【音楽の新学習指導要領】音楽教員のための3つの改訂ポイント解説

音楽教員のための新しい学習指導要領(3つの改訂ポイント解説) 一歩先ゆく音楽教育(スキルアップ編)
一歩先ゆく音楽教育(スキルアップ編)
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音楽教員歴10年の原口直です。

新しい学習指導要領は小学校では2020年度から、中学校では2021年度から完全実施されます。
その内容については、移行期間から色々な議論がされたり、発表がされたりしていますが、現場レベルではどのようなことに注意したらいいのか、要点を押さえてお話しします。

 

新しい学習指導要領がどのように変わったかについては『NITS独立行政法人教職員支援機構』というYouTubeチャンネルがあって、教科調査官の先生が小学校・中学校とそれぞれお話しされていますので、そちらをご参照ください。とてもわかりやすくなっています。

今日は現場レベルでどのようにしたらいいかということを教育芸術社『中学校音楽科 新学習指導要領ガイドブック』の内容に沿って話をします。新しい学習指導要領の要点が3つあります。

 

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音楽の新学習指導要領の要点1:生活や社会に関わる音楽

音楽の授業で習ったことが、生活や社会にどのように活かされるのか・どのような役に立つのかということを、今回の新しい学習指導要領では求められています。

私は研究内容がこの「生活や社会に関わる音楽がどのようなものか」でしたので、様々な実践をしました。一部を紹介します。

 

実践例1:環境音の教材として「春 第1楽章」

実際に学校の中庭に音を聞きに行って、中庭にはどんな音がなっているのかを聞きます。そこで子どもたちは春に鳥が鳴いていることに気づきます。そこからヴィヴァルディ《春》鑑賞に持っていくという流れです。

 

音楽のオンライン授業実践例《教材:春 第1楽章》」の動画で、実際の授業の流れを紹介していますので、是非ご覧ください。

 

実践例2:和楽器の授業で和太鼓を指導

器楽として和太鼓を演奏した後に、その芸能の舞台化や簡略化についてどのように感じるか、どのような問題点があるかを考えさせる授業をしました。

 

新指導要領に即した和楽器の指導を知りたいという方・生活と社会に関わる音楽や口唱歌について知りたい方は、「【音楽の新学習指導要領】中学校音楽科における和太鼓の授業実践例(和楽器指導)」をぜひご覧ください。

 

実践例3:日本の芸能・世界の諸民族の音楽

DVDでそれぞれ鑑賞した後に、海外の方に日本の音楽の特徴は何かと聞かれたらどのように答えるかというのを英語で考える内容です。

英語で考える内容ですが、文法や語彙や一切関係ありません。日本の音楽をとらえて、世界の音楽と比べて、どのような特徴があるかを持っている語彙の中で説明するということが大事なところです。

 

いわゆる「西洋音楽」を学んできた人たちが、民族音楽を教える時にどのような点に気をつければいいのか?和太鼓や民族舞踊を大学で学び授業で取り入れてきた私の経験を踏まえて、「民族音楽を音楽の授業教材とする時に気をつける3つのこと」で解説しました。

 

実践例4:CSRの教材として交響曲第5番ハ短調(運命)

「鑑賞して終わり」では、生活や社会に結び付きません。実際にホールに聴きに行くという子は少ないですし、CDを買うという行動に移すのは目的ではありません。
私は、この曲がどこで誰が演奏しているかに注目させました。

サントリーホールで演奏されていたり、読売交響楽団が演奏していたりすることを知って、なぜ企業がホールやオーケストラを持つのかということを考えさせて、企業が様々な文化的活動、特に音楽について貢献してくださっているのかを考えさせました。また、どうしてそのようなことを企業がするのかを考えさせました。

そうすることでいずれ企業に勤める子どもたちが、音楽に貢献することを理解してくれたらいいなという思いでやりました。

 

音楽のオンライン授業実践編《教材:交響曲第5番ハ短調(運命)》」の動画で、実際の授業の流れを紹介していますので、是非ご覧ください。

 

実践例5:社会を動かす音楽の題材としてブルタバ(モルダウ)

作曲家の意図を汲んで終わり、ではなく、この現代でも社会を動かすための音楽に注目をさせます。例えば、災害へのチャリティソングだったり、社会への思いだったり。そういったことが現代でも音楽で表現されているということにつなげました。

