部活動・コンクールでの著作権を理解する(Nコン・合唱コンクール・吹奏楽コンクールの事例)

部活・コンクールで演奏する場合の著作権ルール(Nコン・合唱コンクール・吹奏楽コンクールの事例) 一歩先ゆく音楽教育(スキルアップ編)
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皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。

現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
このYouTubeチャンネルでは学び続ける先生と学生さんのために、学校で役立つ情報と提案を発信しています。

 

今日は部活動の著作権について話します。
音楽科の教員は音楽に関する部活動の顧問を持つことが多いです。

今日は部活動での著作権を知り、実際の音楽に関するコンクール(規定や開催要項)から内容を理解するという内容です。実際にNコンや吹奏楽コンクールを例にとって、著作権を考えてみましょう。

 

文化的行事=文化祭や合唱コンクールなどでは学校のカラーの違いが顕著に現れます。「強豪校と一般校でこんなに違う!学校による合唱指導の相違点」で私の経験したことを紹介しました。

 

 

 

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姉妹サイト「原口直の学校著作権ナビ」の紹介!

「分かりにくい」「とっつきにくい」と思われがちな著作権。
学校と著作権をつなぐ「翻訳家」として、原口直が現場目線を大切にしながら学校での著作権を分かりやすく解説しています。
「学校・子どもに関わる著作権だけ知りたい」「法律の文章はちょっとわかりにくい」「著作権は気になるけど、何を聞いていいのか?どう考えていいのか分からない」という学校関係者の方におすすめです!

原口直の学校著作権ナビ

部活動で演奏する場合の著作権のルール

音楽に関する部活動が演奏する場は2つ。「校内での演奏」「校外での演奏」です。

 

「校内での演奏」とは、
・日々の練習
・校内行事(文化祭での発表、運動会、入学式や卒業式などの儀式的行事など)
・校外行事(学校が主催する地域の行事、自治体の発表会)

「校外での演奏」とは、
・各種コンクール
・演奏会

まず基本的な考えです。

 

著作権の原則は、「作品は作った人の物」だから、使ったり・増やしたり・変える時には許可が必要なのです。
この著作権の原則がありながら、「学校は例外」です。「学校」の指す範囲は授業・校内の部活動です。使ったり・増やしたり・変える場合には許可が要らないとなります。

 

学校における著作権入門(教員のためのシーン別著作権)」の動画で、もう少し詳しく著作権について解説していますので是非ご覧ください。

 

具体的に「校内での演奏」「校外での演奏」に分けて、著作権が出てくるシーンで考えてみましょう。

 

校内での演奏においては、許可が要らないので、使ってよい・増やしてよい・変えてよいとなります。

例えば「ホルンパートがいない」となった時、代わりにテナーサックスで代用したり。「演奏時間が長い」となった時、リピートなしで演奏する。こういうことに関して、許可が要らないということです。

 

校外での演奏においては、勝手に使えない・勝手に増やせない・勝手に変えられない。

学校内で使う場合とルールが異なります。許可が必要なのです。

 

2021年度の情報ですので、最新の情報はきちんと公式のホームページをご覧ください。

 

 

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NHK全国学校音楽コンクールで演奏する場合の著作権ルール

 

 

今年度より申し込みの段階で、自由曲として歌う楽曲の著作権の管理状況を予めご確認いただくよう、お願い致します。くわしくは、こちらのページをご覧ください。

という注意書きが加わりました。
「自由曲の著作権の状況確認のお願い」著作権に関するページがとても増えました。

では実際に「Nコン2021NHK全国学校音楽コンクール」のホームページから著作権に関する記述を紹介します。

 

「自由曲の著作権の状況確認のお願い」の内容を解説

 

 

はじめに

演奏を様々な配信サービスで行っているということ。
コンクールでの演奏を公開するにあたって、正しく権利処理を行うことが必須であること。
著作権の情報によってはやむを得ず放送配信を見合わせたケースがあるということ。

が載っています。
今年からは自由曲を選ぶ時点で管理状況を確認してくださいということです

 

著作権管理状況確認の手順

丁寧に解説されています。

代表的な音楽著作権管理団体はJASRACとNexToneです。まずは、自由曲に選曲しようとしている曲がこの2団体に管理されているかどうかお調べください。

 

JASRACの場合は「ステップ①」、NexToneは「ステップ②」を確認します。
内容は同じで「放送」「配信」の欄がどちらも〇になっているか確認するよう手引きが書いてあります。

