皆さん、こんにちは。一歩先ゆく音楽教育、原口直です。
現在は学校での教育研究の経験と、未来につながる新しい学びについて情報発信しています。
このYouTubeチャンネルでは学び続ける先生と学生さんのために、学校で役立つ情報と提案を発信しています。
校内の文化祭や合唱祭など、クラスで合唱をおこなう学校は多いと思います。音楽科の授業の中でも指導をすることもありますが、学校行事の場合はクラスでの練習の時間が多くあります。そこでは音楽科の指導の手は届かず、子どもの指揮者や伴奏者・パートリーダーや文化祭の実行委員が力を持ちます。
そしてもちろん、担任の先生も合唱指導に加わります。
学校に音楽科は少数ですから学級の担任の先生のほとんどは音楽科ではない…つまり国語科・社会科・保健体育科などの教科の先生が合唱指導にあたるということです。
担任の合唱指導の関わり方は千差万別です。
学校の文化としての側面もあれば、担任の先生の学級経営としての理念や目標もあり本当に様々です。
子どもも先生方も学校あげて音楽に取り組んでくれるというのは音楽科にとっては、非常にありがたいことでありうれしいことです。しかし、マネジメントを間違うとありがた迷惑になってしまうことや、担任の先生のせいで合唱が嫌いに、音楽が嫌いになってしまうこともあるかもしれません。
このような、行事として音楽に学校あげて取り組む中で音楽科教員は担任の先生とどのように関わっていけばいいでしょうか。今日は3つのポイントを話します。
この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。
▶行事運営の中で音楽科はどのように関わればいいのか知りたいという方
▶担任の先生にアドバイスを求められたけれども、何を伝えればいいのか分からない・困っているという方
▶担任の先生を上手に使って行事・合唱・クラスを盛り上げたいという方
他の動画は、
文化祭で一体何足のわらじを履くのか。文化祭前の通常授業・教育実習生指導・授業外の合唱指導・部活の指導・校務分掌としての行事リーダーなどの心がまえ。また、文化祭は学校の文化そのものであるという話
音楽科が担任を持った時に合唱コンクールにどう関わるか。私が実践していた年度初めから始める自分のクラスの合唱コンの準備を紹介しています。
音楽科として譲れない点を明確に伝える
行事の練習を授業に盛り込むことについては賛否両論あります。私はどちらかというと嫌いです。
ただでさえ少ない授業時間数、教えなければならないことはたくさん。その中で行事前に何時間も合唱だけに時間を取るのが当たり前という風潮・文化は好きではありません。
歌唱の準備は文化祭だけではありません。卒業行事や卒業式・運動会に合わせても必要です。もちろんそれによって得る事、子どもの成長が見られることもありますが、音楽は歌唱だけじゃないんだ!と言いたくなります。
取り乱しました。
合唱指導を授業と授業外でおこなう場合、音楽科として譲れない所を明確にしましょう。ベテランの先生や合唱大好きな先生ほど、その先生のやり方を持っています。もちろんそれはすばらしいことです。
しかし「ここまでは教科に任せてください」ということを先に、明確に示しましょう。
譲れない点1:「評価」方法
例えば、授業で行う以上「評価」をします。
行事での金賞や1位ではなく、音楽科としての評価。これを子どもに対して明確に示します。
金賞を獲ったから評価がよくなる、指揮や伴奏をしたから評価がいいという単純な評価にならないよう、歌唱の単元で何をできるようにしたいかを明確にしましょう。
譲れない点2:「楽譜」選び
また「楽譜」
気合が入っているまたは合唱好き、合唱経験のある担任の先生は曲が決まると、早く練習を始めたくなります。一度、曲が決まってすぐ知らない間に生徒が楽譜を持っていて驚きました。
「楽譜は音楽科教員がいついつに配布します。」と先に言います。また、担任の先生方の分も準備しましょう。
楽譜を選ぶところから音楽科の知識や技能の腕の見せどころです。
・フォント
・ページ割
・大譜表の書き方(特に男声はト音記号からヘ音記号に読み替えが必要な楽譜と不要な楽譜がある)
・めくりのタイミング
・音符や文字の詰まり具合
・縦書きの歌詞はあるか。なければ書くか。
・ページ(合唱曲集から取ると、35ページや120ページがその曲の1ページ目になって指導がしにくい。ページを書く位置も大事。私は下の真ん中にしていた)
・練習番号(ついている楽譜とついていない楽譜がある。指導しやすいように音楽科があとで付す)
こういったことにこだわって楽譜を選びたいのに、「持ってるから」という理由で担任の先生が印刷してしまうことがあります。歌い方の指示が書き込んであるものなんて、指導の方法によっては先に配られるのは最悪です。
譲れない点3:「模範演奏」の選び方・使い方
同じように「模範演奏」
