼ね合いです。
「ピアノが好きなのに成績が下がると…または中2の春でピアノを辞めなければいけない」とか「塾が忙しくなって練習できず両立できない」といった相談を受けたりすることはありました。
他の動画「受験・学業とピアノの習い事は両立できるか(やめどきを判断する曲とは?)」でも話している通り、ピアノを習うことがその子どもにとってどのような目的があって、どのような位置づけなのかを一緒に考えることもありました。
合唱コンクールで伴奏を依頼する場合も、子どものピアノの実力と、塾に通っている場合に練習時間が確保できるかなどの兼ね合いを考えることはありました。
部活動顧問の目線
顧問として、合唱や吹奏楽の部活動でしたら練習で1人でも抜けるのは痛手です。
また、対顧問だけでなく、対パートリーダーや対先輩・後輩、対部長、対他の部員と関係がうまくいかないと、塾も部活も悩みの種になってしまいます。
部活の勧誘をする時などには、活動の曜日・出席率などコンクールに参加する条件、年間の演奏会やコンクールの日程・引退の時期をていねいに説明したり、「塾と両立できる」または「できない」と言ったりして、塾や他の習い事との兼ね合いを示すことが大切だと思います。
まとめ:生徒が塾に通うことを教員はどう思うのか?
今日は「教員は塾をどう思うか」について話しました。
2校での実践に基づいた、あくまで1人の教員の意見です。
教員がどう思っているか気になる人は、聞いてみると良いと思います。教員によって違うのはもちろん、教科に特性があるかもしれません。子どもの学習の特徴、家庭環境、部活動などを鑑みてアドバイスをくれるかもしれません。
また、教員自身の塾にまつわる話を聞いてもおもしろいかもしれません。教員自身が小中高校生の時に通っていた塾のエピソードがあるかもしれません。
教員の中には、大学生の時に塾講師や家庭教師などのアルバイトをしている人は少なくありません。考えなどを聞いてみてもいいですね。
記事の内容は動画と同じです。
動画「生徒が塾に通うことを教員はどう思うのか?」も是非ご覧ください。
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