許可になっていない場合は管理外の可能性があるので「権利処理ができない可能性があることをご了承いただいた上で自由曲にお選びください」とあります。

つまり、配信(ラジオなど)の場合にできない可能性がありますよということを言っているのです。

 

参照いただくデータベースのご案内

いずれのサイトでも、作品タイトル、著作者名などの情報で、楽曲を検索することができます。

「放送」「配信」両方の欄をご確認ください。JASRACでは「〇」と表記のある曲は、JASRACが管理していることを表します。表記が「×」、または検索しても見つからない曲は、JASRACでは管理していないこと(管理外)になります。

NexToneでも同じように管理状況が色で示されています。青色は管理されているということです。

楽曲には作品コードがついていて、JASRACやNexToneのデータベースでコードを確認できるとありますので、参加申込書にコードを書いてください(任意)とあります。

 

JASRAC・NexTone管理外の曲を自由曲に選んだ場合

この場合の対応も書いてあります。

 

「放送」「配信」には作詞者、作曲者、編曲者など、著作権者全員の許諾が必要です。原則として許諾申請を行うのはNHKですが、時間的な制約や様々な諸条件があり、必ず許諾を得られるとは限りません。許諾が得られない可能性があることを、予めご了承ください。

とあります。
つまり、演奏したものを放送したり・配信したりすることができないかもしれませんと言っています。

 

許諾を得られた場合は、「楽譜の許諾に関する報告書」を提出してください。

つまり許諾を得られた証明を出してくださいとあります。

 

Q&A

詳しくQ&Aも出ています。

すべての学校が歌う自由曲。この処理をすべて今まではNHKさんがしてくださっていたということですね。
これを参加の段階で、参加者=顧問の先生がきちんと確認をしましょうということです。

最後に「自由曲の著作権管理状況の事前確認にご協力をお願いいたします」とあります。NHK事務局が書くのは初めてです。これまでの許諾の手続などがいかに大変だったかということが、ここににじみ出ていると思います。

自由曲を選曲する際には、もちろん演奏する児童生徒のことを考えますが、それ以外に著作権のことを考える必要があるのです。

 

Nコン2021参加のご案内の「選曲・楽譜について」の内容を解説

もう一か所、著作権に書いてあることを確認しましょう。(公式サイト内のこちらのページ

 

自由曲について

「自由曲について」の項目内に「★著作権について★」の記載があります。
「詳細については「自由曲の著作権の状況確認のお願い」を必ずお読みください。」の内容は先ほど解説した通りです。

 

「★差別的表現などについて★」の下にも著作権について書いてあります。

 

「★事前提出物について★」
<楽譜>「・楽譜にあわせて楽譜提出チェックシートもご提出ください。」とあります。

「楽譜提出チェックシート」は楽譜を審査員のために提出する必要がありますが、ここに自由曲の管理団体・作品コードを書く欄があります。
チェックシート内の「★次の項目の□にチェックを入れてください。」の著作権に関する部分です。
改変・出版譜・コピー譜について書いてあります。

 

<ダウンロード楽譜の場合>

必要部数を購入の上、購入を証明する書類(購入完了メールや領収書の写しなど)を楽譜に添付してください。ダウンロード楽譜のコピーは著作権法で禁じられています。

部員全員と先生の分の購入をします。1部ダウンロードしてコピーすることは、著作権法で禁じられているからです。

 

楽譜の改変について

改変と言われると何かな?と思いますが、

改変とは、部分省略(小節・音符・繰り返し・ディビジ等)、移調、楽器の追加や変更、手拍子・足踏みの追加変更などを指します。

とあります。

人数が足りないからと言って、音符やディビジを省略したり、演奏時間内に収まらないからと言ってくり返しを失くすということも改変にあたるので、許諾を得る必要があります。

無断で改変を行った団体は審査対象外となります。」と太字で強く書かれています。気をつけましょう。知らなかったでは済まされません。

 

Nコン申込みのときに注意すべきことをまとめた最新の動画(2022年版)もあります。「Nコン2022の申込方法と注意点(選曲・指導よりも大切なこととは?)」をご覧ください。

 

 

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全日本合唱コンクールで演奏する場合の著作権ルール

ここでは東京都合唱連盟のページを紹介します。こちらも2021年度の情報です。

 