CDやYouTubeでパートごとの音源があったり、ピアノ伴奏があったりします。それも音楽科で選んで指示をする、もしくは使い方や位置づけを明確にして使わせたいものです。
好みやねらいによりますが、参考にして欲しくないパート音源もあります。完全打ち込みのもの・ビブラートがかかっているものなど、音源自体が悪いわけではありません。
ピアノ伴奏も同様です。特に速度の変化がある曲は模範通りにしか歌えなくなってしまうので要注意です。
「誰に対して」「どのタイミングで」「どう使うか」によって良薬にも劇薬にもなります。
このように行事・学級経営の要素はあるとはいえ、音楽科の授業として指導する以上は「音楽科として譲れない所」を明確にして、先に全体に伝える事は重要です。
担任に任せること・音楽教員が介入することの線の引きかた
クラスの合唱にもめごとはつきものです。
本番までにクラスの中で衝突があったり、悩み事があったり、時には涙を見ることもあります。
クラスの音楽以外のもめごとは担任の先生に任せましょう。そして連携しましょう。
音楽のもめごと「指揮・伴奏・合唱が合わない」「拍子や速度や強弱の変化」「高音が出ない」は大いに関わります。個別でレッスンしたり、具体的なトレーニングをアドバイスしたりします。
しかし、「練習に人が集まらない」「〇〇がまじめに歌わない」「指揮者と〇〇がもめている」などは担任の先生にお任せしましょう。すべてに首を突っ込んでいては、体が持ちません。
音楽科は授業で週1回の関わりです。毎日関わりを持っている担任の先生の方が子どもの情報量が違います。クラスの人間関係・他教科や部活動での様子・生活や家庭環境。何が原因で合唱に前向きでないのかは担任の先生の方が判断できます。
もちろんほったらかしではダメです。クラスで何が起こっているのか、担任の先生や指揮者や運営する委員の子どもなどから情報を得て連携しましょう。
結果的に音楽的なこととなれば連携して介入しましょう。
担任の仕事と音楽科の仕事についての線引きと連携が大切です。
学級担任に任せる合唱指導の内容
音楽が好き、また経験がある他教科の先生がクラスに関わっているのを見て、若い先生などが「自分もそうなりたい」と思うこともあります。
とにかく「大きな声を出させる」、ここまではできても、「それ以上に何を言ってあげたら良いのか?」「何をしてあげたら良いのだろうか?」と悩み、音楽科にアドバイスを求めてくることもあります。こんな時はどうればいいでしょうか。
クラス内での復習・反復練習を依頼する
最も手っ取り早いのは「音楽科の指導を見てもらう」
担任の先生にはクラスでの復習や反復をお願いすることです。
音楽科の指導の中では、「もっとこうなってほしい」「そのためにはこれを注意して欲しい」「これを続けて欲しい」と成長への種まき、ヒントを話して、実践や積み重ねはクラスで行ってもらいましょう。
例えば強弱の幅について、サビの部分を丁寧に授業内でおこなって、「あとはクラスで、他の場所もしておいてください」と任せる。
教科の特徴を生かした指導を依頼する
次に「教科の特性を活かす」
国語科の先生なら歌詞。社会科の先生なら曲の生まれた歴史的地理的な背景。理科の先生なら音の高低や音圧の数値化。英語科の先生なら子音母音の発音。美術科の先生なら音楽以外の表現力。保健体育科の先生なら筋力トレーニング?といったように、担任の先生の教科の特性に沿ったアドバイスを促すことです。
自分の専門分野であれば、担任の先生も「待ってました!任しとき!」とばかりに張り切ります。音楽科の考えもしなかったような、知識や技能・解釈が出てくるかもしれません。
一度トライアスロンが趣味という先生が、声量を上げるには下半身だ!と言って、1曲始まりから終わりまでスクワットをさせながら歌っていたのには思わず笑ってしまいました。
歌い終わった後にはクタクタで倒れ込んでいるのですが、それでも子どもたちは面白がってスクワットをしていて微笑ましかったです。
まとめ:学級担任による合唱コンクールの指導と音楽教員の関わり方
音楽科の手が及ばない部分があっても仕方がありません。
授業で全部見られればいいですが、そうはいきませんので学級経営・学級の活動の一部と考えて、ある程度は割り切って指導しなければいけない部分もあります。
音楽科の授業では「軌道修正・目標・具体的なトレーニングを伝える」にとどめて、学級にお任せする部分があってもいいと思います。
学校全体で合唱祭・合唱コンクールを成功させるために、ぜひ足並みをそろえて取り組んでいきたいものです。そして、学校あげて歌唱・音楽に、こんなに時間や労力を割いてくださることに感謝をしなければならないといけないなと思います。
ウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「学級担任による合唱コンクールの指導と音楽教員の関わり方」も是非ご覧ください。
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