4月の最初の授業は、生徒とのはじめての出会いの場です。このガイダンスをどう設計するかで、その後1年間の授業のしやすさが大きく変わります。
この記事では、音楽教員歴10年の私が実践してきた「ガイダンスで伝える3つのこと」と「初回アンケートの内容と使い方」を具体的に紹介します。
初回ガイダンスで伝える3つのこと
生徒と「はじめまして」の場で話すべきことは、大きく3つあります。自己紹介・音楽に対する哲学・良いことと悪いことの線引き、この3点を最初に整えておくことが、1年間の土台になります。
自己紹介|信頼と親近感を生む最初の印象
第一印象は、その後の関係性を左右します。どんな音楽が好きか、どんなスポーツが好きか、どんなYouTubeを見ているかといった人柄が伝わる情報を、パワーポイントなどを使ってわかりやすく話しましょう。
「この先生を信頼できるか」「親しみが持てるか」は、この自己紹介にかかっているといっても過言ではありません。よく考えて、生徒に覚えてもらえる自己紹介を準備しておきましょう。
音楽の哲学|「楽音と雑音」を最初に語る
少し難しく聞こえるかもしれませんが、音楽に対する考え方、音に対するスタンスを初回に伝えておくことはとても重要です。
私は初回の授業で、「楽音」と「雑音」の話をしていました。楽音とは聞いて心地よい音、雑音とは聞いて心地よくない音です。たとえば、みんなで歌うときの声は楽音ですが、授業中に関係ない歌い出しがあればそれは雑音になります。同じ「声」でも、状況によって楽音にも雑音にもなるのです。
この考え方を最初に共有しておくと、その後の授業でも「雑音なし」という言葉がそのまま指導の言語になります。自分がなぜ音楽を教えるのか、音にどう向き合っているのかを、自分の言葉で語ってみてください。
良いことと悪いことの線引き|最初に明確に伝える
これは許す、これは絶対に許さない、という線をはじめに引いておくことが大切です。曖昧にしておくと、後から「聞いていなかった」「知らなかった」というトラブルにつながります。
特に伝えておきたいのは以下の内容です。
提出物・ワークシートについて
中学校の音楽は、英語や数学などに比べると週あたりの授業数が4分の1から5分の1ほどしかありません。つまり、音楽のワークシート1枚は、他教科のそれに比べて何倍もの重みを持っています。「だから忘れてはいけない、必ず締め切りまでに提出する」というメッセージを、最初にしっかり伝えましょう。
また、都立高校の入試では内申書の実技教科が2倍で計算されることも、上級生には触れておくとよいでしょう。ただし評価ばかりを強調するのではなく、提出物の大切さを伝える文脈の一部として話すのがおすすめです。
音楽室のルールについて
ピアノや大型のパーカッション・機材に触ってよいか、休み時間の使い方はどうか、こうしたルールも初回に明示しておきましょう。
「長い休み時間はOK、短い休み時間はNG」「部活で楽器の扱いを知っている人は触ってよい、そうでない人は相談してから」など、条件をつけながら丁寧に伝えることができます。
レジュメとして配布する
ガイダンスの内容は、必ずレジュメにして配布しましょう。ファイルなどに綴じておくと、後からルールを破ったときに「そこに書いてありますよ」と確認できます。共通の約束として形に残しておくことが、1年間の信頼関係の土台になります。
自己紹介やルールをパワポで見せる場合に参考にしたい記事・動画を紹介します。
動画「音楽教員のキャラクターづくり5つの秘訣|生徒との距離をグッと縮める方法」


初回アンケートで生徒を知る|実践的な4つの設問
私は毎年4月に、1年生を対象にアンケートを実施していました。生徒理解を深めるだけでなく、合唱伴奏候補者のピックアップにも活用できる内容です。
設問1:小学校での音楽の思い出
「小学校で印象に残った曲や行事は何ですか?」と聞くことで、生徒が音楽にどんな経験を持っているかがわかります。授業の導入や会話のきっかけにもなります。
設問2:音楽系の習い事とピアノのレベル
楽器やダンスなど、音楽系の習い事を聞きます。ピアノについては、習っている年数と今練習している曲を書かせるのが効果的です。「エリーゼのために」を一つの基準として、これが弾ければ1・2年生の合唱曲の伴奏はできるだろうという判断に活用していました。最近はJ-POPやジャズピアノを習っている生徒もいるため、曲名を書かせることでレベルの把握がしやすくなります。
設問3:生活の中の音楽との関わり
ラジオを聴くか、音楽番組を見るか、コンサートや劇場に1年以内に行ったかといった問いを通じて、生徒が日常的に音楽とどう関わっているかを把握します。
設問4:おすすめの音楽と「この人知ってる?」
おすすめの音楽を3つ書かせると、その生徒の音楽的な好みや関心がわかり、会話の糸口にもなります。
また、バッハやモーツァルトといったクラシック作曲家から、日本の演奏家・現代のJ-POPアーティスト・伝統芸能・ボーカロイドまで50名ほどを並べて「知っていれば○、知らなければ×、名前だけ聞いたことがあれば△」をつけさせることで、音楽知識の幅が視覚的に把握できます。

まとめ|「始め」に時間をかけることが1年間の近道
初回のガイダンスとアンケートは、1年間の授業を左右する大切な時間です。自己紹介で信頼を作り、哲学で価値観を共有し、ルールで共通の土台を作る。そしてアンケートで生徒一人ひとりを知る。この「始め」を丁寧に準備することが、その後の授業を格段に楽にしてくれます。
ぜひ今年の4月、じっくり時間をかけて準備してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. ガイダンスはどのくらいの時間をかければよいですか?
A. 動画内では具体的な時間の目安は示されていませんが、自己紹介・哲学・ルール明示の3点をカバーするには、1時間の授業をガイダンスに充てるくらいの準備が必要です。レジュメを事前に作成しておくと、話す内容が整理されてスムーズに進みます。
Q. アンケートはいつ実施するのがよいですか?
A. 私は毎年4月に1年生を対象として実施していました。ガイダンスと同じ初回の授業内で行うか、2回目の授業で実施するとよいでしょう。
Q. ピアノが弾ける生徒を見つける方法はありますか?
A. アンケートで「今練習している曲」を書かせる方法が有効です。「エリーゼのために」を一つの基準にすると、合唱伴奏ができそうな生徒の目安がつきます。曲名がわからない場合は、習っている年数と先生の名前を聞くのも参考になります。
Q. 音楽室のルールは毎年同じでよいですか?
A. 基本的なルールは継続してよいですが、学年や生徒の実態に合わせて調整することをおすすめします。ルールをレジュメとして配布しておくと、学年をまたいだ引継ぎにも役立ちます。








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