著作権に関する情報は
「3,演奏曲目および演奏時間」

自由曲については著作権を尊重する観点から、練習においても著作権法などで認められた正規の楽譜を使ってください。

「4,自由曲楽譜の確認」

(1)参加合唱団は自由曲として演奏する作品の楽譜が正規のものであることを次のいずれかの方法で証明する。

とあり、出版譜・コピー譜・著作権フリーの場合、それぞれの証明が必要です。

 

(2)正規の楽譜を使用せずコンクールに参加しようとしたことが明らかになった場合は、出演停止、審査対象外あるいは受賞取消とする。

という厳しい項目もあります。

 

 

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吹奏楽コンクールで演奏する場合の著作権ルール

全日本吹奏楽連盟の下部組織である東京都中学校吹奏楽連盟。2021年度の情報ですのでお気を付けください。
著作権に関する項目は2ヶ所あります。

 

「8.著作権について」

(1)著作権が存在する楽曲を編曲する場合は、必ず事前にその著作権者から編曲の許諾を受け、許諾書を提出すること。

とあります。

ホルンをテナーサックスに代える。これは編曲にあたりますし、リピートを演奏しないのも編曲です。その際には許諾書を提出する必要があると書いてあります。

 

出版されている楽譜をきちんと演奏するということ。つまり、正規の楽譜を使っているか?ということを確認しているのです。

レンタル楽譜・未出版の楽譜を使用する場合も書いてあります。一番下には

実際に許諾書がなかったためにコンクールに出場できなかった例がありましたので、ご注意ください。

とあります。吹奏楽でも著作権に関する注意喚起がなされています。

 

このように、学校外で演奏する場合では学校内で演奏する場合とは著作権のルールが異なります。許可が必要なのです。著作権者に無許可で勝手に使えない・勝手に増やせない・勝手に変えられないということです。
授業や校内の部活で何気なくやっていることを校外では決してしてはいけないのです。

 

板書や資料、楽譜等を一斉に紙やスクリーンに示す「『これまで』の学校における著作権」と、子ども・教員の双方に端末がある「『これから』の学校における著作権」の違いについて「GIGAスクール時代の学校での著作権」でお話しました。

 

 

校外の演奏会で演奏する場合

例えばホールを借りて演奏会を行う場合。

 

「このようなケースは手続きがいりません」という項目があります。
次の3つの条件をすべて満たした場合

1.入場料など、どんな名目でも来場者から料金をもらっていない。
2.演奏する人(歌手やバンド)や指揮者などに報酬を支払っていない。
3.企業が主催しているなど、営利を目的としたものではない。

すべて満たしていれば手続きは必要ありません。1つでも満たしていなければ、著作権の手続きが必要です。

「学校外での演奏会」と書きましたが、学校内の体育館や講堂などを使ってお金を取ったり・支払ったり・営利を目的とした演奏会をする場合には手続きが必要です。

 

 

まとめ:部活動・コンクールでの著作権を理解する(Nコン・合唱コンクール・吹奏楽コンクールの事例)

著作権について、部活動・学校での著作権について知りたい場合は2つのサイトをおすすめします。

 

JASRAC PARK

子ども用に作られたサイトですが私も愛用しているほど、大人にもわかりやすく勉強になることがたくさんあります。部活動以外にも、学校内での行事、楽譜のコピーなど授業のことも書いてありますので、ぜひご活用ください。

 

著作権情報センター(CRIC)

「学校教育と著作権」というページがあります。実際のシーンを想定した問答集がありますので、こちらもぜひご参照ください。

 

 

部活動の成果を発表するコンクールやコンサート。この場で著作権に関する違反や勘違い、申請漏れなどがあって子どもたちの思い出・努力を無駄にしてしまっては元も子もありません。

部活動の顧問として責任をもって著作権を知り、コンクールやコンサートが児童生徒はもちろん、顧問の先生にとっても充実した発表の場になるようにしましょう。

 

それでも分からないことがあれば、著作権相談室を開設していますので以下のページからお問い合わせください。

 

記事の内容は動画と同じです。
動画「部活動・コンクールでの著作権を理解する(Nコン・合唱コンクール・吹奏楽コンクールの事例)」も是非ご覧ください。

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この記事を書いた人
原口直

元東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー

東京学芸大学教育学部卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。
東京都内の公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校において、教育実習生の指導・進路指導・新しい学習内容「生活と社会に関わる音楽の授業実践」を重ねる。
会社員時代の経験を活かした知的財産権教育の研究・発表実績多数。

2020年春より教室からYouTube動画・ウェブサイト・講演にフィールドを移し、教員や教育実習生が学ぶためのコンテンツを発信している。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)

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