例えば《花は咲く》《We Are The World》《Happy Christmas(War Is Over)》を聴くことをしてきました。

 

音楽のオンライン授業実践編《教材:ブルタバ(モルダウ)》」の動画で、実際の授業の流れを紹介していますので、是非ご覧ください。

 

実践例6:文楽

自治体の助成金が音楽や芸能を支えることについてどう思うかという授業もしました。
文楽を鑑賞して終わり、では自分事として生徒は考えません。文楽を支えている一部が税金であって、税金が生徒も払っていることを考えさせると、ぐっと文楽が自分事となってきます。

 

文楽を題材に音楽の授業を実施した際には学校図書室を有効的に活用しました。具体的にどのように利用したかなどを「【全教員に知ってほしい】教員のための学校図書館・司書教諭活用のススメ」で紹介していますので是非ご覧ください!

 

こうした「生活や社会に関わる音楽」は何かということを、色々実践しました。

 

 

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音楽の新学習指導要領の要点2:口唱歌(くちしょうが)

太鼓やお箏など和楽器を教える時に口唱歌を用います。

お箏なら「テン・トン・シャン」「ドン・カコカ・ドドン」といったリズムや音色を言葉で表現するものを指します。これが新しい学習指導要領に盛り込まれました。

和楽器を教える時に口唱歌を用いることを、まず教員自身がやってみましょう。音楽の教員はどうしても西洋音楽を習ってきたので、5線譜に音符が並んでいるのが一番わかりやすい、正確だと思いがちです。しかし、口唱歌にもいい点があったり、口唱歌でしか表現できないことがあったりします。

この口唱歌を知ることで、生徒の理解や覚えもとても早くなったりしますので、この口唱歌を取り入れてみてください。

 

【音楽の新学習指導要領】口唱歌の解説と授業実践例」という動画の中で、口唱歌については詳しく解説しました。

 

 

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音楽の新学習指導要領の要点3:知的財産権

知的財産権とは著作権などの、作品や発明などに関する権利のことを言います。この知的財産権を教えるようにという項目が以前の学習指導要領よりも3倍くらいの量に増えました

実際、2・3年生の教科書には知的財産権や著作権のことが載っています。そもそも、著作権を含む知的財産権とは何かを教員はなかなか習う機会がありませんでした。この機会にきちんと著作権について知って、生徒にも知的財産権について意識させたり、考えさせたりするということが必要です。

 

音楽の授業の中で知的財産権をどのように教えたか、その具体例を「【音楽の新学習指導要領】音楽科で教える知的財産権の指導方法の実践例」という動画において紹介しています。

 

知的財産権・著作権については、YouTubeチャンネル内でも色々な解説をしていますので、ぜひそちらもご覧ください。

 

著作権に関する基礎を理解するためには以下の記事をおすすめします!

学校における著作権入門(教員のためのシーン別著作権)
著作権の基本について、特に学校の授業で使用するものの著作権と部活動で使用するものの著作権という2つの観点からお話しました。

【質問に答えます!】音楽教員のためのオンライン授業Q&A
オンライン授業を開始するにあたっての心配事・困りごとなどが当サイトに多く寄せられました。寄せられた質問からいくつか抜粋して、回答を解説しました。

 

また、学校・先生のための著作権相談室も設けています。疑問・質問があれば音楽科以外のことでもお問い合わせください。

 

 

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まとめ:【音楽の新学習指導要領】音楽教員のための3つの改訂ポイント解説

中学校では2021年度から完全実施です。この機会に学習指導要領をもう一度見直して、特に新しい項目は何かを把握して授業づくりをしましょう。

 

2020年10月に発表された学習指導要領コードの案について「学習指導要領コード化を理解する(読み取り方・コード化の背景・今後の推移)」の動画で解説しました。

 

記事の内容は動画と同じです。
動画「【音楽の新学習指導要領】音楽教員のための3つの改訂ポイント解説」も是非ご覧ください。

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この記事を書いた人
原口直

元東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー

東京学芸大学教育学部卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。
東京都内の公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校において、教育実習生の指導・進路指導・新しい学習内容「生活と社会に関わる音楽の授業実践」を重ねる。
会社員時代の経験を活かした知的財産権教育の研究・発表実績多数。

2020年春より教室からYouTube動画・ウェブサイト・講演にフィールドを移し、教員や教育実習生が学ぶためのコンテンツを発信している。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)

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